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JOICマンスリーピッチ2021 トライアル開催レポート

接触感染を防止する空中操作センサー ニューノーマルをテーマにスタートアップがピッチ登壇

2021年07月26日 11時00分更新

 JOIC(オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会)事務局(運営:角川アスキー総合研究所、ASCII STARTUP)は、2021年2月17日、「JOICマンスリーピッチ2021 トライアル」をオンライン開催した。今回は、「ニューノーマル」をテーマに優れた技術をもつスタートアップ、ベンチャー企業が登壇し、事業をプレゼンするピッチを実施した。

 まず冒頭にNEDO青木氏より、JOICの活動紹介があった。JOICは、ベンチャー創造協議会とオープンイノベーション協議会が合併して組織された。その後、サイエンス&イノベーション・インテグレーション協議会が合流して現在に至っている。活動目的は、イノベーションの創出および競争力の強化にあり、民間事業者のオープンイノベーションの取り組み促進や企業にトゾマラズ、既存企業の改革をも含めた新しい取り組み、このような好循環を実現する「ベンチャー宣言」の実現にあると紹介。

 今回のようなピッチを開催したり、ワークショップやセミナーなども実施してきた。また、オープンイノベーション白書の作成など日本におけるオープンイノベーションの取り組みや成果を上げた事業者の紹介など、オープンイノベーションに関する情報発信も行なっている。

 これら情報は、JOICホームページでダウンロードできるほか、イベント開催情報やメルマガ登録など必要な情報を提供しているので是非、登録してほしいと締めくくった。

 続いて、ベンチャー企業によるピッチが行なわれた。

知能技術株式会社
登壇者:代表取締役 大津 良司氏(博士 生命医科学)

 最初の発表は、知能技研の大津氏により、接触感染を防止する空中操作センサー「UbiMouse」の紹介が行なわれた。

 同社は、「AIとロボットで社会の課題を解決する」を社是にAIやセンサ、ロボット(あるいはその組み合わせ)を開発してきた。今回はこのような技術を背景にあらたな技術を開発、製品化となった。

 「UbiMouse」は、装置に触れなくとも指先の動きを認識して操作を行なうもので、非接触により新型コロナウィルスの感染防止に貢献するとしている。タブレットやPCに内蔵のカメラがそのまま利用でき、ソフトウェアをインストールするだけでカメラが指の動きを認識し、操作ができるものだ。

 キヨスク端末などではセンサーを貼り付けることで非接触操作が可能となる。このシステムはくら寿司などで導入がはじまっており、2021年12月までに500店舗2000台が導入される予定だという。センサータイプはキャリブレーションも専用ソフトウェアも不要で、従来のタッチパネルと変わらない使い勝手で新たな説明が不要と、導入コスト、利用コストが低いのが優位点だという。これらセンサー類に関しては、導入企業や販売パートナーを募集している。

「パソコンの操作は、Macintoshがキーボードとマウスを使ったUIを発表してから37年間操作方法が変わっていないが、実は机に縛られているのではないか? SF映画のような空中に浮かぶ画面を直接操作することができないか? と考え、その技術を開発し、実現している。」と大津氏は語り、空中操作インタフェースのデモ画面を紹介した。

 今まで世界の後追いだったITの業界で、日本発の技術で新たな世界を切り開く共同開発企業や出資者を募集していると締めくくられた。

 質疑応答では、どのような企業に使ってもらいたいか、ビジネスパートナーとマッチングしたいかという質問に対しては、現時点で使われているオーダー端末、清算端末などだけでなく、もっと幅広い活用のアイディアを持っている企業からの問い合わせを求めているとのこと。空中操作技術に関しては、コレという具体的なアイディアがまだないので、みなさんと一緒になって新しい使い道を探して行くためにもパートナー企業や資金提供を必要としていると回答があった。

 コメンテーターの北島は、PCやスマホでの入力デバイスの進化はASCIIとしても応援したい。センシングの技術に自信があるので採用企業も増えているのだと思う。技術だけでなくユーザーの操作のことまで考えている点が良いと思うと評価した。

スマイルロボティクス株式会社
登壇者:取締役COO 砂塚 裕之氏

 続いての発表は、スマイルロボティクスの砂塚氏による「全自動下膳ロボットから始まる汎用型モバイルマニュピレータの開発」と題した会社紹介が行なわれた。

 創業者でCEOの小倉氏は、東京大学発のロボットベンチャーSCHAFT出身。そのSCHAFTはGoogleに買収され、世界最高峰のロボット開発に携わり、その後2018年のプロジェクト解散に伴い2019年に創業されたのがスマイルロボティクスということだ。産業用ロボットは既に世の中に広く普及しているが、より人の近くで活躍するロボットを作りたい、との想いでサービスロボットの開発を行なっている。

 ロボット業界では長年「汎用モバイルマニュピレータ」(※注:汎用的な「動くロボットアーム」)の開発に向け多くの技術者が挑んでいるが、なかなか実現できていないのが現状。そんな中、同社も将来的には「汎用モバイルマニピュレータ」を目指すものの、あえて最初は汎用性を捨て、特定用途に特化したモバイルマニピュレータを開発し、その後領域拡大をすることで最終的な汎用化を目指す、というアプローチをとっている。

 まずはどの領域にアプローチするのかということで、人手不足が深刻でかつロボット化の可能性の高い給仕業務を分解し、下膳であればロボット化の抵抗が少なく、かつニーズも高いのではと分析した。当初はファミレスをターゲットにしていたが、コロナ禍により飲食店は厳しい状況となり、現在は飲食店以外にも宿泊施設や介護福祉施設、病院、小売店など幅広く適用先を探している最中だ。

 開発したアーム付き配膳・下膳ロボット「ACUR-C」は、タブレットで指示を出すと自律移動でキッチンに食事を取りに行き、指定されたテーブルに運んで配膳を行なう。また、食べ終わった食器を認識して回収しバックヤードに運ぶ。そんな配膳と下膳の一連の作業を行なえるロボットだ。

 アームがあるのでロボットとテーブル間の載せ替えは不要。レーザーセンサー搭載により天井や床にQRコードを貼るなどの環境に手を加えることなく自律行動が可能となっている。なお、障害物回避などはもちろん、さまざまな安全対策が取られているということだ。

 ロボットの動作に必要な「認識する・考える・動かす」という3要素で高レベルなソフトウェア技術開発を手がけている。また、世界初のRust言語を使ったロボットソフトウェアのオープンプラットフォーム「OpenRR」をリリースし、世界中のロボットをこのプラットフォームで動かすこと目指している。

 なお、スマイルロボティクスでは優秀なエンジニアを募集している。正社員でもアルバイトでも、副業でも業態は問わないとのこと。

 質疑応答では、どんな企業とのマッチング、アプローチを求めるかという質問に対し、「レストランなどを持つ宿泊施設に加え、介護医療系の分野でお役に立てるのではないか」と回答した。

 コメンテーターの北島は、AIを搭載したロボットというのは様々な企業や研究機関が開発したり研究しているが、それが徐々に実務に降りてくるタイミングなのかと思っている。今回は下膳ということだが、今後活用分野が広がってゆくことを期待していると期待をにじませた。

ペスタロッチテクノロジー(Pestalozzi Technology)株式会社
登壇者:代表取締役社長 井上 友綱氏

 3社目は、ペスタロッチテクノロジーの井上氏により、AIを活用することでの体育・部活動のエコシステムをつくる「教育×スポーツテック」の取り組みが紹介された。

 冒頭、近代教育の父と言われるヨハン・ハインリヒ・ペスタロッチを挙げ、生まれた環境や場所によらず教育を受ける権利があるという考えに共感し社名の由来としたことが説明された。

 現在の体育、部活動など、スポーツの指導では属人的な教育指導(コーチング)により、運動が嫌いとなることがある状況が説明された。一方で、教員の負担も増えていることにも言及、教員の働き方改革が急務であることも指摘された。

 部活顧問に対するイメージのギャップにも触れ、親世代と現役世代での温度差に隔たりがあることが紹介。それらを解決するソリューションとして、コーチングアプリ「CoachX」と体力測定の記録管理アプリ「Alpha」が紹介された。

 CoachXは、安価にトップレベルのコーチングが学べるほか、チームの練習メニュ、スケジュールやコミュニケーション機能が提供している。AIによる練習と分析機能も予定されており、フォームの改善やケガの防止などに役立てることができる。

 どの部活動であっても改善をしてゆかなければならないが、特に弱小や中堅のチームがターゲットとなる。バスケットボールからスタートしているが、テニスやサッカー、野球、陸上などジャンルを広げてゆきたいとしている。

 オンラインコーチングは、種目ごと、個人の習熟度に応じた学習、指導に沿った最適な動画をリコメンドすることで、生徒はトップアスリートによるレクチャーをいつでもどこででも受けられ、技能向上が見込めるほか、顧問の先生としてはコーチのアウトソーシングができるなどのベネフィットが得られる。

 今後は、別々のアプリで提供しているものを統合して1つのアプリでニーズに応じた様々なサービスを提供してゆきたいと締めくくられた。

 どのような企業とのマッチングを希望するかという質問には、学校や教育委員会など既存の対象顧客層は依然ありつつも6歳〜18歳までの身体周りのデータや運動習慣のデータをとれるので、そういったデータにダイレクトにアクセスしたい企業にも活用してもらいたいと回答があった。

 コメンテーターの北島は、オンラインコーチが流行なっているが、部活動のエコシステムなどにまで触れている人はなかなかいないと着眼点を評価。特にCoachXについてはデータが溜まってくるとより一層強みが発揮されるのではと今後に期待を寄せた。

株式会社カレアコーポレーション
登壇者:取締役会長 横田 敏之氏

 最後の発表は、カレアコーポレーションの横田氏による「マイクロ波ドップラーセンサーによる非接触バイタルセンシング」についての紹介。

 同社は、富山大学内にある研究開発型ベンチャー企業で、マーケティング、営業拠点が東京兜町にある。マイクロ波ドップラーセンサーによる非接触整体センサーの開発、製品化に成功し、離れた場所からストレス度や集中度、喜怒哀楽などを波形や数値として提示することが可能だ。

 これらのバイタル情報から健康状態や生活習慣病、認知症予防といったライフサイエンス事業への展開を目標としている。

 脈拍測定の方法のなかから無線脈波法という体表面の微細な振動を24GHzのマイクロ波ドップラー効果を用いて脈波を測定するもの。センサーは、解析ソフトとセンサーモジュールで構成されており、低速微小な動きの検知に特化したモジュールと、ソフトウェアにてIF信号の解析やノイズ除去、揺らぎ解析などを行なっている。

 センサーモジュールに関しては、富士通コンポーネントが開発したドップラーセンサーを採用し、自社のノイズ除去、ゆらぎ解析技術を組み合わせた協創事業だ。

 用途の一例としては、体調異常の検知やドライバーの状態モニター、家電制御などに応用できるとしている。

 電波は、耐環境性にすぐれコストもそこそこなので、赤外線やレーザーなど他の方式と比べても優位で、NILS脳計測装置(リファレンス機)と使用して精度検証をおこなうなど計測データの正確性と解析技術の組み合わせによって、高い精度での心の状態を数値化することができる。

 ターゲット市場としては、福祉や介護サービスから住宅設備、オフィス機器、家電、車、ゲームなど多岐にわたる。

 マッチングに関しては、B2Bのビジネスなので、非接触でセンシングデータを使用したいという企業からのオファーを求めている。例えばドライバーの居眠り検知や浴槽での見守りなど人間を対象とするものから畜産関係など非接触で行なうことでの優位性が生かされると自信をみせた。

 コメンテーターの北島は、用途の幅広さを評価。どのように実装してゆくかという点で良いビジネスパートナーとコラボしていってほしいと期待を寄せた。

大学シーズを素早く市場につなげていきたい

 ピッチの後、経済産業省の取り組みについて、経済産業省 産業技術環境局 技術振興・大学連携推進課 陶山 武史氏より紹介があった。

 高度成長期には、製品の性能を上げれば購入してもらえるというような「リニアモデル」で、基礎研究から製品開発、販売までが5年から10年と長いスパンで繰り返すことで企業は成長を続けてきた。

 それに対して日本のイノベーションエコシステムの現状は、物のコモディティ化が進んだことで、性能を上げるだけでは価格競争に勝てず、ハードウェアからソフトウェアの比重が高まっているなど価値構造の変化、変化のスピードも2、3年(数年未満)と早くなり、今までもモデルが機能しなくなっている。

 米国、中国などがスタートアップが急成長する新しいモデルが生まれてきたのに対して日本企業は乗り遅れてしまっているのが現状。

 日本においても、大学などの技術(シーズ)を素早く吸い上げてシームレスに市場につなげる好循環が必要。そういったことに対応できるスタートアップと、アセットやリソースをもった既存企業が価値共創して自律的なイノベーションの好循環が生まれるのが理想として政策を進めていると説明。

 大企業には既存の市場を壊してしまうような破壊的イノベーションを起こしにくい「イノベーションのジレンマ」を抱えている。他方スタートアップは、破壊的イノベーションを起こすことを目的に活動しているので、社会変化への対応や新しい市場の創出、スピード感を持った動きが期待できるが、人材や資金調達に課題がある。既存企業とスタートアップ両者が足りないものを補うようなオープンイノベーションを積極的に行なうことが理想ではないかと企業間の共創に期待をにじませた。

 成功事例を示しつつも、欧米と比較してオープンイノベーションが進んでいない現状にも言及。スタートアップと大企業の連携が重要と取り組むべき課題も示した。

 連携には、契約に時間がかかる、意思決定のスピードが遅い、情報漏洩の恐れがあるなど解決すべき要因も存在しており、さらに広範囲な協業禁止などスタートアップの事業スケールを阻害する契約や、知財の取り扱いなどで、オープンイノベーションを阻害する方向になりがちである点などを指摘。失敗事例を交えて、どうすべきかを示された。

 それが、未来投資会議から提示された「オープンイノベーションに関するモデル契約書と提携ガイドライン」にて、大企業とスタートアップ企業の契約の適正化を図る独占禁止法の考えとその解決を整理したガイドラインの策定を目指しているという。

 特に、共同研究契約については、事業会社に知財保有させたり全領域で共同保有にするのではなく、スタートアップが基本的な権利を有し、大企業は関心領域のみで独占的な権利を有するなどスタートアップの権利保護に寄った内容となっている。

 公正取引員会からは、実態調査を元にスタートアップと事業連携に関する指針を策定。独占禁止法の問題となる事例と背景と原因を整理し、その予防策と具体例を示して、契約時に活用してもらうなどの内容となっている。

 これら資料は本公開に向けて修正をしているところだという。

 その他オープンイノベーション関連・スタートアップ関連施策(補助金など)の紹介と、今回紹介した資料の案内で締めくくられた。

 NEDOからは、NEDO公募情報の紹介があった。研究開発型スタートアップ支援から3つ、AIチップ開発加速のためのイノベーション推進事業から1つで、事業規模、ステージに応じていくつかの種類があるとしている。

 最後にコメンテーターの北島は、今回のテーマが「ニューノーマル」だったが、思ったより各社BtoBtoCで、コンシューマに届く技術を持っているように思った。知財は持っているのであとはこの使い方、普及のさせ方にあると思う。コロナ禍以前より研究開発を進めていたり、技術はもっていていたのを、いかに状況に合わせて届けられるか、活用できるかがポイントだと思う。スタートアップ支援の仕組みを活用するなど産学官で連携して結果が出るようにしてもらいたいと締めくくられた。

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