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円安・インフレ・原材料費高騰、それでも結果を出すダイキン工業

2022年11月21日 09時00分更新

値上げの取り組みにも先手

 ダイキン工業は、厳しい環境のなかで、高い成長を続けている。十河社長兼CEOがいうように、為替のプラス効果がなくても高い増収を続けている。その背景にはなにがあるのか。

 十河社長兼CEOは、「エネルギーコストの上昇、インフレによる広範囲におよぶコストアップ、景気減速リスクの高まりなど、各地域で事業環境は急速に悪化している」としながら、「収益力強化に向けた追加の売価アップ策や、変動費のコストダウン、シェアアップに向けた商品力や販売力の強化などによる拡販、環境および省エネ対応をチャンスと捉えた事業拡大など、変化に対して先手先手で手を打ち、スピードをあげて実行することで施策の効果を上積みしている」と語る。

 経営環境の先行きが不透明ななか、需要の上振れ、下振れにも対応する複数のシナリオを想定し、マイナス面を跳ね返す施策や、プラスをチャンスとして伸ばすための施策を織り込み、状況変化にスピーディに対応してきたとする。

 たとえば、値上げへの取り組みにも先手で取り組んできた。

上期の営業利益の増減要因を見ると、原材料や物流の高騰で940億円減、上海ロックダウンで180億円減、固定費385億円減となる一方、売価施策で940億円増、コストダウンで220億円増、拡販で454億円増となっている。原材料費や物量費の高騰分の940億円を、売価施策による940億円のプラスできっちりと打ち返している点が特筆できよう。とくに北米市場では、この2年間で5回以上の値上げを実施しており、迅速な打ち手が際立つ。

 十河社長兼CEOは、「ダイキンでは、単純な売価政策ではなく、戦略的売価政策と名づけている。そこに意味がある」とし、「売価をあげたらシェアを落とすのではないかと現場は懸念する。だが、そのままでは赤字になる場合もある。単に売価をあげるのではなく、差別化商品の開発スピードをどうあげるか、営業の第一線から得た市場のニーズを捉え、それにふさわしい値付けをすることが大切である。また、売価をあげるには、営業力と販売力を強化しなくてはならない。提案力も強化し、サービス力や工事力もあげなくてはならない。ダイキンであれば、安心で安全で、いいものであると思ってもらえるブラント力も試される。総合力で、売価をあげていく。それが、戦略的売価政策の意味になる」とする。

 値上げに対しては、総合力の強化によって立ち向かうという姿勢がベースにある。

 そして、「値上げに関しては、私自身がトップとなってプロジェクトを組んだ。値上げに踏み切れないということがないようにした」と、経営トップの責任として取り組んできたことを示す。

 「銅やアルミの価格は緩んできている。だが、それに代わって、エネルギーコストの上昇や労務費の上昇がみられている。物流費も海上輸送は落ち着いてきたが、陸上輸送のコストは上昇している。厳しい状況は続いており、2022年度下期から来年度に向けて、もう一段、戦略的売価政策を考えたい。11月末に全拠点の責任者と審議して、具体策に落とし込む。その際にも、拡販とシェアアップを視野に入れる」と語る。

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