サムスン電子が年初に公開したソフトウェアアップデートにより、Galaxyシリーズのスマホとワイヤレスイヤホンを組み合わせて、360度立体サウンド付きビデオが撮れるようになりました。Bluetoothオーディオの新規格である「Bluetooth LE Audio」の技術を活用した本機能を詳しく解説します。
左右独立型ワイヤレスイヤホンによる
バイノーラル録音が可能になった
今回のアップデートにより追加された「360オーディオ録音」の機能は、ワイヤレスイヤホンがGalaxy Buds2 Pro、スマホはGalaxy Z Flip4、またはGalaxy Z Fold4との組み合わせが対応します。2月上旬にグローバルモデルが発表されたGalaxy S23シリーズも対応するようです。今後はGalaxyシリーズ独自のユーザーインターフェースであるOne UI 5.0以降と、Bluetooth LE Audio(以下:LE Audio)をサポートするスマホが、Galaxy Buds2 Proとペアリングした時に360オーディオ録音が利用できるようになります。
Galaxy Buds2 Proが対応する360オーディオ録音は、バイノーラル録音と言い換えることができます。
バイノーラル録音とは、人間の耳の位置あたりにマイクを設置した状態で録音し、一般的なステレオヘッドホン/イヤホンで再生した時に、実際の音を自分の耳で聞いている感覚に近いリアルな立体音響効果を再現する録音技術です。最近はASMR(Autonomous Sensory Meridian Response)録音と呼ばれたりもします。
バイノーラル録音は、特別に新しい技術ではありません。過去にスマートフォンではソニーのXperia Z3以降のZシリーズが、ノイズキャンセリング用のマイクを内蔵するソニーの有線イヤホンMDR-NC750を組み合わせて、手軽にバイノーラルの生録が楽しめました。筆者がかつて試したLGのスマホV60 ThinQ 5Gは、本体内蔵のマイクで動画撮影時にASMR録音モード(バイノーラル録音)が選べました。
本格的なバイノーラル録音をする際には、人間の頭部を模したダミー・ヘッドや録音機材一式が必要でした。スマホと有線イヤホン、または本体に内蔵するマイクで簡易にバイノーラル録音ができる「新しい手段」ができたことが、当時の「スマホのオーディオ」まわりで起きた画期的な出来事でした。
そして近年はスマホが搭載するSoCの処理性能がますます高度化したことで、LE Audioの周辺にも新しい技術が誕生しています。その応用事例のひとつが、左右独立型のワイヤレスイヤホンによるバイノーラル録音であり、いち早く投入したのがGalaxyシリーズなのです。
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