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【レビュー】M2 Ultra搭載「Mac Studio」超高速の内蔵SSDで実用性能が向上(本田雅一)

2023年06月14日 08時00分更新

Final Cut ProとCompressorでの性能向上を確認

 残念ながらMac StudioのM2 Max搭載モデルを用意することはできなかったが、MacBook Pro 16インチのM2 Max(64GBメモリ)搭載モデルを用いて、アップルの動画編集アプリケーションFinal Cut Proと動画圧縮ツールCompressorを用いて簡単なテストをすることはできた。

 条件を揃えていないため、あくまでも参考値ではあるが、M2 Ultraに施されたProResアクセラレータとMPEGハードウェアエンコーダのコンフリクトに関しては解決されていることは確認できると思う。

 前述した8K ProrResを18ストリーム合成するプロジェクトの書き出し速度で計測した。

 8K解像度のままHEVCで書き出す場合、高速化の恩恵はあまり受けられていないが、これはMPEGハードウェアエンコーダそのものの性能がボトルネックとなっているのだろう。

 しかしFinal Cut Proから4KにダウンコンバートしながらHEVCで出力した場合や、ProRes422で8Kマスターを書き出す処理。さらにそのProRes422ファイルをCompressorで4KのHEVCにエンコードする処理などは、どれも2倍近い(FCPからの直接書き出しでは2倍以上)の高速化が確認できる。(このうち8K ProResの書き出し速度向上はMedia Engineが2倍搭載されているためで今回の改良とは関係がないが)。

 手元にM1 Ultra搭載機がないため検証できないが、この結果を踏まえるとM1 Ultraの場合はFinal Cut ProからProResで書き出しをし、まとめてCompressorで圧縮処理をした方がパフォーマンスが良いのでは? と予想される。

超高速の内蔵SSDに期待通りのコア性能

 このProResデコーダとMPEGハードウェアエンコーダ併用時のボトルネックが解消されたことを伝えれば、あとは説明が比較的容易だ。

Mac Studioの背面

 まずMac ProとMac Studioは同じSoCを搭載可能な一方、Mac StudioにはMac Proほどの大きな冷却ファンも大きな筐体もない。しかし、たとえM2 UltraでもMac Studioの上半分を占める冷却機能によってMac Proと同じ性能が引き出されるという。すなわち連続した高負荷のワークロードがかかることも多い処理であっても、熱ダレすることは基本的にはない。

 また内蔵SSDは極めて高速なものが搭載されていた。実は15インチ版MacBook Airの512GB SSDも良好な性能(書き込み毎秒4.4GB、読み込み毎秒3.2GB)を示していたが、今回の評価機のMac Studioに搭載されていた2TB SSDは、読み書きともおよそ毎秒6.5GBという爆速である。

 一方、ベンチマーク上のCPU、GPUパフォーマンスは極めて良い。これはM1時代も同じだったが、冒頭で述べたように共有メモリの帯域がコア数の増分に合わせて増える構成になっているため、素直に性能が上がるからだ。

 M1 Pro/Max/Ultraでは、アプリケーションにも依存はするものの、CPU、GPUともにおよそ1:2:4の割合で高性能になっていく。冷却がしっかりしているMac Studioの場合、この関係は明確でその関係性はM2世代の今回も同じだ(Mac StudioにはM2 Proモデルはないが)。

コンパクトな筐体を超えたピーク性能

 評価機のM2 Ultraには16個の高性能コアと8個の効率性コアを備えた24コアのCPU、M1世代よりも強化された76コア(60コアGPUモデルもある)GPU、毎秒31兆6千億演算スループットを持つ32コアNeural Engineが内蔵されている。メモリ帯域は毎秒800GBに達し、最大搭載メモリは192GB。試用モデルは128GBが積まれていた。

 クロスプラットフォームのベンチマークGeekbench 6 Proを走らせると、M1 Ultraよりも20%高性能というM2 Ultraは、はるかに消費電力が大きなIntel Core i9-13900KSよりもマルチコアで良いスコアを出した。

 GPUテストではMac用アプリケーションのほとんどがMetalを用いるため、Metalを呼び出す形でベンチマークを実行したが、AMD Radeon RX 6900XTに近いスコアを出している。

 ただしGPU処理に関しては、処理するデータの扱い方がディスクリートGPUとは異なる。上記カードには16GBのGDDR6 DRAMが搭載されているが、それ以上のデータを処理するにはメインメモリとの間の転送が発生する。

 共有メモリアーキテクチャであるM2 Ultraの場合、システムのメモリすべて(今回のモデルでは128GB)が、CPUからもGPUからもアクセスできるためメモリ転送は発生せず、巨大なデータに対して処理ができる。

 つまり用途(取り扱うデータ量)次第では、M2 Ultraのほうが出る場合もあるということだ。しかもM2 Ultraを内蔵するMac StudioはMac miniの2段重ね程度の容積なのだから、エネルギー効率の良さは言うまでもない。

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