週刊アスキー

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and SORACOM

第2回

サービスとともに成長してきたスマートロックの開発経緯を追う

シェアサイクル「Charichari」を支えるスマートロックの開発とSORACOM

SORACOM BeamでMQTTを容易にセキュア化 サービスを支える通信を実現

 三代目のスマートロックは、「既成の概念にとらわれず、自由に作ってよい」という開発方針だったため、松井氏もさまざまな試作を試した。音声モジュールを搭載したり、液晶を入れてみたり、GPSを複数入れてみたり。さまざまな先進的な取り組みも試したが、結果としては従来型のかんぬき型ロックが必要という話になった。「音声でアナウンスするとか、開くと光るといった機能は、なくしました。エンジニアとしてはやりたいのですが、お客さまはきちんと開けることが最優先なので」(松井氏)とのことだ。

 新しいスマートロックは「消費電力を下げる」「誤作動を起こさない」「位置情報を読み取りやすくする」「通信を安全に」という4点を重視して開発を進めたという。経年で動作不良が起こりがちだった二代目のロック機構も見直し、モーターや電池、GNSSモジュールなども条件を満たすべく、丁寧に選定した。

 通信に関しては、改めてSORACOMを採用した。「『SORACOM以外でもいいよ』と言われてはいたのですが、やっぱりSORACOMになりました(笑)。1つから手軽に試すことができ、本番に近いモノが作れたので、量産品までもシームレスに移行できました」と松井氏は振り返る。

 二代目のスマートロックは仕様上TCP通信で位置情報をクラウド側に送るだけだったが、三代目は双方向の通信を前提にIoT向けの軽量プロトコルであるMQTTに変更。デバイスからのデータはMQTT経由 でSORACOM Beamに送られ、そこからはMQTTSにセキュア化した後、クラウド側のGoogle Cloud IoT Coreに転送している。「SORACOM BeamにMQTTの暗号化処理を任せておけるので、われわれはデータだけ送ればよい。楽だし、なにより安価でありがたい」と松井氏はコメントする。

正確な位置情報の確保がいまだに課題

 取材では現物を元に動作を見せてもらった。まず利用したい自転車のスマートロックに記載されたQRコードをアプリで読み込むと、認証を経て、この時点でスマートロックのGPSに加え、スマホのGPSの情報もそれぞれクラウド側に送信され、ライドのスタート位置が記録される。移動中もスマートロックとスマホで位置情報を送り続け、鍵を閉めるとアプリの方でライドの終了を検知する。

3代目となるCharichariのスマートロック

 特徴としては、スマートロックとスマホが両方とも位置情報をとり続けているので、どちらかが動作していなくても、システムとして正常稼働するという点。また、スマートロック自体の監視も行なっており、バッテリ情報も定期的に収集している。動作はきわめてシンプルだが、バックエンドではかなりいろいろな通信を行なっているわけだ。

 苦労の末できあがった三代目のスマートロックは、2021年5月に初投入。現時点までに2000個規模が製造され、随時導入されていくという。近日投入される予定の電動アシスト自転車にも搭載される予定だ。

 現時点での悩みは、GPSだけだとどうしても位置のずれが生じること。スマートロックとスマホのGPSで正確な位置情報を補足できないと、本来ポートにあるはずの自転車がないという事態が起こりえるという。「たとえば、駅から家に帰る場合に、ポートにあるはずの自転車がないという事態になると、サービスが信じられないという不信感につながります」と蛭田氏は語る。

 三代目のスマートロックでは日本独自の衛星測位システム(みちびき)にも対応したGNSSモジュールを採用しており、位置情報精度の向上に努めているが、地下などでは位置の捕捉が難しいという課題もある。Charichariでは、設置やメンテナンスコストを考えて、ポート側に特別な機器を設置しなくても成立するシステムを構築してきたが、今後はさらなるサービス拡大のため、ビーコンなども併用して、従来ではポート設置が難しかった地下などへの対応にも取り組んでいく予定だ。

 シェアサイクルにとってサービスの鍵であるスマートロックだが、顧客体験を満足させるために解決すべき課題はまだまだ多いという。赤い自転車が街中を走り回る日を夢見続け、今日も終わりなき開発を続ける二人。SORACOMはそんなneuetの開発を支えている。

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(提供:ソラコム)

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