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最後の1年をしっかりとやり遂げる、シャープの戴正呉会長兼CEO

2021年08月23日 09時00分更新

今回のひとこと

「最後の1年となる2021年度の業績目標をしっかりとやり遂げ、次の世代にバトンをつなぐことが私の使命であり、何としてもやり切る覚悟だ」

(シャープの戴正呉会長兼CEO)

鴻海資本下で変革を遂げたシャープ

 シャープの経営体制が、鴻海グループ傘下となったのが2016年8月13日。それから、ちょうど5年を経過した。

 2016年3月期には、1619億円の営業赤字、2559億円の巨額の最終赤字を計上。債務超過により、同年8月1日には東証一部から二部へと降格という、まさに瀕死の状態だった当時のシャープの経営を担うことになったのが、当時、鴻海精密工業の副総裁だった戴正呉氏であった。

 戴氏は、社長就任初日に、「早期黒字化を実現し、輝けるグローバルブランドを目指す」というタイトルで全社員に対してメッセージを発信。このなかで、「104年の歴史を誇る世界的な企業であるシャープの再建に向け、大きな責任を担うことを誇りに思い、その責務を全力で果たしていく」と語る一方、「経営再建の担い手は皆さん一人ひとり。新しいシャープを自ら創っていく気概を強く持ち、それぞれの業務において主体的に変革に取り組んでほしい。皆さんと私は仲間。一緒に困難を乗り越え、早期の黒字化を果たそう」と呼びかけた。

飛躍的な業績改善を遂げた背景

 戴氏が、当初掲げていたのは、2~4年で黒字化するという目標だった。

 だが、社長就任からの1カ月間、社内をチェックした結果、「いろいろと手を打てば、すぐに黒字化できると考えた」として、早くも第2四半期(2016年7月~9月)には営業黒字化、同第3四半期(2016年10月~12月)には最終黒字化を達成。同年通期(2017年3月期)の営業利益は624億円に転換してみせた。さらに、翌年度通期(2018年3月期)では最終利益も黒字化。その後は、米中貿易摩擦やコロナ禍といった逆風があったものの、売上高は2021年3月期で、買収時点の2兆4000億円台を維持し、営業黒字、最終黒字を継続している。そして、東証一部への復帰もわずか1年4カ月という異例の短期間で達成。先ごろも、東証による一次判定で、プライム市場の上場維持基準に適合していることを確認しており、プライム市場を選択し、申請を行うことを決めている。

●シャープの業績推移

        売上高    営業利益  親株主純利益  
        (百万円)   (百万円)  (百万円)  
2016年3月期  2,461,589  ▲161,967  ▲255,972   
2017年3月期  2,050,639     62,454    ▲24,877  
2018年3月期  2,427,271     90,125     70,225  
2019年3月期  2,394,767     77,388     64,012  
2020年3月期  2,262,284     51,464     13,726  
2021年3月期  2,425,910     83,112     53,263

 戴氏による構造改革のスピードは速かった。

 社長就任1カ月で、経営基本方針を立案。それをすぐに実行計画に落とし込む一方、300万円以上のものはすべて社長が決済する仕組みを導入。最初の2カ月間は、約8割の決済案件が不合格となる厳しい線引きによって、コストと投資に対する意識改革を推進した。また、日本の大手企業では採用が進んでいなかった、成果を上げている人を評価する信賞必罰の人事制度を導入したり、社長就任からわずか2週間で実行した組織改革では、研究開発本部を、研究開発事業本部へと改称し、あらゆる組織が稼ぐ体制へと転換。また、前経営体制が売却した大阪・西田辺の本社ビルの買戻しや、同様に前経営陣によって行われたUMCへの欧州工場の売却および欧州地域におけるブランドライセンスを取り返すために、逆にUMCを丸ごと買収するといった、鴻海グループの資本力を背景にした大胆な投資も実施。この動きは、のちの東芝のパソコン事業の買収(現在のDynabook)にもつながっている。

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