光を使った通信規格「Li-Fi」で動くタブレット
スマートフォンやタブレットのワイヤレス通信には4Gや5Gなどのセルラー回線、あるいは無線LAN(Wi-Fi)が利用される。ところがそのどちらも必要とせず、しかも我々の身の回りに存在している「光」を使って通信できるタブレットがCES 2022で展示されていた。
Oledcommの「LiFiMAXTab」は世界初という、可視光線を使った通信方式「Li-Fi」(ライファイ)に対応したタブレットだ。Li-Fiは無線周波数を使うWi-Fiとは異なり、LEDの点滅を使った光を使ってデータ通信をする規格である。Wi-Fiと異なり普段目にしている光を利用しているため、ほかの機器への干渉がなく健康への影響もないという。また、壁や障害物を通過することができないが、逆に言えばデータ通信がほかのエリアに漏洩しにくいというメリットもある。現時点の通信速度は1~5mの距離で最大3Gbpsに達するという。
Oledcommの母国、フランスでは幼稚園でのWi-Fiの利用が禁止されているという。LiFiMAXTabはWi-Fi不要で使える子供向けのタブレットとして開発され、2022年2月に約400ユーロ(約5万2000円)で販売される予定だ。
Li-Fi通信を使うには有線ネットワークをLi-Fiに変換するアクセスポイントが必要だ。アクセスポイントは天井などに設置する。可視光線を使うため設置場所は一般的な照明器具と同じ場所でいいとのことだ。将来的には照明器具のLEDライトの中にLi-Fi機能が内蔵される予定だという。
LiFiMAXTabにはLi-Fiを受信する小型のレシーバーも搭載する。可視光線と言うものの、実際に利用されるのは940nmの近赤外線となる。
LiFiMAXTabの主なスペックはSoCがMediaTekのMT6762、メモリー4GB、ストレージ64GB、microSDカード対応。ディスプレーは10.1型(1920x1200ドット)、カメラはメイン500万画素、フロント200万画素。通信方式はLi-Fi(最大150Mbps)に加え、4GデュアルSIM、Wi-Fi 5、Bluetoothを搭載。バッテリーは8000mAhで6~7時間の使用に対応、別途6000mAhの追加バッテリーも提供される。
LiFiMAXTabを実際に使ってみたところ、全体的な動作はエントリークラスのタブレットという印象だ。Li-Fiを使った通信は実際に100Mbps以上の速度が出ており、動画の視聴も問題なくできる。学校などでの利用に十分耐えられると感じられた。
USBタイプのドングルもあり、これを利用すればノートPCなどでもLi-Fiを利用できる。たとえば教室の天井にアクセスポイントを複数設置すれば、クラスの生徒と教師全員がLi-Fiを使うことができるという。
Oledcommは2019年に航空機機内でのLi-Fiの実証実験を済ませており、今後は病院などへの導入も進めていく予定だという。フランス以外での展開は未定だが、室内向けのIoT通信規格としてWi-Fiの代替や併用用途にLi-Fiの前途は有用だと感じられた。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります