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アニメの門DUO「グラフィニカ平澤直社長インタビュー」

コロナ禍でアニメの現場はどうなった? 制作スタジオ社長に聞いてみた

2021年05月22日 18時00分更新

いよいよ「彼らがこっちに来た……」

まつもと ファンが広がるということは、つまり市場が広がることなので、ここらへんで次の話題に移りましょう。

 次は、グラフィニカの経営者という立場の平澤さんから見た、「コロナ禍がアニメスタジオの経営に与えた影響」についてお話していただきたいと思っています。コロナ禍によってYouTubeなどの配信サービスを見る時間が増えているわけですから当然、市場は広がっています。これはおそらく経営にはプラスです、と。

平澤 はい。

まつもと 一方でアニメ制作は、集団作業特有の制作プロセスの変更を伴うわけで、必ずしもプラスばかりの部分ではない。むしろ変えるためにコストがかかるでしょう。そのあたりの良い部分、悪い部分の組み合わせを、平澤さんは経営者としてどのように描いていこうとしているのか聞きたいです。

平澤 先ほど、映像を見るという体験がテレビやパソコンからスマホに移ってきているという話をしましたけれど、もう1つ決定的に進んだのが、映像を「見る」よりもインタラクティブに「ゲームをプレイする」という体験が進み、より時間を取っているように感じます。

 マーケットサイズをみても、アメリカですら映画のマーケットよりもアプリゲームのマーケットのほうが大きいのです。そのくらい、同じ映像でもよりインタラクティブな映像(ゲーム)にお客さんが夢中になる時間が長くなっています。

 たとえ一本線の映像でも、VTuberのような少しインタラクティブ性とライブ感のある映像にユーザーさんの関心と時間が集まっている。ちょっと前まで女の子が可愛い深夜アニメのBlu-rayを買ってくれていたお客さんのなかには、ホロライブさんやにじさんじさんのVTuberさんに課金している人たちが少なからずいらっしゃるかもなと思っています。

まつもと 参加意識を持ちやすいのでしょうか? たとえばアイドルアニメで参加意識を持ってもらおうとすると、ライブで演者さんがパフォーマンスして、アニメの物語が目の前で再現されていることに感動するわけですが、今はコロナ禍で難しい。しかも非常に大掛かりで、会場という物理的なキャパシティーの制約もある。

 一方、VTuberは(ライブのたびに巨大な会場を借りるよりは)制作コストが低くて済む。かつインタラクティブでもあり、他メディア展開をより効率良く進められます。

平澤 そうした状況のなかで、ついにホロライブさんという最強の一角がホロライブ・オルタナティブのPVを公開しました。もちろんお馴染みのキャラクターは登場するけれど、いつもと違うプロフィールだと思うんですよね。PVを見る限り、ファンタジー世界にバーチャルアイドルたちが出てきて物語が始まるっぽいんですよ。

まつもと 平澤さんはそこにどういったスゴさを感じているのでしょう?

平澤 ホロライブさんはバーチャルアイドルプロダクションです。バーチャルのキャラクターたちが「オルタナティブ」ってことは、キャラクターは出てくるけれども、これまでの物語の世界観とは異なる世界に登場して、何かしらのストーリーを伴った映像作品を作り出そうとしているように自分には見えています。

 自分たちは一本線な映像をずっと作ってきたのですが、VTuberさんのような存在とどのように協業・共存共栄できるかを考えています。

まつもと いよいよ「彼らがこっちに来た……」ということですよね。

平澤 そういうことです。決して陣取り合戦的なモデルで考えているわけではありませんが、やっぱり動きが早いですし、お金も投入しています。また、PVがスゲー良いんですよ! これと同じようなものを作ってと言われるとちょっと躊躇するレベルで良いムービーでした。

 (ゲームやVTuberなど)インタラクティブな産業が、一本線の映像を作る(アニメ)産業をある種、包み込み始めている、その過程の中に自分たちがいると、私には見えています。その一員として、どうやって仲良くできるかっていうのをずっと考えてます……って感じですね。

まつもと だからアニメスタジオも、少なくとも平澤さんが考えるアニメスタジオは、一本線の物語を作って納品して終わりという時代ではなくなってきている、ということですかね。もちろん、従来のやり方も継続されると思いますが。

平澤 仰る通り。それが継続するなかで、一緒に組む相手が漫画や小説の出版社さんだけではなく、極めて速いスピードでインタラクティブな映像を作って提供していく人たちも加わってくるだろうから、この人たちと仲良くする術を自分たちなりに考えないと。

 この人たちは超頭が良くてどんどん試行錯誤していくので、優しく包み込まれて「今までと一緒で良いですよ」と言われているうちに、自分たちが成すはずだった物事をすべて彼らが達成してしまう……という可能性があるんですよ。それはそれで幸せなことだとも思いつつ、映像を愛するものとして、少しでも映像の発展に貢献できたらと思うので、なにがしか自分たちなりにできることはないかと考えている、という感じです。

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