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KRIPTONが「KX-0.5II」を発表、いまや貴重な存在になった中級クラス密閉型ブックシェルフ

2021年04月15日 21時47分更新

 クリプトンは4月15日、「KX-0.5」の内部配線を変更し、スピーカー端子もバイワイヤリング接続可能とした改良モデル「KX-0.5II」(通称:ポイントファイブ・ツー)を発表した。価格は21万4500円。発売は7月上旬を予定している。

KX-0.5II

貴重な存在となった密閉型の中級ブックシェル

 KX-0.5は2017年9月の発表。KX-0.5IIは2020年9月のKX-1.5の技術を取り入れ、ハイレゾ音源の再生にも対応しうる50kHzまでの高域再現ができる機種だ。

バイワイヤリング対応となった

 140mmと170mmというウーファー口径の違いはあるが、内容はKX-1.5に迫るものとなっている。KX-1.5同様、内部配線にPC-Triple C導体の自社製ケーブルを使用。ツィーター用の「SC-HR1300」(8800円/m)はマグネシウム芯線、ウーファー用の「SC-HR1500」(1万3200円/m)は絹の介在を使用したより太いケーブルで、それぞれ単品販売もされている。両者を組み合わせた4芯の「SC-HR2000」(1万5900円/m)というバイワイヤリング向けケーブルもある。これを使うことで、スピーカーケーブルと内部配線を統一できる点も、オーディオファンには魅力的だろう。バイワイヤリング対応に伴い、ネットワークもKX-1.5相当にアップグレードしている。

上からバイワイヤリング用のSC-HR2000、低域用のHR1500、高域用のHR1300

SC-HR2000は、切り売りだけでなく、端子を付けた完成品としても購入できる。

 正面から見た大きさ(幅352×高さ194mm)は若干小ぶりだが、奥行き(319mm)はKX-1.5と同様であり、密閉型スピーカーで豊かな低域を出すために求められる、容積を十分に確保できるようにしている。

内部配線の違いだけとは思えない差

 市場では珍しくなった、中級クラスの密閉型スピーカーとして貴重な存在であるKX-0.5。その完成度は十分に高いものだった。KX-0.5IIはバイワイヤリング対応に伴いネットワーク回路が刷新され、内部配線の線材が変更されたと言っても、ユニット構成や外観などに変化はない。音質差がどの程度あるかには少々懐疑的な面もあった。

 しかし、比較してみると、中高域がよりしなやかな表現となり、音の雑味も減って、楽器や声がより整理されて聴こえる実感を持った。さらにバイワイヤリングにすると、S/N感が上がり、無音部分になった際の切り込み感もより鋭い、歯切れのいいサウンドになる。結果、「California Dreamin’」を歌うダイアナ・クラールのボーカルの子音やニュアンスがより鮮明となる。また、単なる無音と有音の対比だけでなく、どの場所に音があって、音がないのかの描き分けが明瞭になるので、空間自体が広がり、声と伴奏が空間の異なる場所に浮き立つ感覚も得られた。低域から高域までのつながりも自然で尖りがないため、聴き心地もよくなる。

 全体にドライで高解像度な再現はほかのクリプトンスピーカーと同様だが、音が際立つことによってワンランク上の性能を手に入れた印象だ。ドライバーの持つポテンシャルがまだまだ引き出せることを感じた。  クリプトンとしてはバイワイヤー接続対応のスピーカーとバイワイヤーケーブルの「SC-HR2000」を推していくとのことだが、そう考える理由に納得できた。

たかが電源と侮るなかれ

 合わせて電源ボックスの新製品も発表。ピュア電源ボックス「PB-150」は、14万1900円の「PB-HR1500」など、高級品が多いクリプトンとしては安価な3万8500円だが、アンプなどの大電流/高ノイズ機器と、プレーヤーなどの「小電流機器」の分離接続ができる2回路方式(各2口、合計4口)を採用するなど、同社製品のエッセンスを取り入れている。

少し小型化してシルバーのカラーになったのが「PB-150」(黒いものはPB-111)

 従来機種の「PB-111」と比べて小型化しつつも、スチール製筐体の厚さを増やすなどして制振性に配慮。また、コンセントも従来のパナソニックからアメリカン電機製(ロジウムメッキ)に変更。試聴を繰り返し、コストと音質のバランスの取れた部品を厳選したという。内部配線は単品売り電源ケーブル「PC-5」と同等のOCF導体だという。

 「税抜き3万円以下という目標よりは高価になったが、そのぶん音質の追い込みには自信がある」とする。

 KX-1.5を使い、PB-111とPB-150の違いも確かめられた。静寂部分の切れ込みや空間再現性の向上などはこちらでも感じ取れたが、特に大編成のオーケストラでは空間の広さやステージ上にズラリと並んだ楽員の位置関係、そして音とその後ろに広がる空間の対比などが明確になった印象がある。また、ノイズフロアが下がり、ダイナミックレンジが向上するためか、音量が少し大きくなったような迫力感も出てくる。

 音質向上を図るため、アンプの買い替えなどを検討するユーザーは多いと思うが、クリプトンによると電源ボックスは特定の機器だけでなく、電源につながったシステム全体の機器の音を改善できる効果(特にノイズフロアを下げ、S/N感を高める効果)があるとする。ACアダプターから機器までの短い距離とはいえノイズが与える影響が無視できないのだろう。そのため、高価な機器に買い替える前に、一度電源ボックスの変更を検討してはどうかと提案していた。

 実際その効果はありそうだが、数万~10万円超のアクセサリーを購入するのは少し勇気がいる面もある。こういった機器を取り扱うメーカーや販売店は、機材をユーザーに貸し出し、自分の環境でどのような効果が出るかを確かめられる機会も設けてほしいものだ。

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