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任天堂ファミコンロボットを作る:ブロックdeガジェット by 遠藤諭 037/難易度★★★

これぞ横井軍平式! 光線銃やロボットが国産ゲーム機を海外に連れ出した

2022年03月11日 09時00分更新

米国人はFPSが好きなのは1980年代から変わらない

 1983年に任天堂からファミリーンコピューターが発売されて、「ドンキーコング」「マリオブラザーズ」「ベースボール」といったヒット作が登場したあと、次々にリリースされたのがファミコンの周辺機器たちだった。ちょうど、いまのニンテンドーラボのような感じのラインナップで、「任天堂やるなぁ」と思ったのをはっきりと覚えている。

 発売されたのは、「光線銃」(1984年)、「ファミリーベーシック」(1984年)、そして、「ファミリーコンピューターロボット」(1985年)だ。これらは、日本では“ゲームとは違う遊び方”といったイメージでとらえられたわけだが、世界最大のゲーム市場だった北米では、まったく違った意味をも同時に持っていた。

 米国では、ファミコンは「Nintendo Entertainment System」(NES)という名称で販売された(1985年)。NESには、「Deluxe Set」「Action Set」の2つのパッケージがあり、それらには周辺機器の1つ「光線銃」、Deluxe Setのほうには、加えて「ファミリーコンピュータロボット」も同梱されたものだった(もちろん対応ソフトもついてくる)。

 名称が、“コンピュータ”ではなく“エンターテインメントシステム”であるとおり、ビデオゲームであると同時にアトラクションを楽しむ“遊具”として位置づけられたのだとされる。これが、見事功を奏したことで、NESは、北米において大きなシェアを獲得することに繋がった。日本製ゲーム機の海外進出のきっかけを作ったという点で、ファミコン周辺機器の果たした役割は大きい。

ファミコン用の光線銃(写真:私の編集部で制作した国立科学博物館『テレビゲームとデジタル科学展』図録より)。

ファミリーベーシック。ハドソンと共同開発。16KBのBASICカートリッジ、メモリ領域は2KBだった。

ファミリーコンピュータロボット。肩の部分を、左右に旋回・上下、ハンドを開閉できる。

 上記の販売形態があったことにもよるが、光線銃用のタイトル『ダックハント』は、海外出荷本数でスーパーマリオブラザーズにも迫る2,800万本に達したという記録がある。まさに、海外のFPS文化の一端がうかがえるというものだが、ファミコンロボット(海外では「R.O.B.」Robotic Operating Buddy)も、スターウォーズ以降のロボットブームもあり人気のアイテムとなった。

 実は、北米のゲーム市場においてAtariなど海外製ゲーム機でも「スペースインベーダー」「パックマン」など、日本のゲームが市場を盛り上げた部分が小さくない。NESが発売されて、その上で動く任天堂や各社のゲームも大きな人気になっていくので、必ずしも周辺機器だけがNESを支えたわけではない。

 しかし、1985年といえば、日本で「アタリショック」と呼ばれることの多い米国ゲーム機市場の停滞から覚めやらぬ頃である。ゲーム機の本場である米国において、見たままの楽しさを訴求できるこれら周辺機器が果たした役割はやはり大きかった。

ファミコンからロボットに指示が出される仕組みが凄い!

 ファミコン周辺機器の「光線銃」や「ロボット」は、1970年代に任天堂から発売されてヒットした「光線銃SP」「光電話LT」のアイデアから発展した製品といえる。これを作ったのは、同社の「ゲーム&ウォッチ」「ゲームボーイ」でも知られる横井軍平氏だ(「枯れた技術の水平思考、ゲームボーイと横井軍平」参照)。

 光線銃の動作原理は、銃口に受光素子がありテレビ画面の走査線の描画タイミングでターゲットをヒットしたかを判定していたようだ。このしくみは、マウスの登場以前に画面上の座標を指し示した「ライトペン」と同じといえる。

 ファミリーコンピュータロボットのほうは、ソフトからロボットに命令が出されるしくみが面白い。ひとことでいうと、テレビ画面に表示されたソフトの画面をロボットが見ていて、それによってロボットが所定の動作をする。光線電話LTと同じように発信側(ファミコンの画面を表示するテレビ)と受信側(ロボット)は、ケーブルでは接続されていないのだ。

 ソフトを操作するたびに画面がチラっとフラッシュするようになっていて、それをロボットが解釈する。10年後の1995年にTIMEXが発売した「Datalink」というスマートウォッチに似たしくみだ(Datalinkではコンピューターのディスプレイ画面のフラッシュで電話番号などのデータをダウンロードしたのだが)。これは、子どもたちをびっくりさせたし、エンジニア系の大人たちをもワクワクさせた。

 私が歴史的なデジタル機器をブロックで作っていくブロックdeガジェットで、ファミリーコンピュータロボットを作った。「ブロックセット」と「ジャイロセット」という2つのパッケージがあったが、今回は、ブロックセットをイメージしている。私は、ファミコンソフトの画面ではなく、1日中、テレビ放送をこのロボットに見させていたことがある。なかなかカワイイやつであることは、その後のソフトでキャラ化していることからもわかる。以下、動画、ご覧あれ。

 

「ブロックdeガジェット by 遠藤諭」:https://youtu.be/ExEFeAQTLWM
再生リスト:https://www.youtube.com/playlist?list=PLZRpVgG187CvTxcZbuZvHA1V87Qjl2gyB
「in64blocks」:https://www.instagram.com/in64blocks/

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667

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