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しれっと嘘を混ぜてくる?

マイクロソフト「Bing AI」にできること、できないこと

2023年02月15日 09時00分更新

 マイクロソフトが検索エンジン「Bing」に導入した対話型AI「Prometheus(プロメテウス)」。OpenAIの「ChatGPT」をベースに開発されたこのAIには何ができて、何ができないのか。先行体験の結果をお伝えする。

簡単な挨拶や自己紹介は問題なし

 人間同士のコミュニケーションもまずは挨拶からということで、さっそくBingに挨拶や自己紹介をしてもらった。

 返答は至極平凡な内容だが、違和感を抱くことはない。

 挨拶や自己紹介はベースとなったChatGPTでも問題なく対応できるので予想通りではあったが、変な回答をされなかったことでひとまず安心した。

複雑な検索も簡単にできるが結果は信用できない

 従来の検索エンジンと違い、対話型AIを搭載したBingでは「〇〇について教えて」と指示すればそれに応じた回答を文章で返してくれる。指示に検索条件を含めることで、より複雑な検索も可能だ。

 例えば「BingとGoogleを比較する記事を3本ピックアップして」と指示すると、指示通りに3本の記事と内容の要約が表示される。記事の出典(リンク)も付いているので調べ物をするときには重宝するだろう。

 また同じ要領でサイト内検索もできるのだが、こちらはまだうまく動作していないようだ。実際にASCII.jpから筆者の執筆記事を3本ピックアップするようBingに指示してみたが、結果は提示された記事3本のうち2本が筆者以外の人物によるものだった。

筆者が書いていない記事も筆者の記事として提示された

 この問題は今後AIの学習が進むことで改善すると思われるが、現時点ではもっともらしく思える回答をされても、それを簡単に信用すべきではないだろう。

旅行プランの作成やルート検索も不完全

 Bingは旅行プランの作成や大まかな移動ルートの案内にも対応している。こちらも「東京駅を午前10時に出発して熊本城まで行く1泊2日の行程を提案して」といった形で、求める条件を指示すれば良いので簡単だ。

 ただし、Web検索同様、必ずしも妥当な回答がなされるとは限らない。

 前述の熊本旅行の例では、Bingは東京から新幹線で6時間かけて移動するプランを提示してきた。だが、実際には羽田から飛行機に乗ることで、前後の時間を含めても3時間程度で熊本へ辿り着ける。特に理由がなければ、前者より後者の方が旅行プランとしては明らかに合理的だ。

東京から熊本まで新幹線で6時間コースを提案するBing

 他にも「京都から近鉄特急で行ける温泉地を教えて」という指示に対して、近鉄では行けない温泉地を候補に挙げたり、その説明文に実在しない「近鉄石山駅」を挿入して無理矢理近鉄沿線の条件を満たそうとするなど、結果の信頼性を損なう挙動もいくつか見られた。

おごと温泉は近鉄沿線ではない。また説明文にある近鉄石山駅も実在しない。

 その一方で、長距離を在来線で移動するプランの作成を指示すると、時間がかかりすぎるため新幹線を使った方が良いと忠告してくれるなど、気の利いた側面もある。とはいえ、現状ではBingに旅行プランの作成をすべてまかせるわけにはいかないだろう。

プログラムの作成は幅広いプログラミング言語に対応

 ベースとなったChatGPTと同様Bingでも、プログラムのソースコードを作成したり、入力したソースコードに潜むバグを見つけることができる。

 対応できる言語の幅も広く、筆者が見た限りでは少なくともC言語、Swift、java、Ruby、python、Objective-C、VC++、VB.net、「なでしこ」のソースコードを出力可能だった。

 ただし、出力されたソースコードやバグの指摘が正しいとは限らないため、Bingに任せれば誰でもプログラミングできるというわけではない。

文章生成機能は当たり外れが大きい

 Bingは小説や俳句からスピーチの原稿まで、さまざまな文章の生成にも対応している。

 試しに太宰治『走れメロス』の続編をBingに書かせてみると、一部不自然な部分はあるものの、文章としてはきちんと成り立つものが生成された。実はこの時「主人公の友人セリヌンティウスの視点で描く」という条件も追加していたのだが、こちらもきちんと守って書かれている。

セリヌンティウスの視点で描かれた『走れメロス』の後日談

 なお、Bingが続編の執筆に応じてくれるのは既に著作権が切れた作品のみ。まだ著作権が残っている作品の続編作成を指示しても、著作権保護を理由に応じてくれない。

 俳句に関しては、詠むだけでなく意味の解説もしてくれる。だが、筆者の環境では何度試しても、一発で正しい俳句が詠まれることはなかった。どうやら日本語の読みや音節に苦戦しているようで、これは日本語データの学習不足が原因と推測される。

俳句の腕は今ひとつだが、解説は一人前だ。

 Bingが詠んだ句はユーザーが誤りを指摘して修正させることも可能で、何度かこの作業を繰り返すと段々まともな俳句に近づいていく。ちなみに、Bingはほとんどの指摘は素直に受け取るが、稀に修正前の表現の方が好ましいと言い張る人間くさい一面も見せてくれる。

 スピーチ原稿の作成は俳句作成よりはまともに機能しており、結婚式や朝礼など場面に合わせたものを提案してくれる。だが、こちらも同じ文章を何度も連続させる等おかしな挙動をすることもあるため、今はまだ参考程度に留めておくのが賢明だ。

自分の意見を答えることもできる

 Bingはユーザーからの求めに応じて、自分の意見を述べることもできる。たとえばラーメンを食べる際、塩と醤油で迷うことがある。そんなときもBingに尋ねればどちらを食べるべきか意見してもらえるのだ。

今宵のBingは醤油ラーメン派のようだ

 ただし、政治や国際情勢に関わる内容については、中立を保つことを理由に回答を拒否する仕様となっている。

家電の操作はできない

 検索から文章作成までこなすBingなら、ほかにできないことはなさそうに思えるが、実際はそうでもない。

 中でも筆者がいちばん気になったのは、家電操作に対応していないことだ。

 Bingはあくまで文章生成機能がメインなので、家電操作に対応しないこと自体は理解できる。だが、常日頃アマゾンの「Alexa」で家電の操作をしている筆者としては、やはりBingにも対応してほしいのが正直なところだ。

結論:今はまだ万人には勧められない

 Bingはまだ不完全な面がかなり多く、万人に勧められる状態ではないというのが筆者の結論だ。

 ただ、今回指摘した問題点のほとんどはBingの学習不足に原因があり、時間が解決する問題でもある。

 一般開放までにBingがどれだけ賢くなれるかは、現在先行体験しているユーザーのフィードバックにかかっているのかもしれない。

 

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