週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

はたしてApp Storeはいいストア? 人気アプリのデベロッパーに聞いた

2023年02月21日 12時00分更新

アップルはサイドローディングの問題点をまとめたデジタル冊子を公開しています

複数のアプリストアに出展するメリットはあるか

 アップルではデバイスやサービスのセキュリティを強化し、ユーザーのプライバシーを護るため、サードパーティーがアップルのモバイルOSに独自のアプリストアを開設したり、Webページを通じてアプリをダウンロードできるサイドローディングを制限してきました。

 一方で、大手のITテクノロジー企業のOSやアプリストアにサイドローディングを促進するような議論も活発化しています。

 2022年11月には欧州連合で「デジタル市場法(DMA)」が発行されました。今後、EU地域ではアップルなど大手のITテクノロジー企業は、モバイルOSのプラットフォームをサードパーティにも開放しつつ、新たにユーザーのプライバシーを護る仕組みを再構築する必要に迫られます。

 日本国内でも内閣官房デジタル市場競争本部(DMCH)によりモバイルOSのサイドローディングを促進する議論が交わされています。公正取引委員会の報告書もまた、モバイルOSとアプリ流通サービスの市場において健全な競争環境を確保するために、グーグルやアップルが自社の運営するアプリストアを経由するか否かを問わず、アプリをダウンロードできるようにすることが望ましいとしています。

 青木氏と廣瀬氏は、今後サードパーティーがアップルのモバイルOSに、ユーザーとデベロッパーの双方が使いやすさを実感できるストアの仕組みを作ることは難しく、結果ユーザーにも選ばれないだろうと口を揃えています。青木氏は「方々のストアでアプリを販売した場合、各プラットフォームごとにバグをチェックしたり、バージョン管理を継続することの負担の大きさは計り知れない」といいます。小規模アプリデベロッパーの多くは「最も出来のよいアプリストア」を選択することになりそうです。

ユーザーは安全なアプリストアを求めている

 国内ではiPadが多く小中学校の授業に活用されています。教育関係者の中には、現在の安全なApp Storeの仕組みが、サードパーティによるサイドローディングが許可されることによって崩れることを懸念する声もあります。生徒がマルウェア感染の脅威により多くさらされることになれば、これまでに築いてきたデジタルツールを活用する教育手法の足もとが揺らいでしまうからです。

 アップルは日本の公正取引委員会による独禁法調査の結果を受けてガイドラインを改訂。デジタルコンテンツの視聴・購読を目的とする「リーダー」アプリを提供するデベロッパーは、アップルのアプリケーション内決済システム(IAP)を使わずに外部リンク先のウェブサイト等で行えるようになりました。該当するアプリのデベロッパーは、ユーザーのアカウント管理や決済について一元化されたWeb上のプラットフォームからサービスを提供したり、独自の決済システムによる販売管理ができるようになりました。

Analysis Groupの独立系エコノミストによる報告書「Spotlight on Small Business & App Creators on the App Store」では、App Storeの小規模デベロッパーの収益が近年伸び盛りを迎えていることがレポートされています

 アップルが昨年の5月に公開したプレスリリースでは、外部の独立系エコノミストが実施した調査の結果から、2019年にはApp Storeにおける小規模デベロッパーのビジネスによる収益が、大規模デベロッパーの増収を上回るペースで伸びたと伝えられています。

 Shamrock Recordsの青木氏は、UDトークアプリが海外法人のパートナーの目に留まり、その後App Storeのプラットフォームを通じてスムーズに契約が締結できたと語っています。自社によるアプリストアや決済サービスを既に確立している大手の企業は、App Storeの手数料やサイドローディングのガイドラインに対して不足を感じるところがあるかもしれません。

 でも一方では、アップルやグーグルが小規模事業者や多くのインディペンデントなアプリデベロッパーにチャンスをつかむ契機を提供してきたことにも目を向けながら、今後も健全なモバイルOSの仕組みやアプリストアの在り方を模索することが肝要ではないかと筆者は思います。

 

筆者紹介――山本 敦
 オーディオ・ビジュアル専門誌のWeb編集・記者職を経てフリーに。取材対象はITからオーディオ・ビジュアルまで、スマート・エレクトロニクスに精通する。ヘッドホン、イヤホンは毎年300機を超える新製品を体験する。国内外のスタートアップによる製品、サービスの取材、インタビューなども数多く手がける。

 
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります