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ポタ研改め、再出発

冬のヘッドフォン祭 mini 2023開催、小規模ながら活気あるポータブル系イベント

2023年02月13日 19時00分更新

 フジヤエービック主催の「冬のヘッドフォン祭 mini 2023」が2月11日に開催された。従来は「ポタ研」と呼ばれていたイベントだが、この名称となった。場所は同じ中野サンプラザで15階のワンフロア貸切で開催された。以下イベントの中からいくつか興味を引いた展示を紹介する。

FitEarブース:現代版のMH335を展示

 FitEarは「MH335」の改良型である「MH335ht(仮)」を展示。試聴の長い列が出来ていた。MH335ht(仮)の「ht」は開発者・堀田氏の意味。須山氏が開発したMH335を、新鋭の堀田氏が改良したもので、MHの名称の元となった伝説のエンジニア原田氏が協力している。

冬のヘッドフォン祭 mini

堀田氏(右)と原田氏(左)

 この改良は、最新の3Dプリンタ技術だから可能となったものだ。例えば、従来は3穴で大きくなりがちだったノズルが耳の小さなユーザーでも装着しやすいように小型化している。ほかにもネットワーク構造の改良がなされているようだ。音は以前のモデルよりも、バランスが良く滑らかな音質になっているように感じられた。

冬のヘッドフォン祭 mini

ヘッドホン開発の白井氏

 より改良が進んだヘッドホンのプロトタイプも展示された。以前に展示されたものの延長であるが、ハウジング、イヤーバッド、ユニットなどが改良されている。こちらもエンジニアの原田氏が協力しているという。音は帯域のバランスが良く、音場感が優れているように感じられた。

サイラスブース:最新DAPのE7を参考出品

 LUXURY & PRECISIONから最新DAPの「E7」が参考出品されていた。これはDACモジュール交換式で、試聴機にはAK4497が2基搭載されていた。DACモジュールはR2Rのタイプもあるということで期待したい。国内価格は未定だが現地価格は2万8000RMB(人民元)、およそ4300ドルほどのようだ。音はソリッドで透明感が高いLUXURY & PRECISIONらしいサウンドだ。

冬のヘッドフォン祭 mini

E7

冬のヘッドフォン祭 mini

Jaben Network/ Analog Squared Paper合同ブース

 Jaben Networkはシンガポール大手のポータブルオーディオ・ショップでアジア各地のオーディオを紹介している。

 ユニークなのは、DAPが人気のPhatlabが開発したスティック型DAC「RIO」だ。これはスティック型DACとは思えないほど大きいのだが、音質も従来のスティック型DACとは一線を画すようなスケール感がありパワフルだ。ポータブルでは使いにくいがノートパソコン用には面白いかもしれない。組み合わせられているRANKO Acousticskの赤いUSB OTGケーブルもユニークな音質向上の秘密があるという。RIOは3万円後半で、OTGケーブルは約2万円ほどとのことだ。

冬のヘッドフォン祭 mini

08ES

冬のヘッドフォン祭 mini

RIO

 Analog Squared Paperは人気の真空管アンプ「05」を大型化したデスクトップタイプの「05 デスクトップ」を展示。こちらは12AU7という普通の真空管アンプで用いられる従来より大きな真空管を搭載し電源を強化したもの。価格は30万円ほどになるようだ。音はやはり05より余裕があってより本格的な真空管サウンドという感触だ。

 また「08ES」という小型の静電型アンプも訪問客の目を引いていた。これはSTAX Proバイアス用の端子をSTAXの許可を得て採用しているという点がポイントだ。価格は電源ユニットとの組みで40万円台になるとのこと。基本的には特注品扱いのようだ。音は見た目のサイズ感を大きく超えるような本格的なものだった。

エミライブース:FiiOブランドの新機種

 FiiOの最新スティック型DAC「KA5」が展示されていた。これはKAシリーズの最上位モデルとなるものでコンパクトながら4.4mmバランス端子が搭載され、左右独立構成の本格的な製品だ。新たにディスプレーも搭載され、物理ボタンの操作も可能となっている。価格は「KA3」よりもそう極端に高くはならないくらいだろうとのこと。

冬のヘッドフォン祭 mini

KA5

 また、「KB1K」というオーディオ用のキーボードも展示されていた。Windows、MacなどのパソコンやAndroidベースのDAPにUSB接続可能で、ファンクションキーとボリュームに連動する。例えば、ボタンを押すと音楽アプリが立ち上がり、ボリュームで音量を操作、別のボタンで電源オフなどが設定できる。オーディオ専用PCなどを指向しているユーザーには便利だろう。

冬のヘッドフォン祭 mini

KB1K

アユートブース:Astell & Lernのデスクトップオーディオほか

 Astell & Kernの新製品では、デスクトップタイプの「ACRO CA1000T」が展示されていた。従来モデル「CA1000」との違いは、ESSのDACが搭載されて出力が強化された点で、音を聴くと以前よりも元気なサウンドを聴くことができた。

冬のヘッドフォン祭 mini

CA1000T

 qdcでは新製品の「Folk」が展示されていた。これは名称通りにフォークソングに向いているというイヤフォンで、ダイナミックドライバー・BAドライバー・平面型ドライバーの3種類のドライバーが搭載されている。価格は6万円強くらいとのこと。

 音はフォークソングで聴いてみるとたしかに楽器音が明瞭でコーラスの声も鮮明で聞き取りやすく、暖かみがある郷愁感を誘うような音だ。

冬のヘッドフォン祭 mini

Folk

HIFIMANブース:平面ドライバーのHE-10Pほか

 参考展示として以前発売した「HE-10」の平面型ドライバーを搭載したバージョン「HE-10P」が展示されていた。価格は未定だが、あの名機「R10」を想起させるような音。大型のイヤカップから想像できるような深い音場感と平面型の端正でスピード感のある音のミックスが印象的なものだった。

冬のヘッドフォン祭 mini

HE-10P

finalブース:D8000 Pro Limitedを正式発表

 finalではフラッグシップモデルのヘッドフォン「D8000」の特別モデルである「D8000 Pro Limited」が正式に発売され、展示がなされていた。国内限定80台で店頭予想価格は59万8000円。カラーリングはマットブラックとゴールドメッキの組み合わせとなり、和紙のイヤーパッドを採用している点が特徴だ。和紙のイヤーパッドは独特な装着感であり、深みがあり吸い込まれるような音質をさらに引き出しているように思えた。

冬のヘッドフォン祭 mini

D8000 Pro Limited

nwmブース:

 NTTを母体とするオーディオブランド。音が外に漏れない独自技術を採用したイヤホンのうち、完全ワイヤレスタイプの「MBE001」が展示されていた。ヘッドフォン祭のような騒々しい環境では音量が取りづらく聞こえにくくなるが、まったく耳を塞がないので音は自然に外から入ってくる。最近はこうした耳を塞がないタイプの製品が注目されているが、nwmのポイントは外に音が漏れないことだ。実際に人が聞いているイヤホンの近くに耳を寄せても全く音が聞こえてこない。GREEN FUNDINGで約1万8000円とのこと。

冬のヘッドフォン祭 mini

MBE001

冬のヘッドフォン祭 mini

装着したところ

 冬のヘッドフォン祭 mini 2023には、朝の出だしからたくさんのオーディオファンが詰めかけて賑わっていた。昨年に引き続き、事前登録制が採用され、申し込み数は880人だったという。ただ、会場を見ているともっとたくさんの人がいるようにも思えた。

 これは参加者の滞留時間が長いということも関係しているだろう。廊下のあちこちで参加者がポータブルオーディオ談義に花を咲かせている光景はいつもながらと言える。また、本イベントは同じ登録制でも、一般のイベントに比べて、登録した人が実際に来る割合がとても高いということだ。コロナ禍が明けていき、また以前のような賑わいが戻ることを期待したい。

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