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東京都中野区が建築物の調査にドローンを活用、その狙いとは

2021年07月07日 11時00分更新

レベル4の実現は、人とドローンの共生

 中野区でドローンが飛行するのは、実は初めてではない。2019年の11月、2020年の3月に、国立研究開発法人 建築研究所、一般社団法人 日本ツーバイフォー建築協会、西武建設株式会社が協業して、「ドローンを活用した(超)高層建物安全点検調査技術の開発」とした実証実験を、中野区役所(2019年)、中野サンプラザ(2020年)を対象として実施している。

 この際は、ガイドでドローンを建築物の壁面に係留し、墜落や衝突を抑制しつつ、仮にコントロールを失っても、意図しない地点に落下することを防ぎながら、ドローンを飛行させた。

 現在、ドローンの分野の中でも最も大きなトピックとなっているのが、「有人地帯における補助者なし目視外飛行」(レベル4)だが、都市部でドローンを飛行させることは容易ではなく、この際の実証実験も、中野区の敷地、株式会社中野サンプラザの敷地に限って航空法に基づいた許可を取得し、実施している。

ドローンを用いた調査の例としては、東京都下水道局が管理する墨田区内の下水道の点検に、ブルーイノベーションのソリューション「Blue Earth Platform」とFlyability製の球体ドローン「ELIOS2」が活用されたことがある

 加藤 拓磨氏(中野区議会議員・工学博士)は、過去の実証実験について「周囲に関係者がたくさんいたことと、ラインでドローンが留まっていることもあって、住民にも安全だと思ってもらえたと感じている」と話す。

 合わせて、「今回の発表は、建物の点検がメインの目的でありながら、23区内でドローンを飛行させられる場所を目指すと考えると、チャレンジングでもある。人口の密集地帯でドローンを飛ばす際の課題は、多くの都市に共通している。

 このプロジェクトを通じて、自治体がドローンを飛ばすためにフィールドを提供してくれるという動きが拡張していく可能性もあるし、将来的には、地元の商圏とも協力しながら、ドローンに関連する“特区”の申請なども検討していきたい」とも話した。

 宮内 博之氏(建築研究所 材料研究グループ 主任研究員)は都市部での将来的なドローンの活用について、「できるだけ人がいない地域が、これまでの実証実験のフィールドだった。都市部には、必ず人がたくさん歩いている。その上にドローンが飛んでいるという状況は、今後どれほど技術レベルが上がっても、(レベル4を目指す上で)変わらない。人とドローンが共生している状態、“受け入れられるドローン”を目指すことが重要」と話す。

 ここからは筆者の個人的な見解となるが、例えば自動車は「安全への配慮を欠けば交通事故を起こす可能性がある」というリスクを持っているものの、生活の利便性を大きく向上させ、物流にも大きく寄与しており、人々に受け入れられている。これは、メリットがリスクを大幅に上回っていることを示している。

 ドローンの歴史は自動車に比べれば始まって間もないが、社会実装のメリットを人々が知っていくことで、自動車と同じように、徐々に社会に受け入れられ、活用シーンも広がりを見せていくのではないだろうか。「ドローンが普通に飛んでいる状態」がいつ訪れるのかは未知だが、自治体がフィールドを提供し、実証実験をするという今回の試みが持つ意味は大きい。

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