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不適切検査で社長交代の三菱電機、100周年の節目に訪れた危機に

2021年08月02日 09時00分更新

今回のひとこと

「三菱電機の危急存亡のときに、このような機会を与えられるならば、身を粉にして、真剣に取り組んでいく必要があると考えて、覚悟を決めた」

(三菱電機の漆間啓社長兼CEO)

創立以来の危機の中、覚悟を決めた

 三菱電機の社長兼CEOに、取締役専務執行役の漆間啓氏が就任した。

 前任の杉山武史社長兼CEOは、同社が2021年6月30日および7月2日に公表した鉄道車両用空調装置などの品質問題のほか、それ以前から発生していた労務問題や不正アクセスによる情報流出問題など、同社グループにおける一連の問題を踏まえて、その責任を取るとして、7月2日に、突然の社長辞任を発表。7月28日に開催した臨時取締役会において、それが受理され、後任の社長に漆間氏を選出することを決議した。

 漆間社長兼CEOは、「三菱電機は、1921年の創立以来といえる危急存亡のときに直面している。社長を引き受けるべきかを逡巡したが、三菱電機の危急存亡のときに、このような機会を与えられるならば、身を粉にして、真剣に取り組んでいく必要があると考え、覚悟を決めた。新社長として負う責任の重さを痛切に感じている」と述べ、「新社長として課せられた使命は変革である。企業の抜本的改革を推し進め、新しい三菱電機グループを作ることと、一連の問題で失われた社会からの信頼を再び取り戻すことの2つに尽きる。私自らが先頭に立って、企業風土の刷新と信頼回復に全力をあげて取り組む」と抱負を述べた。

三菱電機としては珍しい文系社長

 漆間新社長は、1959年7月27日生まれの62歳。1982年3月に、早稲田大学商学部卒後、三菱電機の社長としては、珍しい文系出身だ。

 同年4月に三菱電機に入社。2006年4月にFAシステム業務部長、2010年4月に国際部次長に就き、2011年には、Mitsubishi Electric Europe B.V. 取締役副社長、2012年には同社取締役社長に就任。同時に、三菱電機の国際本部欧州代表にも就き、海外経験も持つ。

三菱電機 代表執行役 執行役社長兼CEOの漆間啓氏

 2015年には、常務執行役としてFAシステム事業を担当し、2017年からは社会システム事業を担当。2018年には専務執行役に就任。2020年4月に代表執行役、専務執行役として、経営企画および関係会社を担当した。同年6月には取締役に就任。2021年4月からは、取締役、代表執行役、専務執行役として、輸出管理、経営企画、関係会社を担当。CSOも兼務している。杉山社長時代には、ナンバー2のポジションにあり、異例のタイミングとなった社長交代とはいえ、外野からは順当な人事との声もあがる。

 だが、同社指名委員会の委員長を務める薮中三十二取締役は、「従来は、社長が次期社長候補を推薦するというものであったが、今回は、すべて指名委員会がイニシアティブを取って、リストアップするという手法を取った。杉山氏の異例の社長辞任、三菱電機が厳しい状況にあるなかで、これまでの社長選定のプロセスとはまったく異なるものである」と、選定の経緯を説明。。「当初は、社外からの候補も想定したが、品質管理の問題を解決するには、現場に精通した人材であること、従業員の信頼が必要であるといった理由から、社内の執行役から6人に絞って選考した。指名委員や社外のコンサルタントがインタビューを行い、部下、同僚、上司による360度評価の結果も踏まえて、漆間氏が最適だと考えた」とする。

 三菱電機が抱える大きな問題について、深層究明にたどり着き、ウミを出し切れる人材であること、変革を推進する決意と熱意があること、従業員からの熱い信頼を得ていることが、漆間氏を選定した理由とした。

 漆間社長兼CEOは、「三菱電機には、量産して販売する事業と、オーダーごとに製造、販売する個販の事業があるが、私は、その両方を経験している。また、欧州での海外経験もある。社内外の人とのつながりもある。複数の本部をまたがった経験は、技術系出身では難しい。様々な経験を活かしたい」と、文系出身社長として強みを生かす考えだ。

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