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コロナ禍におけるイベントのあり方とは? 世界最大のモバイル展示会「MWC Barcelona」に大きな変革の波

2022年03月08日 09時00分更新

開催されなかった2年で
イベントの様相は大きく変わった

 2020年は中止で、2021年は海外への渡航が難しい時期だったことから、筆者としては3年ぶりの参加となったMWC Barcelona 2022。会場こそ3年前と同じ「Fira Barcelona Gran Via」だが、コロナ禍によるいくつかの変化が見られたので、当記事ではその部分にフォーカスしてレポートする。

会場は2019年までと変わらずFira Barcelona Gran Viaを使用

 大きく変わったのは、入場や各ブースでのチェックインに利用するパス。3年前までは名前や所属、そしてQRコードがプリントされたパスを首からぶら下げて使用していたが、今回はスマートフォンの専用アプリで表示させるデジタルパスとなった。

入場などに使用するパスはスマートフォンのデジタルパスに

 このMWC Barcelona 2022に参加してデジタルバッジを入手するためには、事前にワクチン接種の証明書(2回目接種から9ヵ月以上経過している場合は3回目の接種が必要)か、陰性証明や回復証明を送る必要がある。筆者の場合は日本で発行されたワクチン接種証明書をPDFにしてアップロードした。

 入場時はスマートフォンに表示したQRコードを入口でスキャンしてもらうだけでOK。ただしこれでは会場内で名前などがわかりにくいということで、会場内にはパスを印刷する機械も用意されていた。ただしこれは名前と所属しか書かれておらず、名札として使えるだけ。会場内の講演スペースやブースへのチェックイン、プレスセンターへの入場などは、やはりスマートフォンのデジタルパス表示が必須となる。

会場入口近くにはデジタルパスでの入場方法を大きく案内

名札がわりのパスを印刷するスペースでは、デジタルパスのQRコードかざせばプリントできる

 ちなみにこのデジタルパスは日付が変わると、健康状態を確認するページが表示され、チェックボックスをオンにして宣誓しないと表示できなくなる。体温を入力したりといった作業は不要だが、感染拡大防止対策のひとつといえる。

マスク着用に関しては非常に厳しく

 また会場内は基本的にマスク着用必須。そのマスクも指定があり、欧州規格の「FFP2」に準拠し、マスクの表面に「CEマーク」が表記されていること条件となっている。会期初日に筆者が入場する際、会場入口で条件に一致しないマスクをしている人が注意され入場を拒否されている場面も見かけた。

日本で購入して持参したCEマーク付きのマスク

筆者も含めて会場内ではみなマスクを着用。プレスルームでもちょっと外した状態でいると係員に注意された

 マスク自体は会場入口の自動販売機で購入可能。また街中でもマスクを販売しているショップをよく見かけた。筆者は中止となった2020年もバルセロナには来ており、その際にマスクを売っている店を探したが見当たらなかったので、大きく変わったポイントといえる。

会場入口にはマスクの自販機が設置されていた

展示エリアは全体的に縮小傾向

 展示エリアはかなり縮小された。会場のFira Barcelona Gran Viaは全部でホール8まであり、2019年まではすべて使われていたが、今回ホール8は未使用。またスタートアップ系を集めた併催の「4YFN」も従来は別会場で行なわれていたが、今回はFira Barcelona Gran Viaのホール6で開催された。

ホール8は使わず展示スペースは縮小

 会場が縮小されたこともあり、混雑具合は以前よりもちょっと少ないかなと感じる程度。プレスルームも従来であれば会期初日は空きデスクを探すのに苦労するほど混雑していたが、今回は初日から空きスペースが多くあったので、海外からのメディアは少なかったようだ。

来場者が少ないためか、会場前の道路に例年設置されていた臨時横断歩道は今回作られず

今回VIPチケットやプレス向けに用意されていたフードコートはなく、プレスは食事券をもらい会場内の売店で交換するシステムに。ハンバーガーやサンドイッチのセットが選べた

お食事券で交換できるメニューには、寿司パックのセットもあった

 会場内の展示に関しては、今までどおりのMWC Barcelonaといった印象だが、全体的にディスプレーでのプレゼンが多く、実機や大がかりな機械を持ち込んでの展示は少なく、若干インパクトに欠ける印象。国際物流が逼迫している現状では致し方ないといったところか。

会場内の人流は以前よりやや少ないかなという程度

海外から展示物を配送するのが厳しいこともあり、ディスプレーでの展示が多かった

 また中国・深センあたりからの出展が極端に減っていたため、いわゆる「変態端末」的な展示が少なかったのは残念なところ。そのかわり前述のようにホール6の4YFNのほか、ホール7、ホール4には国別にスタートアップ系が多く出展していた。特に日系のスタートアップは、関連イベントの「ShowStoppers」とあわせて多く出展しており、本会場にも総務省が音頭を取って出展しているスタートアップ系のブースもあり、存在感をアピールしていた。

ホール4の様子

4FYNの日本エリアには、多くの日本企業が出展していた

ロシア系の出展・展示は禁止というニュースもあったが、カスペルスキーはブース展示があった

スマホが主役の時代は終わり
5Gなどのネットワークがメインに

 通信キャリアやネットワークベンダーのブースをチェックすると、スマートシティやスマートキャンパス、スマートインダストリアルといったソリューションを現実レベルで導入していこうという段階に入っている印象。

Tモバイルのスマートキャンパスについての展示

 とくに5Gの活用事例として、基地局にエッジサーバーを設置するMECやロードサイドユニットを導入して、街や特定のエリア、ビル、工場などの通信とデータ処理能力を強化。5Gの利用をスマートフォンだけでなく、クルマやドローン、ロボットさらにはVR機器といったメタバースへと広げ、効率良く使い運用していくのを狙っている。

インテルが展示していた、Xeon採用のサーバーを使ったロードサイドユニット

 大手スマートフォンメーカーが今回のMWC Barcelonaで新端末発表というのは少なく、コンシューマー向けにはネタが少なかったが、各社が5G普及のため地道に展開していることは実感できた展示会だった。

2023年は2月27日から開催予定

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