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WQHDゲーミング向けGPU「Radeon RX 6700 XT」の実力を試す【前編】

2021年03月17日 22時00分更新

メモリーバス幅の狭さを補うInfinity Cache

 ではRX 6700 XTのスペックを確認しておこう。CU数40基、つまりSP数は2560基となるが、これは1世代前のRX 5700 XTと全く同じ。ただしメモリーバス幅が192bitと狭いが、VRAM搭載量は12GBと多い。先日販売が始まったNVIDIAの「GeForce RTX 3060」と似ている。既存製品との関係からRX 6700 XTの方がやや上のセグメント向けの製品といえる。

 対抗製品は型番的に“7”のついたRTX 3070が妥当だと思うが、あちらはメモリーバス幅256bitに対し、RX 6700 XTは192bit幅。性能に直結するメモリーバス幅を狭めてしまうのはリスクだらけの判断といえるが、AMDにはバス幅の狭さを補う技術がある。GPUのL3キャッシュというべき「Infinity Cache」だ。RX 6800/6800 XTのInfinity Cacheは128MBだが、RX 6700 XTのそれは96MBに減っている。それでもフルHD〜WQHDのパフォーマンス向上に効果が期待できるようだ。

RX 6700 XTと、その近傍のGPUとのスペック比較

256bit幅のGDDR6メモリーの帯域と消費電力をそれぞれ1とした場合、単に192bit幅に狭めると性能は0.6程度に落ちてしまう。しかし192bit幅にInfinity Cacheを組み合わせることで、消費電力を抑えつつ帯域は2.5にすることができる、とAMDは主張している

検証カードの情報を「GPU-Z」で拾ってみた。GPU-Z最新版でResizable BARの状況が確認できるようになったのは嬉しい

 アーキテクチャーは既存のRX 6800シリーズと共通なので技術的に語るべき部分はほとんどないが、動作クロックが非常に高い点に注目したい。リファレンス仕様ではブーストクロックが最大2581MHzだが、RX 6800の1905MHzと比較すると500MHz以上引き上げられている。

 AMDによれば回路規模を減らしたことで生まれた熱・電力的余裕からクロックを引き上げたということだが、ここまで高クロックで回るGPUは珍しい。改めて7nmプロセスの凄さを認識させられる。

 また、VRAMを12GBにした理由だが、WQHDゲーミングをターゲットにした場合、その位ないと今時のAAAタイトルでは厳しいという判断を下したようだ。

 下図がその根拠となっているデータだが、WQHDで最高画質設定(レイトレーシング含む)を利用するとVRAMは8GB以上消費するタイトルが目白押しである。

RX 6700 XTのレビュワーズガイドから抜粋。RX 6700 XTでWQHD環境におけるVRAM消費量(のピーク値)をゲームごとに調べると、最大11GB消費するゲームがあるという

 ただこの表はデータとして少々バイアスとミスリードも含まれている点には言及せねばならない。このVRAM消費量はどういった手段で観測しているか書かれていないが、Windows 10のタスクマネージャやGPU-Z等から観測できる「VRAM消費量」は、“実際に使われている(Used)”のか“確保されているだけ(Allocated)”なのか見分けが付かないのだ。

 例えば上の表に出てくる「Call of Duty: Black Ops Cold War」や「Godfall」は11GB使うとされているが、実際このゲームについてはVRAMがあればあるだけ使うスタイルであるため、VRAM搭載量の多いRX 6800 XT等を使えば14GB近くまで使っているように見える(物理搭載量の最大8〜9割が使用量として観測できる)。

 ただこの容量のうちどの程度が使われていて、どの程度が確保されているだけなのかは、普通のツールでは判別がつかない(そのゲームの開発者ならば詳しくモニターできるだろうが)。VRAMの余裕は心の余裕であることを否定する訳ではないが、8GBだからといって性能や限界が低いと安易に考えるのは危険なのだ。

新しい追加技術も発表された

 以下の内容は、RX 6700 XTのプレス向けブリーフィングで得られた情報について気になった点を簡単にまとめてみる。  まず1つめは、システムレイテンシー(インプットラグ)を軽減する「Raden Anti-Lag」がアップデートされ、DirectX 12のゲームでも効くようになったという話から。

AMDの技術力により、これまでAnti-Lagが対応できなかったDirectX 12ゲームでも、Anti-Lagが効くようになる。早ければAdrenalinの次のアップデートで実装されるのではないだろうか

 既存のRadeon Anti-Lagについてはハイスピードビデオ分析による検証を行なっているが、Anti-LagはDirectX 9ないし11のゲームでしか機能しないというのがこれまでの仕様だ。

 DirectX 12においてはゲームのプログラムがグラフィックスパイプラインをガッチリ制御するため、入力するタイミングをギリギリまで遅らせることはできない、というのがこの理由になる。

 Anti-Lag系機能の後追いだったNVIDIAは、DirectX 12でもレイテンシー低減機能を実装すために新たなAPI「NVIDIA Reflex」を生み出した。Reflex APIをゲームに組み込むことによって、DirectX 12でもレイテンシーを減らすことができる。NVIDIA Reflexについても検証した時は、Fortnite(DirectX 12)でも効果を確認している。

 しかし、AMDの謳い文句が本当なら、ReflexのようにAPIを組み込まなくてもDirectX 12の機能だけでシステムレイテンシーが削減できる。ゲーマーにとっては大きなメリットとなるはずだ。なぜDirectX 12でこのような機能が実現できるのかまでの解説は得られなかったが、ゲームを選ばないという理由でAnti-Lagは非常に興味深い。これについては改めて検証していきたいところだ。

 次にRadeon Boostもアップデートされる。ゲームの入力操作トリガーにして画面の解像度を動的に下げることでフレームレート低下を防ぎ、かつレイテンシーも下げるという機能だが、今回のアップデートで動いている時にVRS(Variable Rate Shading)を発動させことも可能になった。

 従来のBoostは解像度そのものを下げてしまうため画質が犠牲になってしまうが、VRSを利用することで画質の犠牲を抑えつつ、不要なレンダリング処理を端折りることが可能になる。ただDirectX 12限定(VRS自体がDirectX 12 Ultimateの一部であるため)な点には注意したい。

操作をトリガーにVRSを発動させることで描画負荷を下げる機能がRadeon Boostに実装される

 最後にAMD版DLSSというべき「FidelityFX Sharpening」だが、これについては何ら進展が得られていない。専用ハードを必要とせずオープンな技術を使うという触れ込みだが、まだゲームに統合するに至るまでの完成度には至っていないようだ。

RX 6800シリーズ発表当時の資料より再掲。AMD版DLSSとして期待されているFidelityFX Sharpeningは、まだ進捗すら公表できない段階のようだ

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