新型コロナ感染症によるまん延防止等重点措置が解除され、徐々に街に活気が戻ってきた。そのため、実店舗にて買い物を楽しむ人も増えてきていると思う。そこで、今回はアスキーのAMD担当である筆者が、秋葉原の店舗にて最近のAMD関連製品の売れ筋事情などの話を伺ってきた。
秋葉原の店舗へは2年前に日本AMD マーケティングスペシャリスト 佐藤美明氏と一緒に伺って記事(前編:https://amd-heroes.jp/article/2020/04/0398/、後編:https://amd-heroes.jp/article/2020/05/0401/)にしているが、果たして2年前とどう変わったのかも注目して欲しい。
コアファンが多く、ハイエンド製品の人気が高い
店舗名:パソコンショップ アーク
所在地:〒101-0021 東京都千代田区外神田 3-16-18 通運会館 1F
営業時間:平日 11:30~20:00、土日祝 11:00~19:30
定休日:年末年始 1/1~1/2までの2日間
※製品の価格は2022年5月末の取材時のものです
まずご紹介するのは、末広町寄りに店舗を構える「パソコンショップ アーク」だ。パソコンショップ アークは、電気街の中央通りから1本駅とは反対側の道に入り、後述する「ドスパラ秋葉原本店」、「パソコン工房 秋葉原 BUY MORE店」を超え、さらに末広町方面に進んだ先にある知る人ぞ知るPC専門ショップ。今回も2年前と同じく店長の渋谷氏にお話しを伺った。
AMDのRyzen CPUは、2017年に発売した当初からマルチスレッド性能の高さで注目を集め、その後性能の割にお買い得感あることから人気を博した。一昨年はゲーム用途で優位に働くシングルスレッド性能でも競合のインテルCoreプロセッサーにも勝り、高い国内シェアと認知度を獲得した。
しかし、今年の4月にインテルが第12世代Coreプロセッサーを発売し、シェアを拡大し始めており、業界が活気づいている。そんななかパソコンショップ アークでは、過去にはインテルCPUばかりを選んでいたクリエイターが、マルチスレッド性能の高さから、第12世代Coreプロセッサー発売後もAMD Ryzenを選択する人もいるという。その背景には、AMDが近年Adobeと連携を強めていることも影響しているのではとのこと。
また、CPUだけの価格では若干インテルのCore i5に負けるが、マザーボードの価格差なども考慮すると、総合的にはコスパよく組めるとして、Ryzen 5 5600XなどミドルレンジのCPUがライトゲーマーに売れているそうだ。
では、小型PCではどういったCPUが選ばれているのか、と聞くとパソコンショップ アークではANTECの小型Mini-ITXケースなどでPCを組もうとする人の場合、インテルCPUよりもGPUを内蔵するRyzen APUを選ぶ人が多いそうだ。
一方、パソコンショップ アークのお客様でRyzen 9などハイエンドなCPUを選ぶ人は、空冷で選ぶ人もいるが、最初から水冷を選ぶ人が多い。ゲームに強いRyzen 7 5800X3Dは即完売、入荷されればすぐに売り切れるほどに人気だという。
Radeon RX 6950 XTは製品によって20万円切りとハイエンドだとお買い得
ビデオカードはRadeon 6x50シリーズが登場したことで、少し賑わいをみせたという。次世代のRadeon 7000シリーズを見据えている人もいるが、Radeon 6x50シリーズはよりクロックアップし、競合であるGeForceに対抗し得る性能になったため割と売れているのだとか。中でもハイエンドであるRadeon RX 6950 XTが人気で、すぐに売れ切れるモデルもあるという。また、Radeon RX 6750 XTもそこそこ売れるそうだ。
ビデオカードのハイエンドモデルは、GeForce RTX 3090が20万円台前半から後半と高価だ。それと比べると性能は上回るが製品によっては20万円を切るRadeon RX 6950 XTのお買い得感は高い。Radeonはレイトレーシング機能を有効にすると性能が大きく落ちることもあるが、レイトレーシング対応ゲームの数はそれほど多くはない。
実際にパソコンショップ アークのスタッフの中でもRadeonを普段使いしている人もいるという。Radeonを購入した人は、ハイエンドのGeForceが高く、入手性が悪い時期というのもあったが、「性能はそれほど大きく変わらなかったので」という。また、パソコンショップ アークのお客様の中には、AMDファンで常にRadeonのみを購入する人も多いそうだ。
価格の安いビデオカードに関しては、近年GeForce RTX 3060などが値下がりしたことで厳しい現状もあるようだが、Radeon RX 6600 XTなどは売れているという。現状最も安価なRadeon RX 6400は、ロープロファイル対応の玄人志向などの人気が高いそうだ。
MSI製マザーボードの人気が徐々に向上
マザーボードはハイエンドのRyzen 9 5950Xと一緒にASUSのROG Crosshairシリーズが売れている。また、同じくASUSのProArt X570-CREATORも売れるとのこと。
ハイエンドだとASUS製とのことだったが、渋谷氏のイメージでは最近だとMSI製が売れているという。MSIは非常に多くのラインアップを出しているが、たとえば2.5GbE LANを搭載したり、光ってカッコよく、さらに他社製と比べて比較的安価と、国内で頑張っているので人気が高まっているのでは、とのこと。
ちなみに、ゲームをPCでプレイしたいというお客様の、プレイするゲームタイトルに変化はあったか?と聞いたところ「1年ぐらい前まではフォートナイト、またマインクラフトという方が、まだ残っていました。今年の1~2月くらいからはApex Legends、最近だとVALORANT。VALORANTはアップデートが来たし、大会で日本人選手が活躍したので興味を持ったという人がいましたね。とはいえ、ダントツにApex Legendsが人気ですね」と渋谷氏。
パソコンショップ アークでは、他店舗では置かれていないマウスやキーボードといった周辺機器も充実している。コアユーザーが来られる店舗ということで、周辺機器に関してはあまり質問されないというが、初めてPCを組んでゲームをプレイする、といったライトユーザーの方にはRazer製品をオススメするという。
根強い人気のロジクール製もピンキリではあるが、プロゲーマーなどのコアユーザーが使うハイエンドの製品は高価。Razerにも高価なモデルはあるが、メジャーでオススメしやすいモデルがあるという。
また、パソコンショップ アークではDuckyや、最近だとGloriousといった多種多様なブランドも扱っているが、ライトユーザーには浸透していないので、Razerから推奨しているということのようだ。
Razerの中でオススメしているモデルは?と聞くと、マウスでは軽量で人気が高い「Viper」シリーズ、キーボードでは「Blackwidow」シリーズとのこと。一方で、ヘッドセットは使い勝手の良さからHyperXをオススメしているという。
また、店員の中にはSteelSeriesを推奨しているが、共通しているのがキーボードとマウス、ヘッドセット合わせて2万円~2万5000円くらいまでを目安にしているそうだ。若い子供連れの場合は、親も同伴しているので、それ以上の金額を伝えると引かれるので、とのこと。
子供連れのお父さんの予算感はいくらぐらいですか?と尋ねたところ、「パソコンだけで15~20万円。周辺機器も合わせて20万円以内に収まってくれると嬉しいかな」といった感じのようだ。
ディスプレーのサイズは24インチが人気
Apex LegendsのようなFPSをプレイしたい、という人が多いとなると気になるのは、液晶ディスプレーのリフレッシュレートだ。渋谷氏によると、フォートナイトをプレイする人はあまりリフレッシュレートを気にしなかったが、Apex Legendsになるとリフレッシュレートを気にする人が多いという。
とはいえ、子供連れのお父さんなどはリフレッシュレートを知らない人も多い。一方で、大学生くらいになると配信者の動画などで知るのか、144Hz以上のディスプレーを使った高フレームレートでプレイしたいといわれるようだ。
ディスプレーは大きくても27インチまでしか好まれず、24インチくらいが人気とのこと。製品としては、コスパの良いMSI製などをオススメしているそうだ。たまに21.5インチを求められる人がいるというが、21.5インチでは高リフレッシュレート製品がないため、消去法で24インチディスプレーを選ばれるのだとか。
2年間に取材した際は、Intel 500シリーズチップセット登場前だったため、PCI Express 4.0(Gen 4)対応だったのはAM4プラットフォームのみだった。PCを組む際、どうしても予算の配分としてゲームやクリエイターの人は、CPUやGPUをより良い製品にして、メモリーは最低限必要な容量を積み、ストレージ、PCケースで予算を削る人が多い。そのため、Gen 4 SSDを購入する人は、まだ少ないといった声が多かった。
パソコンショップ アークではコアユーザーが多いこともあってか、それでもGen 4 SSDを選ぶ人が多かったそうだ。しかし、最近SamsungやWestern Digitalが、コスパの良いGen 3のSSDを発売したので、速度よりもコスパの良い製品を購入される方が増えているという。とにかく速さを求める人にはSeagate FireCuda 520 Gen4などもオススメしている。ただし、予算配分を考えるとお客様には、体感的には変わるけれどストレージの予算を他のパーツに回した方が良いといった案内をすることもあるようだ。
メモリーはCORSAIR製が人気だが、パソコンショップ アークではクリエイターの方などにはSanMax製をオススメしているという。容量は32GBを推奨している。重い処理を実行するユーザーの中には64GBを使っている人もいるが、実際に作業をするとあまりメモリーを使っている様子もないため、最近は64GBは本当に必要かと疑問視しているという。ただし、16GBは少ないので、32GBがちょうどよいと考えているようだ。
ゲームユーザーに関しては、現状は16GBで足りるが将来的なことも見越して32GBをオススメすることもあり、そこは予算次第とのこと。
CPUクーラーは水冷だとNZXTのKraken Xシリーズをオススメしている。また、MSIの上位モデルは製品の質は良いが高いので、安価なモデルの方が売れているそうだ。空冷は以前と同様にSCYTHEまたはNoctuaが売れているが、最近はDEEPCOOLやID-COOLINGも好調だという。最近だとID-COOLINGはSCYTHEよりも売れているようだ。
最近だと、ゲーム以外に配信をしたいという人は増えていますか?と質問してみると、相当増えているという。また、VTuberをやってみたいという人も多くなっているそうだ。配信をしたいという人で一緒にマイクを買う人には、HyperX「QuadCast」やRazer「Seiren」がダントツで売れている。ただし、ウェブカメラはあまり購入されないので、音声だけで配信している人が多いのかもとのこと。
アケコンのカスタムパーツなども取り扱っている
パソコンショップ アークの店舗の奥には、多種多様なPC周辺機器が置かれている。メジャーどころから、知る人ぞ知るメーカーまで抑えているところが同店舗らしいところだ。アーケードコントローラー(アケコン)も充実しているので、格闘ゲームをプレイされる方の動向を聞いたところ、「THE KING OF FIGHTERS XV」その前は「MELTY BLOOD: TYPE LUMINA」が発売された時には、やや問い合わせがあったとのこと。
パソコンショップ アークでは、アケコンの三和電子製のカスタムパーツも店頭で販売していて、そうした製品を購入されるユーザーもいるという。一部カスタム非対応の製品もあるが、対応しているアケコンのパーツは交換可能で、たとえばObsidian製のアケコンなどは交換できるそうだ。
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パソコンショップ アークにはコアなAMDファンも多く訪れているようだ。他店舗にはない豊富なゲーミングデバイスに加え、アケコンのカスタムパーツなど、コアファンの購買意欲をそそる製品も取り扱っているのも特徴。ハイエンドな高額商品の売れ行きが良く、ゲーマーからクリエイターまで幅広いユーザーのニーズに応えられている印象だ。
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