週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

TEQWING e-Sportsの現役プロが教えるeスポーツ教室に潜入

eスポーツ教室って何するの?アラフォーが小学生に混ざって受けてみた

2023年03月18日 10時00分更新

文● ジサトラユージ 編集● ASCII
提供: 株式会社JAPANNEXT

“教育”がスタート地点でチームを結成!?

 そんな疑問を解決してくれたのが、テックウイング代表の加藤友大氏。同氏のプロゲーマーに対する考え方に、その答えがありました。ここからは、加藤氏に対するインタビューから、TEQWING e-Sportsについて探っていこうと思います。

テックウイング代表の加藤友大氏

――テックウイングさんのeスポーツ事業はいつごろから始められたのでしょうか。

加藤氏:2020年ごろです。もともとうちでは、プログラミング教室やロボット教室のような、我々が子どもの時にはなかった新しい習い事を教えていました。それは、今後社会で必要になる技術を教えるとともに、これから子どもたちが社会に出ていくにあたって自分の頭で考えて課題を解決する力を、プログラミングやロボットを通して身に着けてあげたいという考えがあったからです。今回のeスポーツゲーム教室も、その流れでより最先端のことを教えたいという思いから始まったものです。


――ただプロゲーマーを目指す人のためだけではなく、ゲームをある種の教養として、子どもたちの成長を促すための教室でもあるのですね。

加藤氏:ゲームといえど、上手になっていくためには自分の頭で考えてプレイしなければいけません。ゲームが脳の認知能力を向上させるという研究結果も出ていますし、うちがロボットやプログラミングでやっていることを、eスポーツでも教えることができるな、と考えてeスポーツゲーム教室を始めました。

テックウイングでは、eスポーツ事業以前から教育事業に取り組んでおり、ロボットやプログラミングの教室を開いています


――こういったゲーム教室というのは、やはりまだ珍しいのでしょうか?

加藤氏:高校や専門学校ならありますが、小中学生を中心に習い事としてやっているところは全国でも数えるほどしかないですね。千葉県では初になると思います。うちは講師がプロ選手でもあるので、これからプロを目指したいという子どもたちが、実践的なトップクラスのテクニックや考え方を学べるのが強みだと思ってます。


――ゲーム教室としては、「フォートナイト」だけでなく、「Minecraft」のクラスもあります。「Minecraft」はeスポーツタイトルではありませんが、なぜこのタイトルを選定しているのでしょうか?

加藤氏:最初は教育的な観点から「Minecraft」から始めたのですが、始めたら「フォートナイト」でプロを目指したいという子どもたちが多かったため、それから「フォートナイト」を教えるようになりました。


――では、もともとは「Minecraft」から始まっていたのですね。

加藤氏:そうなんです。そうしてゲームを教えるようになったのですが、本気でプロを目指している子どもたちですと、すでに「フォートナイト」を何千時間もプレイしていますといった子たちがたくさん来るんですよ。そうなると、ちょっとゲームが上手い大学生とかでは全然教えられないレベルになってしまうので、プロを講師としてアテンドしないとだめだなということになり、であれば自社でプロチームを持つほうが、スタッフの確保や事業とのシナジーがあるということで、チームを作った経緯があります。


――なるほど、では最初に教育があり、それから子どもたちの希望を叶えるために事業を拡大していったという形なんですね。

加藤氏:そうですね。チームを作るだけでなく、うちで習っている子どもたちが練習の成果を試せる場所があると良いだろうと思って、大会運営なども行なうようになり、そうすると大会の配信や実況も必要になり、さらに配信周りのスタッフも必要になり……と、芋づる式に新しい事業に取り組むようになった形です。


――今教室で教えていらっしゃるゲームというのは、「フォートナイト」「Minecraft」の2つかと存じますが、所属している選手は他にもさまざまな部門の方がいらっしゃいます。こうした部門が拡大していった経緯はどういったものだったのでしょう?

加藤氏:もちろん教育事業もやっているのですが、やはりプロチームですので、大会に勝つというのも重要視しています。また、うちは千葉で事業をしているので、eスポーツを用いて千葉の地域振興をしていけたらという思いもありました。「ぷよぷよ」の選手は千葉在住ですし、「大乱闘スマッシュブラザーズ」の選手ももともとは千葉出身の選手で、千葉でeスポーツを盛り上げる仲間として活動していただいています。


――eスポーツで地域振興もやっていきたいという思いがあるのですね。

加藤氏:そうですね。それに、eスポーツの選手はプロ野球やプロサッカーなどの選手に比べると、本業の収入だけで生活できる選手というのはごく一部なので、そこに講師として活躍する場所を提供することで収入を得られるようにする目的もありました。なので国内でもかなり珍しいバックボーンを持っているチームじゃないかなと思います。


――教育とeスポーツでの活躍、チームとして2つの軸があるように感じたのですが、それを踏まえて何か選手たちに指導していることなどはありますか?

加藤氏:選手のふるまいや発言についてはかなり厳しく指導しています。eスポーツはまだ発展途上なので、そういった部分はしっかりさせていきたいという思いがあります。特に、うちの選手は自社のeスポーツ教室のほかにも、ほぼすべての選手が専門学校や高校など外でも講師をしていますので、見本になる人間として、またスポンサードしていただいている企業さんの信用を損なうことのないように、厳しく言っています。そういった部分は、うちのチームの特徴だと思っています。


――選手に対して、ゲームの腕だけでなく、社会人として活躍の場を広げていけるように配慮されているのですね。

加藤氏:一定の層にはやはりまだゲームが“悪いもの”という認識を持たれている部分もあるので、それが少しでも社会的に認められる職業になるために、教育的観点からの取り組みを行なっています。また選手にとっても、自分がこれまで膨大な時間をかけて磨いてきた技術が人の役に立つということを、講師をやることで身をもって実感できるので、そういったキャリアを提供してあげられるのも良いなと思っていますね。


――所属しているプロ選手の中には、チームの収入だけで生活している方もいらっしゃるのでしょうか?

加藤氏:人に寄りますね。成人はしているもののまだ大学生という選手もいますので、その場合は学業と並行してプロ活動もしています。一部の選手は、うちからの収入だけで生活しているという選手もいます。うちに関わらず、多くのプロゲーマーはアルバイトや他の仕事を掛け持ちしながら活動しているというケースは多いと思います。プロになったからといって、すぐに生活できるほどの収入を得られるわけではないという点は、プロボクサーなどと似ているかもしれませんね。


――外部で講師をやっている選手が多いと伺ったのですが、それはTEQWING e-Sportsで経験を積んで外部での仕事を受けるようになったのか、もしくはすでに講師経験がある方をお招きしたのか、どちらでしょうか?

加藤氏:基本は、弊社で経験を積んだ上で外部の仕事を受けるようになったという形ですね。長くて1年くらい経験を積んでから外部の仕事を引き受けた選手もいます。うちで講師として経験を積む中で、教える楽しさや意義を理解してもらい、外部に行くという流れがほとんどですね。


――生徒がスキルを学ぶだけでなく、プロのeスポーツプレイヤーが新たな学びを得る場所にもなっているのですね。

加藤氏:そうですね。それに、そうした教え方を選手が学ぶことによって、後から入ってきた選手に先輩選手がアドバイスするといったこともできるようになっているので、良い循環が作れていると思います。


――そういった教育事業に携わることを考えると、やはり選手の採用時にはマナーなどの部分も基準として見ているのでしょうか。

加藤氏:やはりどうしても、そういった部分は見なければならなくなっています。プロ入りを目指すかなりの数の方と面接をするのですが、ただ強いだけではうちとしては採用できないので、弊社の理念に共感してくれて一緒にやっていける選手というのを採用しています。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう