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NVIDIA Reflexでシステムレイテンシーを短縮

第11世代Core対第4世代Ryzen!ゲームの操作遅延が短いのはどっち?

2021年06月24日 11時00分更新

Reflexの優秀さがよくわかる「Rainbow Six Siege」

 まず最初に今年3月末にReflexを実装した、大人気FPSゲーム「Rainbow Six Siege」で試してみよう。APIはVulkan、画質は「最高」にレンダースケール100%を追加、V-Syncは360Hzディスプレーの効果を最大限活かすために無効とした。

 ソロプレイ専用ステージとなる「接近戦の基本」の初期出現位置で、システムレイテンシー計測を実施。フレームレートを安定させるために視点は固定しているが、どの環境でも170fps前後で安定していた。

メニューが出てしまっているが、Rainbow Six Siegeのシステムレイテンシーはこのシーンで計測。レイテンシーフラッシュ機能を利用している

 このような条件の下、標準装備の武器(L85A2)を500発発砲した際に得られたシステムレイテンシーの散らばりをプロットしたものが下の図だ。横軸が試行回数(左から1回目→500回目)、縦軸がシステムレイテンシーの実測値となる。システムレイテンシーの単位はms(ミリ秒)で1000分の1秒を意味する。点がより下のほうに集まっている条件ほど、レイテンシーが短いことを示している。ただし、全部の条件を同じグラフに入れると点が多すぎて見分けがつかないため、CPUはメーカー別、さらにReflexのありとなしで図を分けることにした。

第11世代Coreプロセッサー、Reflex有効時におけるシステムレイテンシー実測値の散布図

第11世代Coreプロセッサー、Reflex無効時におけるシステムレイテンシー実測値の散布図

第4世代Ryzen、Reflex有効時におけるシステムレイテンシー実測値の散布図

第4世代Ryzen、Reflex無効時におけるシステムレイテンシー実測値の散布図

 最初に気がつくのは、Reflexを有効にすると点の集合が全体的に下側に集まるが、各CPUメーカーごとの図において、CPUのグレードによる差があるようには見えないこと。また、CPUメーカー別の図を比べてみても、点の集合しているゾーンに意味のある偏りがあるようには見えない。この図を見ただけでなんとなく「第11世代Coreプロセッサーと第4世代Ryzenの比較はもとより、CPUコア数の差もないが、Reflexの有効と無効には差があるのではないか」という印象を持ったはずだ。

 この印象に確信を与えるため、次のグラフを用意した。今度はどの程度の長さのシステムレイテンシーが、どの程度観測できたかを示す、いわゆるヒストグラムである。前の散布図と同様、縦の項目が下にいくほどシステムレイテンシーが短いことを示し、より下のほうに大きな数値(その区間の値が観測された回数)が集中しているCPUがシステムレイテンシー的に有利ということになる。

Rainbow Six Siegeにおけるシステムレイテンシーのヒストグラム。Core i9-11900K(ABT)+Reflex環境では、31ms以上〜34ms未満のシステムレイテンシーが13回、16ms以上〜19ms未満が97回観測したという意味になる

 すべてのCPUでReflex有効時は明らかにグラフの山がヒストグラムの下のほうに寄っていることがわかる。この点から、Rainbow Six SiegeはReflexでシステムレイテンシーを短くしていると証明できた。ただし、今回検証したいCPU間の差異についてはややわかりにくい。ヒストグラムがキレイな山型になっているものもあれば、山の頂上部分が比較的フラットなものもあり、ヒストグラムでも判断しづらいものがある。

 そこで、各CPUの平均値も見てみることにした。上で得られたシステムレイテンシーのデータを集計したのが下のグラフとなる。

Rainbow Six Siegeで500回射撃した際のシステムレイテンシーの概要

 どの条件においても、Reflexを有効にするただけでシステムレイテンシーがざっと4ms前後短縮している。CPUによるシステムレイテンシーの差に注目すると、CPUによる差はそれほど大きくない。強いて言えば、Reflex無効時の第4世代Ryzenが平均27ms台なのに対し、第11世代Coreプロセッサーは26ms台なので優勢と言えなくもない。しかし、平均値にして2msにも満たない差が統計的に意味のある差かどうかはこれで判断はできない。

 そこで、t検定を利用し、各条件500発の射撃から得られた平均システムレイテンシーの差に統計的に意味のある違いがあるのか(=偶然や誤差の産物ではないのか)を検証する。後述の表は各条件ごとに総当たりでt検定を行い、両者のデータから平均値の差に統計的に有意とみなせる差があるかを判定したものだ。

 まず左端の縦軸の項目からスタートし、そのまま右を見てほしい。比較したい条件とクロスしたマスに○が入っているなら“その両者は統計学的に差があると言える”という意味になる。さらに、その○のマスがピンクなら縦軸の条件のほうがシステムレイテンシーが短い(つまり、優秀)ことを示し、○のマスが水色なら逆に上部の横軸の条件のほうが優れていることを示している。なお、マスが×なら統計学的には両者に有意な差はないという意味だ。

Rainbow Six Siegeで得られた検証データに対し、t検定(有意水準は両側5%)を行った時のマトリクス。左下は右上の鏡像になるので省略した。濃いグレーのマスは同じ条件どうしなので、無視してほしい

 この表は以下のことを語っている。

・あるCPUに対して、Reflex有効時と無効時のシステムレイテンシーの平均値の違いは例外なく統計的に有意な差がある。グレーのマスのすぐ上のマスは、すべて○であることがこれを示している。


・第11世代Coreプロセッサー間、もしくは第4世代Ryzen間といったCPUのグレードによる差はなく、Core i9-11900KのABT有効時と無効時のデータの間にも有意な差はなかった。ただし、Reflex有効時や無効時どうしでの比較に限る。前述の通り、有効時と無効時の比較はすべて有意な差があるためだ。


・Reflexを無効にしたRyzen 7 5800Xは、Ryzen 5 5600X以外のすべての条件に対し、システムレイテンシーの平均値が有意に大きくなった。Ryzen 5 5600Xもほぼ同様の傾向が見られる。


・Reflexを無効にしたCore i9-11900KのABT有効時は、Ryzen 7 5800Xに対してのみ有意な平均値の差が認められたが、Ryzen 5 5600Xに対しては差があると言えない。

 ここで注目したいのはRyzen 7 5800XとRyzen 5 5600Xの縦の列に、ピンクマスの○が多いという点だ。先のグラフからこの2つのCPUの平均システムレイテンシー(27.53msおよび27.36ms)は、ほかのCPUにおける平均値(26.85ms/26.54ms/26.37ms)より遅かったが、これは偶然ではないことを示している。

 Reflex無効時であれば、Rainbow Six SiegeはRTX 2060環境だとRyzenが若干不利なのだ。しかし、平均の差はわずか2ms程度と小さい。ゆえに、プレイヤーが認識することは難しいだろう。さらに言えば、このRyzenのハンデはReflexを有効にすれば完全に消える。総合すると、Reflexを使わないのであれば、わずかに第11世代Coreプロセッサーが優秀だが、Reflexを使っている限りはCPUによるシステムレイテンシーの差はないということになる。

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