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ゲームそのもののあり方を変えてしまった「Steam Deck」

2023年01月16日 09時00分更新

Steam Deckは業界のゲームチェンジャー

 Steam Deckの存在は、今後の家庭用ゲーム機のビジネスモデルを大きく変換する可能性があると考えています。何よりも特定のキラーソフトがなくとも、Steam上にある数々の過去の資産がすべて利用できるので、それ自体が強力なキラーソフトと言えます。

 そして、それは「世代互換性」や「物理メディア」という概念がなくなる可能性が出てきたとも言えます。これまでの家庭用ゲーム機のビジネスでは、新しいハードが登場するたびに、旧ハードで販売されていたゲームが動かなくなるというのが当たり前だったのですが、古いタイトルの下位互換性の担保が当たり前に変わるということです。

 これは任天堂、ソニー、マイクロソフトといったゲーム機の各社に戦略変更を迫る可能性のある大きな変化の要因です。

 ソニーは2011年発売の「PS Vita」で失敗してハンドヘルドを捨ててしまいました。当時は特に欧米圏での人気タイトルが出なかったからですが、その後Nintendo Switchは大ヒットし、Steam Deckのように完成度が高いものが出てきてしまいました。かつての携帯ゲーム機が抱えていた性能的な限界が、コンピューターの発展によって乗り越えられつつあるということだと思います。

 今後ソニーもハンドヘルドの戦略をどうするのかということを考えざるを得ないのではないかと思います。これは任天堂も同様で「Switch」の次世代機の方向にも影響を与えるでしょう。

 似たようなハンドヘルドPCは他の中国系メーカーも出してきていますが、ソフトの充実度で圧倒的な優位性のあるSteam Deckには当分かなわないでしょう。今後Steam Deckがゲームチェンジャーとなり、ゲーム産業のあり方も変わるのではないでしょうか。

 

筆者紹介:新清士(しんきよし)

1970年生まれ。「バーチャルマーケット(Vket)」で知られる株式会社HIKKY所属。デジタルハリウッド大学院教授。慶應義塾大学商学部及び環境情報学部卒。ゲームジャーナリストとして活躍後、VRゲーム開発会社のよむネコ(現Thirdverse)を設立。VRマルチプレイ剣戟アクションゲーム「ソード・オブ・ガルガンチュア」の開発を主導。著書に8月に出た『メタバースビジネス覇権戦争』(NHK出版新書)がある。

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