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アマゾン「Audible」が村上春樹作品や「聴くアニメ」など大型配信コンテンツを発表

日本の作品を世界へ
良質なオリジナル作品にこだわってビジネスを拡大

Audible カントリーマネージャーの逢阪志麻氏(左)とシニアディレクター コンテンツの宮川もとみ氏(右)

 CMなどでのプロモーションを強化してきたこともあり、順調に会員数を伸ばしているAudible。逢阪氏によれば、会員1人あたりの聴取時間も長くなっているという。会員1人が1ヵ月に新たに触れたタイトル数は、聴き放題への移行前は1冊程度だったが、現在は4冊に増えているとのこと。また支持されるコンテンツのジャンルにも変化があり、移行前は「自己啓発・人間関係・子育て」のコンテンツが人気だったが、現在は「文学・フィクション」が大きく増加しているという。

聴き放題に移行後、月間聴取時間は伸び続けていて、一人が触れるタイトル数も増加

 「聴き放題になったので聴く時間が増えるのは当然ですが、ぞれがずっと伸び続けている。ジャンル的に文学・フィクションが伸びているのも、一度聴いてみてこれはおもしろいとなり、あれもこれもとなっているのだと思います」と逢阪氏。またユーザーの層も、女性や学生、シニアと広がっているという。

 「中心は20代から40代の男女ですが、聴き放題になってからは若い人も増えているので、マーベルのようなエンタメ作品を強化して、反応を見ていきたいと思ってます。一方で目が疲れるなどの理由で、本が読みづらくなっているシニアの方にも、Audibleでまた本を楽しめるようになったという、うれしい声をいただいています」

 ユーザーの広がりが、コンテンツへのさらなる投資を後押ししていると逢阪氏。目指すのは良質なコンテンツの拡充でユーザー満足度を上げ、さらなる利用時間の増加へとつながる好循環だ。

Audibleが目指す好循環の成長戦略

 「そのためにも、本屋さんで並んでるようなベストセラー本が、いち早く聴けるような体制を整えていきたい。オーディオブックだけでなく、企画としてのオーディオファーストの作品だったり、もうちょっと気軽に聞けるポッドキャストだったり。この三本柱で引き続き、皆さんが聴きたいと思うような作品を提供できるよう、努力していきたい」と言う。

 より良いコンテンツを目指して、著者や出版社にはスタジオ収録に参加してもらうなど、時間をかけて信頼関係を築いてきたと逢阪氏。実際に発表会に寄せられた、湊かなえ氏の「紙の本で読んでほしいと思っていたが、収録を見学したり、作品を聴くとまったく違うもの。聴くと読みたくなるし、どちらも試したくなる。すごくいい関係なんじゃないかと思った」というコメントは印象的だった。

 「著者さん、出版社さんに賛同していただけているのは、本当にありがたいこと。Audibleがローンチした2015年から、パートナーとして関係を作り上げてきたことが、今につながっています。一方で日本の作家さんの素晴らしい作品をグローバルに展開できるのもAudibleならではの強味。そこは大事にしていきたいですし、著者さん、出版社さんにも評価いただいているところだと思っています。日本から世界へ、オーディオコンテンツのポテンシャルをどこまで広げられるかというチャレンジを、一緒に楽しんでいただけているのではないかと思います」

 パートナーの協力のもと、コンテンツには今後も投資を続けていくと逢阪氏。同時にAudibleを知ってもらうための活動にも、注力していきたいと話していた。

 「昨年の流行語大賞の候補に『オーディオブック』が入るなど、オーディオコンテンツは今ようやく成長期に入ってきたところ。まだオーディオブックって何? Audibleってどうやって聞くの? というお客様も多いので、そこは引き続き努力していきたい。一方で、一度聴いて面白いと思ってもらえれば、これ知ってる?という風に広がっていくはずなので、そんな風に皆さんがほかの人に薦めたいと思える、サービスにしていきたいと考えています」

 

筆者紹介――太田百合子
 テックライター。身近なデジタル製品とそれら通じて利用できるサービス、アプリケーション、および関連ビジネスを中心に取材・執筆活動を続けている。

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