国産カスタムIEMの雄であるFitEarが、イヤホン製作をはじめて20年ほどが経つ。FitEarの代表製品である「FitEar MH334 Studio Reference」の発表からも10年が経った。そして2021年、「FitEar TO GO! 334」の後継機である「FitEar TG334」が発表された。
TG334は4月24日のオンライン・ヘッドフォン祭で披露される。
イヤモニ界の神も称賛したTO GO! 334のコンセプト
初代のFitEar TO GO! 334は2012年に発売された製品で、ユニバーサルIEMの嚆矢ともなる記念碑的な製品だ。そして実はこの名称の「TO GO!」というのは私の個人ブログ「Music TO GO!」から取られた名称でもある。"TO GO"というのは(海外のハンバーガーショップなどで)外に持ち出すという意味の英語で、ポータブルの意味であると同時にカスタムとは異なる店頭でそのまま持ち帰られるという製品だという意味も込められている。
IEM(イン・イヤー・モニター)とは、プロミュージシャンなどが、演奏の返し(モニター)に使用するイヤホンのことで、国内ではイヤモニとも呼ばれる。イヤモニは性能が高いので、個人でも高音質イヤホンとして使う人がいる。遮音性を最大に得るため、IEMは個人の耳型に合わせて作られることが多いが、製作に時間がかかり、不要になっても他人に売却しにくいという難点がある。
そこで、イヤーピースを使用して万人の耳に合うようにした製品がある。これがユニバーサルIEMだ。
FitEar TO GO! 334が画期的だったのは、カスタムIEMと同じ手法で、イヤーピースタイプのモニターイヤホンを製作したという点だ。同じモデルをカスタム仕様とユニバーサル仕様の両方で用意する手法は、この後のマニアックなIEMメーカーでは一般的となっていく。「IEMの神」として知られるジェリー・ハービー氏も来日した際、須山氏の慧眼に賛辞を送っていた。
当時、高性能イヤホンの代名詞と言えば「AKG K3003」だったが、これを上回る3基のBAドライバーで3way構成を組み、さらに大サイズのローユニットを搭載したTO GO!334の登場は画期的だった。こうしたハイエンド製品はカスタムして注文するしかなかったが、店頭で持ち帰りができる身近な存在となったのだ。
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