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VAIO のレジェンド開発者たちに訊く

ブレイクスルーを目指した4面カーボンボディが生まれるまでのぶっちゃけ秘話

2021年05月28日 11時00分更新

たとえ1gでも軽くするための努力

――VAIOの軽量化はマグネシウム合金から始まりました。それがカーボン素材の採用へと変わっていった経緯について教えてください。

浅輪 「マグネシウム合金の次を目指した進化を考えたとき、有力なのがカーボンファイバーでした。世の中的には、マグネシウム合金を薄肉化したり、マグネシウムリチウム合金など異なる金属を使ったり、さまざまな努力がありますが、われわれとしては、いまいちばん強くて軽い材料はカーボンファイバーだと思っています。それをどう使いこなすかを考えています。
 ここで課題となるのが形状です。ソニー時代に少し曲げたことはありましたが、VAIO株式会社になってからは、極力コストを抑えたいという考えから、平面のカーボン板を使うようになりました。それは、カーボンファイバーの強度を活かしつつ部品化するために「アウトサート」という手法が取られることがありますが(これは型に板を入れ、そこに樹脂を流し込んで一体成型する技術です)、われわれも以前は用いていますが、不良が多かったことからVAIO株式会社になってからはそれを止めて、成型品を接着する方法に変更しました」

――貼り付ける……、つまりネジ穴やリブなどは全部接着したものなのですか!?

武井 「そうですね。PC本体には強度を保つためのリブや、ビスを締めつけるためのインサートナットの設置などが必要ですが、これらすべての内部構造物が接着剤で貼り付けられています。接着をする際には、各構造物が一体のもののほうが容易なのですが、新しいVAIO Zでは軽量化が必須だったため、構造物として最低限必要な役割がある部分のみの「パーツ小島」を作って、それぞれを接着しています。そのぶん強度の確保や位置決めが難しくなりますし、接着剤が塗布できるのりしろが狭く塗布位置や量も制限されます。設計者の立場でも、サプライヤーの立場でも組立てや成型に手がかかる方法となるため、かなりの苦労を乗り越える必要がありました」

――正確な位置に貼り付けるだけでも非常に大変そうです。ちょっとズレたりとかしないんですか?

武井 「そこなんです。弊社の生産技術メンバーが作った治具(部品の位置合わせをするための補助工具)を組み立てに利用するのですが、かなり複雑なものになりました。部品はこの治具を使い手作業でセットして置いていきます。その上にマシンで接着剤を塗布したカーボンファイバー製の筐体を置き、前後左右位置を決めたうえで上下から圧力をかけます。
 小島部品の取り扱いが難しいため飛び飛びになっている小島同士を(プラモデルのランナーのような)ハリでつなげておき、後でいらない部分をカットするようにしています。ここも軽量化のための一手間ですね。それがわずか10gであっても、機能上必要ない部分で重くなるのはカーボンファイバー筐体を使う上で本末転倒なので、1gでも多く削れるようがんばっています」

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