完成度の高いM1を上回るM2搭載「MacBook Pro 13インチ」その性能と位置付け【本田雅一】
アップルは開発者向け会議のWWDC22で、第2世代となる自社開発のMac向けSoC「M2」を発表。M1ファミリーはオリジナルの発表後、M1 Pro/M1 Max/M1 Ultraと開発を進めていた。M2は線幅こそ同じ5nmだが消費電力の低減など生産プロセスがマイナーチェンジされたTSMCのN5Pプロセスに合わせて設計された新しい世代のSoCとなる。
最初に搭載される製品は、M1のときと同じくMacBook Proの2基のThunderboltポート、13インチディスプレイモデルとMacBook Airだ。MacBook Airはディスプレイや機構設計を含めハードウェア全体が一新されているが、MacBook Proの13インチモデルはM1搭載機と全く同じ機構設計と冷却システムを搭載する。
それだけにM1とM2の違いを観察するのに適していると言える。
機構設計をM1搭載モデルから引き継いだMacBook Pro 13インチ
MacBook Pro 13インチはMacBook Airがフルモデルチェンジとなったことで、Mac miniと並んで最も機構設計の刷新から長く経過した製品カテゴリとなった。インテル製プロセッサ搭載時代から基本構造を継承しており、途中、キーボード構造の変更はあったものの、そのフォルムは長年親しまれてきているものだ。
2ポートThunderboltモデルは底面に吸気口を持たず、ヒンジ部に隠れた部分からのエアフローで冷却をするため、上位モデルよりも熱処理の容量は低く、およそ16W程度のTDP(熱設計電力)を持つSoCまでにフィットすると考えられる。
とはいうものの、ファンレス設計のMacBook Airよりも安定した冷却ができるのは確かでM1搭載モデルでは長時間、持続的にパフォーマンスを必要とする用途でMacBook Airよりも安定した性能を発揮した。
短期間ながら試用した感覚でいえば、M1とM2はチップ面積が35%も増えているが、トータルの消費電力は増加しておらず、設計面ではそのまま従来のM1システムに搭載できると考えてよさそうだ。これは製造プロセスのアップデートに加え、回路設計の最適化で処理効率が高まったためだ。
詳細は後述するが、M2はM1の完成後にアップデートされたさまざまな開発成果が盛り込まれているため、同じ処理を行うためにより少ないSoCへの負荷(=消費電力)で同じ処理ができる。このためバッテリ持続時間を犠牲にせずにパフォーマンスを引き出せる。
言い換えれば、M2を搭載した以外にはほとんど何も変更はない。
M2搭載により映像処理や音声処理の回路や信号処理ファームウェアがアップデートされ、それぞれにレベルアップはしているが、MacBook Airのディスプレイ輝度が400nitsから500nitsへと向上したこともあり、MacBook Pro 13インチモデルを必要とするユーザーは次のようなユーザーがターゲットとなるだろう。
・動画書き出しや3Dレンダリング、長時間のGPU処理などコンスタントにパフォーマンスを発揮する必要があるアプリケーションを多用する
・Final Cut Pro、Logic Proなどに代表されるTouch Barでの操作が便利なアプリケーションの操作に慣れている(現在、唯一のTouch Bar搭載機)
・MacBook Pro 14インチモデルよりもコンパクトかつ軽量なシステムを求めている
といったところだろうか。MacBookのラインナップを俯瞰すると、多くのユーザーは新しいMacBook Air、あるいは予算面で大きな違いはあるものの用途次第では14インチモデルがフィットするだろうが、一方でコンスタントなパフォーマンスを発揮できるプロモデルとして費用対効果に優れる製品とも評価できる。
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