週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

違いはどこ? 軽自動車EV兄弟・日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」を乗り比べ

2022年08月28日 15時00分更新

サクラとekクロスEV
2台の違うところは販売方針

 では、違うところは何か? それは2社の軽自動車EVの扱いであり、販売方針です。

 その違いは、車名にも表れます。日産は「サクラ」を軽自動車のフラッグシップとして扱います。そのため同じプラットフォームを使う「デイズ」とは別の名称を与えました。「まったく新しい軽自動車のEVを発売しました!」というわけです。EVであること、つまりは先進性を大いに謳います。

日産「サクラ」

三菱「ekクロスEV」

 一方、三菱はフラッグシップではありません。「先進性だけでなく、経済合理性や実用性の高さで選んでほしい」と言います。そのため、エンジン車である「eKクロス」の兄弟であることをアピールするように、「eKクロスEV」と名乗ります。マンション住まいなど、自宅に充電設備が用意できない人や、長距離走る人、4WDが欲しい人などは、エンジン車を買って欲しいというのです。使い道に合わせて、エンジン車もあれば、EVもあるよという売り方です。

 その2車のスタンスの違いは、装備にも表れます。フラッグシップたる「サクラ」には、高速道路での運転を支援する最新運転支援システム「プロパイロット」が上位グレードに標準装備となっています。一方、EVは近距離中心と割り切り、そのぶん価格を抑えたい「eKクロスEV」は、高速道路での運転支援機能は上位グレードであってもオプションです。

 とはいえ、実際の販売価格は2車とも、それほど大きく変わりません。「サクラ」は上位グレードが294万300円、中位グレードが239万9100円、下位グレードが233万3100円。「eKクロスEV」も上位が293万2600円、下位が239万8000円です。上位同士であれば、その差は1万円を切るほど。ほとんど変わりがないと言っていいでしょう。

三菱「ekクロスEV」の荷室

三菱「ekクロスEV」の車内

 ただし、「サクラ」と「eKクロスEV」は、中身と走りが同じとはいえ、デザインはまったく別。スマートなイメージの「サクラ」と、カジュアルでアウトドアな「eKクロスEV」。ハッキリとデザインが異なりますから、デザインの好みで選ぶのであれば、それほど迷うことはないはず。中身は同じですから、どちらにするのかはデザインの好みで選ぶのがいいと思います。

 最後にEVという商品の注意点を述べさせてください。「サクラ」と「eKクロスEV」は、現在の技術から見れば、非常に素晴らしい完成度を実現しています。ただし、航続距離は180km(WLTCモード)にすぎません。満充電で最高180kmという数値は、カタログ値であり、あくまでも目安。状況次第ではカタログ値の5~6割しか走らないこともあるはず。使うたびに100km以上走行する人にはオススメできません。また、自宅駐車場に充電設備を設置できない人も同じ。そういう方はエンジン車を選ぶようにしましょう。

日産「サクラ」のコントロールレバー

日産「サクラ」のディスプレイ

 逆に、1日の走行距離が短い、自宅駐車場に充電設備を設置できるという人にとっては、非常に使いやすいクルマになるはず。つまり、EVは誰にでもオススメできる商品ではないということ。自分の使い方と環境にマッチするのかどうかを、ぜひとも確認した上で購入するようにしましょう。

日産「サクラ」

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事