2022年2月18日開催「みちのくDEMO DAY」イベントレポート
東北地域大学発ベンチャー共創プラットフォーム 代表チームが次代を担うイノベーションの種を披露
新潟大学「細胞内標的を認識可能な新規創薬モダリティの開発」
ここからは、登壇した8チームのピッチ内容を紹介する。
最初に登壇したのは、新潟大学 理学部化学プログラム 准教授の中馬吉郎氏で、テーマは「細胞内標的を認識可能な新規創薬モダリティの開発」。社会への還元を目指した創薬の研究開発を行っており、これまで実現しなかった細胞内に作用できる薬剤を開発したと中馬氏は話す。
現在、創薬の分野では抗体を用いた医薬、いわゆる抗体医薬が隆盛を極めている。しかし抗体医薬は標的に対して高い特異性や親和性を持つことから、副作用が少ない創薬として使用されている一方で、薬価が高さをはじめとした課題も山積しているのが現状だ。特に近年は、標的分子が枯渇していることや外部からの制御ができないこと、また、細胞膜を透過できないことなどの課題も指摘されている。また、製薬業界としても、特許切れによるリスクや新薬開発における膨大なコストと時間の削減などの課題があり、抗体医薬に代わる新規創薬モダリティの開発が強く望まれているという。
その課題解決策の一つとして開発したのが、独自開発ツール「イオン刺激応答性DNAアプタマー(IRDaptamer:Ion-Responsive DNA Aptamer)」だ。IRDaptamerは、標的に対して、高い特異性と親和性を有することに加え、細胞膜を透過できるという大きな特徴を持っており、中馬氏は「新規創薬モダリティとして、創薬業界の課題克服に大きく貢献できる」と話した。
抗体医薬の市場規模は7兆円を超えており、売上高が年間数兆円に達する薬もある。IRDaptamer創薬は、ポスト抗体薬や既存の抗体薬では対応できなかった細胞内を標的可能な創薬モダリティとして高い需要が見込まれるという。今後は、2.2兆円の市場規模がある乳がんを標的としたIRDaptamer創薬で、抗体薬市場への参入を図り、3年後をめどに起業を目指すと中馬氏は展望を語った。
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