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蒸溜所見学レポその1

100年の歴史があるサントリー「山崎蒸溜所」が生まれ変わる! お酒好きな記者が歴史と見どころを押さえに行ったよ

2023年05月24日 07時30分更新

文● ナベコ 編集●ASCII

さてここはどこでしょうか?

 ごきげんよう、アスキーグルメのナベコです。三度の飯とお酒が大好き! 爽やかな青空のもと、この日はウイスキーの蒸溜所を訪れておりました。後ろに見えているのが、お酒好きならピンとくるポットスチル(ウイスキーの蒸溜釜)のオーナメントですよ。ここはまだ駐車場なのですが、施設に入る前からワクワク!

「山崎蒸溜所」をリニューアル前に訪れたよ

答えはサントリーの山崎蒸溜所

 じゃじゃ~ん。

 やってきたのはサントリーの山崎蒸溜所の取材会です。1923年に建設が着手された日本初のモルトウイスキー蒸溜施設。今年でなんと100周年を迎えます。

 住所は大阪府ですが最寄り駅は京都府で、いわば県境。東京から行く場合、新幹線の大阪駅まで行くより京都駅で下車したほうが断然近かったです。

 ちなみにこの山崎の地は、本能寺の変の後、羽柴秀吉(後の豊臣秀吉)の軍と明智光秀の軍が激突した、名高い“天下分け目の天王山”の麓に位置します。初めて知ったのですが、天王山の戦いは別の名を山崎合戦と言います。へ~、そういうことだったんですね。

屋外にあるポットスチルは飾りですが、もちろん中には稼働しているポットスチルがたくさんあるはず。ワクワク

蒸溜所の敷地へ。右側の建物をよく見ると工事中です

 実は、山崎蒸溜所は100周年を迎えたことを機に、見学施設やショップなどの改修工事を実施しています。取材会に訪れたのは2023年の春ですが、現在まさに改修工事期間に入ってしまいました~。再び一般客向けの場内施設を公開するのは、2023年秋頃の予定です。

 リニューアルするならこの記事を見ても仕方ない、そう思った人もご安心ください。主に見学施設のリニューアルですので、ウイスキーを作る設備など根幹は踏襲されます。今回の記事はちゃんと改修後の見学の参考にもしていただけるはず。

 リニューアル後に訪れた人は、変わったのはどういうところか、この記事と見比べて楽しんでみてください。

敷地内にウイスキー発祥の地の碑がありました

取材会で山崎の歴史をお勉強

 メディアや関係者向けの取材会では、山崎蒸溜所の歴史や特色を、特別に工場長から直接お聞きできました~。

 この記事では、ナベコ的に驚いたり共感したポイントを書いていきますね。

 ところで、席に置かれた水をなんの気なしに飲んだら……お、おいしい!

「山崎の水」がさすがのおいしさ

 出していただいたのは、山崎を醸しているものと同じ“山崎の水”。ふくよかさがあってなんとも舌に染み入るおいしさ。水のおいしさをどう表現したらいいかわからないのですが、飲んだ瞬間「いつものと違う!」とわかりました。

 さすが、山崎。水から違う~!!

■ナベコの驚き→「水」がおいしかった。

 

山崎蒸溜所の藤井工場長

 お話いただいたのは山崎蒸溜所 工場長の藤井敬久さん。

 最初にご自身の略歴を紹介してくださいました。

 昭和60年にサントリーに入社し、ウイスキー研究室で働くことになった藤井工場長は、それまで木材や植物を勉強していたわけではないにも係わらず樽を作る仕事に着任。以来ずっと、ウイスキーに関わる仕事をしてきました。

 38年間の仕事の歩みは、旧ウイスキー研究室から、ブレンダー室、蒸溜所と施設内の約300メートルの範囲内で移動。ご自身は「この距離での移動ですからね、ふふ」と笑っておっしゃられていましたが、多くの時間を山崎蒸溜所で過ごされたスペシャリストの歴史です。

■ナベコの驚き→いきなり「樽」研究せよと言われたらびっくりするだろうな~。
 

 さて、山崎蒸溜所の歴史について。

 サントリーは1899年に鳥井商店として創業。赤玉ポートワインがヒットしたことから、当時、日本にまだなかった洋酒づくりに大胆不敵に挑戦することにしました。

 山崎蒸溜所を1923年に建設開始。翌年からウイスキーの蒸溜を開始しました。

 山崎をウイスキーづくりの場所に選んだポイントは2つ。まず1つめは、お水。

 お酒づくりにとって水は非常に重要です。山崎にはかつて天皇の別荘地として水無瀬(みなせ)神宮といった場所があります。そこから湧き出る水は「離宮(りきゅう)の水」と呼ばれていて、大阪府で唯一「名水百選」に選ばれるほど。

 水が良いことの裏付けとして、蒸溜所の近くには、秀吉が千利休に命じて作らせた待庵(たいあん)という茶室が残っています。


■ナベコの驚き→秀吉のエピソードが多いですね。大阪ですからね~。

 2つ目のポイントは、樽の熟成に欠かせない気候条件。ウイスキーは木製の樽に入れて熟成されますが、どこでもおいしい熟成が進むわけではありません。

 山崎は桂川、宇治川、木津川の合流地点に位置するため非常に湿度が高い地域特性があります。湿度が高い環境はウイスキーの熟成に適していると言われています。 

冬の早朝の様子。濃霧で前が全く見えなくなるほど

■ナベコの驚き→樽ってジメジメしているほうがいいんだあ。日本の気候にけっこう合っているのかな?

 続いては、ウイスキーの売上状況についてです。

 ウイスキーは戦後の経済回復と共に消費が伸びますが、1983年ピークにダウントレンドに。ずっと消費が落ちていたところ、2008年から2009年にかけてハイボールの人気と共に上向きに転じます。ハイボールはもともとウイスキーを好んで飲んでいた世代以外にも、幅広い世代から支持を集める結果に。

 藤井工場長いわく、ハイボールの人気は、単に新しい飲み方の提案がうまくいっただけではなく、ウイスキーの質がベースにあってこそ。

 2003年に「山崎12年」がISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)という世界的なスピリッツのコンベンションで国内初の金賞を受賞。以来、「響」など高級なウイスキーが世界的な評価を得るようになりました。

 山崎蒸溜所には、貯蔵や熟成などいろいろな条件を組み合わせて、高品質な原酒を多岐にわたって生み出せる設備が整っています。本場のスコットランドにも負けない魅力的な蒸溜所だと、藤井工場長は語っておられました。

 現在、ジャパニーズウイスキーは世界的に高く評価され、「山崎」を始め、有名な銘柄はなかなか買えないくらい品薄です。それくらいニーズが高まったのも、山崎蒸溜所が牽引してきた日本のウイスキーの歩みがあるからですね。

■ナベコの共感→藤井工場長いわく「私が入社した時にはすでにウイスキーはダウントレンドで右肩下がり」。それはつらかっただろうな~。ハイボールで復活してよかったです!

蒸溜所内を見学にいきます!

ウイスキー事業部 シニアスペシャリストの佐々木さん

 お次はいよいよ蒸溜所施設の見学。

 サントリー ウイスキー事業部 シニアスペシャリスト佐々木太一さんがガイドをしてくださいました。

 佐々木さん、写真ではわかりづらいですが、めっちゃ長身ですらりとしています。それもそのはず。もともと、サントリーサンバーズというバレーボールチームに所属されていて、世界選手権やワールドカップも出場されています。引退後、営業職を経てウイスキー事業部に就任。人生って何があるか分からないものなんですね。

■ナベコの驚き→佐々木さんの足が長い。

まず見に行ったのは蒸溜所施設の中央に位置するポットスチル。これは先ほどのポットスチルとはちょっと違います。

よくよく見ると渡邊銅鉄工場の刻印が入っています。日本初の“再留釜”らしいです

 こちらが日本初のポットスチル。なんとニッカウヰスキーの創業者であり、マッサンの名前でも知られている竹鶴政孝氏が発注したものなんですって。

 そう、スコットランドでウイスキーづくりを学んできた竹鶴氏は山崎蒸溜所の初代所長を務めていたのです。

直接触れることもできました

 ポットスチルは銅製。触れてみると、日光により表面は熱を帯びているけれども、その奥にズンと深い冷たさを秘めています。

 こうやって実際に触れてみたりできることも蒸溜所見学の魅力ですね!

■ナベコの驚き→山崎蒸溜所にマッサンの手掛けたポットスチルがあった。

サントリー創業者の鳥井信治郎氏(左)と2代目社長の佐治敬三氏の像。

 こちらはポットスチルの近くで蒸溜所を見守っている鳥井信治郎氏と2代目社長の佐治敬三氏の像。

 佐々木さんいわく、佐治さんの像は体格などご本人によく似ていらっしゃると。というのも、佐治さんはサントリーのバレーボールチームを立ち上げたご本人。佐々木さんは生前に面識がおありでした。

 佐治さんのご葬儀の出棺はバレーボールチームが務めたらしいです。棺には大量の本が入っていて、めちゃくちゃ重かったとか。そんな逸話も聞けました。

■ナベコの驚き→佐治さん像は非常によく似ているそうです。

スタスタスタ……
 

 佐々木さんは蒸溜所内をすたすたと歩んでいきます。なにせ足が長いから一歩一歩が早い早い。はたして、取材陣は佐々木さんにつ着いていくことができるのか、無事に蒸溜所内に入れるのか。次回に続きます。

■ナベコの驚き→足が長いと歩くの早い

※山崎蒸溜所の工場見学はただ今リニューアル工事中につき休止中です。2023年秋に新たにスタート予定。主に、見学施設を体験型にパワーアップする予定ということ。お楽しみに!


ナベコ

酒好きライター、編集者。酒活動しています。「TVチャンピオン極~KIWAMI~ せんべろ女王決定戦」に参戦するなど。ホットカーペットが気持ちよすぎて床で寝おちして朝陽で気が付く日々。せっかく年始におろしたパジャマを着ないと……。
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