週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

【後編】西田宗千佳×まつもとあつし対談~物理からサブスク配信に直行した特異な国

Netflixが日本アニメに大金を出すフェーズは終わった

アニメ制作に大金を出すフェーズは終わった

まつもと アニメについて、もうちょっとうかがいます。

 Netflixが世界独占配信や期間限定の独占配信を前提として制作費の大半を支払うことで作品調達をする、というようなことをこれまでかなり強力にやってきたと思うんですけれども、その傾向にも変化が出てきたかなと。

 西田さんがおっしゃったアジア市場における配信サービス同士の競争とか、日本で調達したコンテンツを世界でどう見られているというところと絡んできそうなんですけれども、日本のアニメはどのような状況にあるとご覧になられていますか?

Netflixが日本に上陸したのは2015年。当初から国内制作番組の世界独占配信は実施されていた

西田 日本のアニメって、韓国のドラマと違って、単体でサービストップの視聴を取れるという状況にはないんですよね。韓流ドラマの『イカゲーム』のように特別な例だと、世界何十ヵ国でトップになるんだけれども、日本のアニメはそこまでではない。アジア各国でトップとか、アメリカの一部も含めた日本でトップとか、比較的狭い領域だと思うんですよ。

 ただ、見ていなかった人たちが見る量というのは、決してバカにはならないと聞いていて。たとえば、ランキングのTOP10には入ってこないんだけれども、TOP50なら入ってくる。バカにしたものではない、というのが1つの答えだと思うんですよ。

まつもと 「見ていなかった人」というのは……?

西田 これまでアニメを見ていなかった人が、見つけて、見るようになって、顧客定着の道具になる、というようなパターンですね。

 たとえば1コンテンツに10億ドル払っているとして、10億ドル払う価値があるような、要はブロックバスタードラマと同じレベルかというとそうじゃない。となると投資量は小さくなってしまうし、限定配信している期間も長く取れないという話になるんですけれども、とはいえ無視するというわけでもなく。

 じゃあどうなるかというと、結局は作る国で一番ヒットしそうなものを作ってもらいつつ、その調達にいっちょ噛みすることで、海外でも配信することによって効率的なビジネスを狙うという方向に変わってきている気はしますね。なので、オリジナルを作ると言っても、海外を狙った企画ではなくなってきているかな、という印象です。

まつもと 先ほど、まだ市場成長の余地があるのはアジア市場というお話がありましたが、では日本であれば、「日本でヒットしそうな大型作品に出資する」という方向になっているので、製作委員会の一員として一部出資をする。その際、海外での独占配信の権利はもらっていくと。ただ以前のような、Netflixオリジナルというビッグタイトルを世界に向けて作っていくという傾向はおそらくトーンダウンしていくであろうと、そういう見立てでよろしいですかね。

西田 そうですね。もちろん、シーズンによってはビッグタイトルが1本か2本くらいはあるかもしれません。でも大半は、海外配信権はいただくけれど、必ずしも完全なオリジナルではないという、すなわち出資額に関しても少なめというパターンが増えてくるだろうなと。要はあくまで製作委員会の一人になるというレベルに落ち着くのかなと。

前編はこちら

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事