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【第1回】「少年ジャンプ+」編集長細野修平氏による大学特別講義

「少年ジャンプ+」細野編集長が語るデジタルマンガの現在

2021年、電子コミックは4000億円稼ぎ出した

 マンガアプリのついでに、出版業界のデジタル化の流れにも少し触れておきます。ちょっと細かいのですけれども、流れだけ見てもらえばわかると思います。

 2018年頃を底にして、出版業界は回復の基調にあります。3年連続でプラス成長しているところなのですが、紫の部分が電子コミックの売上、黄色と水色が紙です。簡単に言うと、紙は減っているのですが、電子が増えているのでその分、売上が上がっています。

出版業界のデジタル化の流れ

 この傾向がさらに顕著なのが、コミック市場です。紫が電子コミックですが、もう右肩上がりというか異常な伸び方をしています。最新の2021年のデータでは紙と電子で6759億円、前年比10.3%増で過去最大。そのなかでも電子コミックは4114億円を売り上げています。そして、電子の占有率は60.9%、つまり6割が電子コミックの売上です。

 表では2014年から急に登場しますが、それまで無かったわけではなく、おそらくこの年から統計に入ってきたのでしょう。

コミック市場のデジタル化の流れ

 ということで、業界的には電子書籍が紙を超えてきていると。講談社さんも電子書籍の売上が紙を初めて上回ると、2022年2月に発表した通期決算で発表されました。翻って、集英社ではまだ紙は超えていないのですが、いずれ超えていくのでは、というような伸び率を示しています――以上、電子書籍とマンガアプリを取り巻く状況をざっくり説明しました。

 本当はWebtoonの話もしたほうが良いのかもしれませんが、私が今日話す内容では触れないので、詳しく知りたい方は飯田一史さんの『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの? マンガアプリ以降のマンガビジネス大転換時代』という本を読んでいただければ。

 2018年の本なのですが、だからこそWebtoonが与えた衝撃とそのときの未来予想図がわかるので、今から答え合わせ的なものも兼ねて読んでもらえると非常に面白いかなと思います。

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「少年ジャンプ+」は月間1250万の読者を抱えている

細野 「少年ジャンプ+」は2014年9月にスタートしました。マンガ誌発のアプリということで、我々としてはマンガ雑誌というイメージでアプリを始めています。当初からブラウザでも展開していまして、コンセプトは「ジャンプを超えるオリジナル・マンガを作る!」というものでした。ここは後ほど触れます。

「少年ジャンプ+」の概要

 アプリは現在2200万ダウンロードでして、DAU=Daily Active User――1日に訪れるユーザー・読者の数――が210万、ブラウザ込みが260万。これがWAU=週間だと480万で、ブラウザ込みだと670万です。そしてMAU=月間は650万、ブラウザ込みで1100万~1250万というかたちでユーザーが存在しています。

「少年ジャンプ+」の概要(DL数など)

 「少年ジャンプ+」はオリジナル・マンガをやっていこうという場所なので、連載作品も今は70本以上あります。「週刊少年ジャンプ」がだいたい20本なので、その3倍以上連載しているかたちになります。また、「ダウンロード後、初回全話無料」、そして「デジタル版の週刊少年ジャンプが買える」という特徴があります。

「少年ジャンプ+」の概要(作品数など)

 「少年ジャンプ+」のビジネスモデルは、話単位でのレンタル販売ですが、オリジナルは初回全話無料になっていますので、あまり重要視しているわけではありません。また、広告も入っていますが、こちらも連載に付く広告売上の50%を作家さんに還元していますので、広告で儲けようと考えているわけでもないのです。あとはコミックス販売と雑誌販売の電子書籍の分ですね。

 いただいた質問にもサブスクリプションの話がありましたので、「週刊少年ジャンプ」の定期購読について詳しく説明します。紙と同時に発売していまして、月曜日の午前0時に更新されます。定期購読/サブスクリプションは月額980円、紙で買うよりも結構お得になっているのかなと。さらに現在は初月限定300円キャンペーン中で入会しやすくなっています(注:特別講義開催時点)。

「少年ジャンプ+」のビジネスモデル

 単号、つまり1冊ずつ買う場合は紙と同じ値段で売っています。定期購読は会員数が急増中で、今は定期購読で買う人と、1冊ずつ単号で買う人を合わせると、週に70万部が売れている状況になっています。おそらく、デジタル版の出版物ではかなり多いのでは。

 「少年ジャンプ+」は読者層が平均年齢が28歳〜29歳くらい、男女比が60:40。なお平均年齢は現在ふた山ありまして、まず今聞いていらっしゃる大学生を中心とした10代後半くらいの層と、20代後半から30代前半という、昔からジャンプが好きだった層の2つある感じになっています。

 また、「少年ジャンプ+」は男女比が特徴的で、今は女性が増えてきましたが、当初は女性が20〜25%くらいでした。それが最近は『SPY×FAMILY』の人気だったり、読者層が広がったりするに連れて増えています。一般的なマンガアプリはだいたい女性が多かったりするので、これは「少年ジャンプ+」の特徴かなと思っています。

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