斬新ですっきりとしたインテリアデザイン
「ID.4」が、これまでのフォルクスワーゲンのエンジン車と違うことは、クルマに乗り込んですぐにわかります。まず、イグニッションのスイッチがありません。サイドブレーキのレバーもボタンもありません。すべてが自動になっているのです。まるでテスラ車のようです。
インテリアのデザインはテスラほど極端ではないけれど、従来のフォルクスワーゲン車と比べれば、相当にシンプルになっています。ステアリングの間から覗くメーターは、小さなモニターのよう。しかも、シフトレバーと一体化されています。アクセルとブレーキペダルには、音楽プレイヤーの一時停止と再生のような図柄が記されていて、ちょっと楽しい気分にさせてくれます。
インテリアの質感は高く、最新のゴルフに通じるものがあります。高級車というほど華美ではありませんが、“良いモノ感”があります。
静粛性に優れ、フォルクスワーゲンらしい安定の走り
街中を走り出すと、加速もコーナーも軽快さを感じさせます。これは、予想外でした。実は試乗車は電池をたくさん積んだ「Pro」グレードということで、車両重量は2140kgもあります。電池の少ない「Lite」でも1950kgですから、「ID.4」はサイズ感的に2クラスくらい上の重さになっています。なので、もう少し乗り味は重厚だろうと思っていたのです。モーター出力のチューニングと後輪駆動が、この軽快さを生んでいるのでしょう。
とはいえ、速い! というほどではありません。最高出力150kW(204PS)・最大トルク310Nmは、まずまずのスペックですが、2トンを超える車重を忘れさせてくれるほど強烈なわけではありません。街中では軽快さと、そして静粛性の高さが印象に強く残りました。
続いて高速道路にステージを移します。すると、また別の面が見えてきました。それが優れた安定性と直進性です。4輪がしっかりと路面をつかむ安心感があり、そして狙った通りに真っ直ぐに走ります。こうした特徴は、フォルクスワーゲンの従来のエンジン車と共通するものとなります。
試乗を振り返れば、パッケージングやデザイン、インターフェースは革新的にしたけれど、走りの基本は意外と変わっていない。いつものフォルクスワーゲンそのものだったという感想になります。装いは新しく、中身は伝統のフォルクスワーゲン。それが「ID.4」と言えるでしょう。
筆者紹介:鈴木ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。
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