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「体温解析・不妊治療をテックでアップデート~IoTやデータが後押しする女性の健康課題解決~」レポート

体温解析・不妊治療×データが女性の健康課題を解決する

 こんにちは、pilot boat(パイロットボート)の納富です。普段はスタートアップ関連の記事や動画を制作したり、FemTech InsightというFacebookグループ(興味のある方はご参加下さい)を運営しています。IoT H/W BIZ DAY 2021にて配信したセッション「体温解析・不妊治療をテックでアップデート~IoTやデータが後押しする女性の健康課題解決~」では、企画とモデレーターを務め、このレポートを書いています。

 セッション本編の前に、まずは、なぜ私がこのセッションを企画したのかをお話させてください。

 昨年あたりから、「FemTech(フェムテック)」という単語が注目されています。これは「Female(女性)」と「Technology(技術)」をかけ合わせた造語であり、「(身体的な)女性の健康課題を解決するテクノロジー」と紹介されることが多いように思います。

 日本でフェムテックが注目されるのはうれしいのですが、紹介される製品・サービスのほとんどが「どこがテクノロジーなの?」というアイテムになっています。たとえば生理用下着、サプリ、ナイトアイテムなどがあてはまり、果ては「女性の健康課題の解決」に寄与されていないものまで紹介されている状況です。

 誤解していただきたくないのですが、テクノロジーなど使っていようがいまいが、女性の健康課題を解決するプロダクトの存在は喜ばしいものだと私は考えています。とはいえ、私は「テックを使わないものには価値がない」と言っているのではなく、テクノロジーに関係ないものが「フェム『テック』」と紹介されて、本来紹介されるはずのテクノロジードリブンなフェムテックが侵食されていることに危機感を覚えているのです。

 これは実際に聞いた話ですが、とある不妊治療をされている男性エンジニアが転職を検討していました。彼は自身の経験を活かしてフェムテックに貢献したいという気持ちがありましたが、メディアで紹介されるフェムテックを調べるうちに「これは自分が役立つ領域ではなさそう」だと、フェムテックとは関係のない会社への転職を決めました。フェムテック業界は、みすみす1人のエンジニアを逃したのです。ただでさえエンジニア採用が重要かつ困難なこの時代、このようなことが起こるのはフェムテック各社にとって大きな損失です。

 そこで私・pilot boatは、狭義のテクノロジードリブンなフェムテックを紹介するべく、(たとえば先述したFemTech Insightで)情報発信をしています。今回はアスキー読者の皆さんに「女性の健康課題×テクノロジー」の一端をお伝えしたく、本セッションを企画しました。テーマは「フェムテックにおけるデータ活用」。お招きしたのは株式会社MEDITA (メディタ)代表取締役 田中彩諭理さんと、vivola(ビボラ)株式会社 代表取締役CEO 角田夕香里さんです。

深部体温の変動の連続データを取得するウェアラブルを開発「MEDITA」

 MEDITA(「株式会社HERBIO」から2021年に社名変更)は体温の変動の連続データを取得するウェアラブル開発とそのデータ解析をしているスタートアップ。今回登壇してもらった代表の田中さんはIoTベンチャーの出身で、体温や女性ホルモンの研究が専門の丸井朱里さんとMEDITAを共同創業しています。

 皮膚温度は外気や気化熱の影響を受けるので、人間の真の体温を知るためには深部体温の計測が必要ですが、その計測は簡単ではありません。しかしヘソの内側は人体の皮膚で唯一汗腺がなく、深部体温との相関性があることをMEDITAは発見。深部体温計測の変動の連続データの取得のためのウェアラブルを開発するに至ります。このウェアラブルは、熱中症対策やバーチャル治験の促進、体内時計の研究による不眠対策、各種疾患の早期発見、そして今回の主題である女性の健康、即ち日々の体調管理や妊活への貢献が期待されています。

 MEDITAは、第二種医療機器製造販売業許可も取得しており、医療機器の日本国内での製造販売ができる体制となっています。(本画像は医療機器監視課より指摘の可能性があります

不妊治療データを比較できるアプリ「cocoromi」

 続いて登場するのは「女性医療×AI」がテーマのvivolaで不妊治療データ解析アプリ「cocoromi」を提供する角田さん。彼女はソニーでデバイスの研究開発をしていた経歴をもっています。

 現代の日本において少子化は社会課題で、出生率は年を追うごとに低下しているのは、皆さんご存知でしょう。他方で不妊治療をしている方々も年々増加しています。この深刻な社会課題の解決に貢献しようとしているのがvivolaです。

 vivolaが考える不妊治療の課題は3つ。まずは治療方針や費用、検査が病院毎に異なることにより、患者が高いリテラシーを強いられること。次に通院頻度の高さによる仕事との両立(不妊治療を理由に仕事を辞められる方は実に2割にも上るそうです)。最後に、平均2年という長期の治療と、高額な医療費です。

 これらの課題を解決するのが不妊治療データ検索アプリ「cocoromi」。通院記録やホルモン値、採卵や移植についての治療ログが記録でき、患者同士でコミュニケーションが可能なSNS機能を備えています。最大の特徴は、体外受精成功者の統計データと自分と似た人の同質データを比較検討できること。客観的かつ定量的なデータエビデンスに基づいて不妊治療の分析ができるアプリとなっています。

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