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コロナウィルス飛沫シミュレーションにも活躍した富岳、その負荷はまだ1/6程度

2021年03月11日 11時00分更新

地球は青かった、そして富岳も青かった

 また、共用開始となった3月9日は、世界初の有人宇宙飛行士であるユーリイ・ガガーリン氏の誕生日であることを受けて、ガガーリン氏が語った「地球は青かった」の言葉にあわせて、「富岳も青い」とコメント。そして出発する際に発した「さあ、行こう」という勇気を振り絞って語った言葉にあわせて、「富岳も最初のスイッチが入り、いよいよ共用がはじまる」と、富岳が新たな挑戦の一歩を踏み出すことと重ね合わせてみせた。

理化学研究所の松本紘理事長

 一方で、松本理事長は、「富士通の力量がなければここまでこなかったと思っている。コロナ禍にも関わらず、これだけのスパコンを搬入し、設置し、滞りなく進められたことは関係者の努力によるものだと考えている」と語る。

 これに対して、富士通の時田隆仁社長は、「富岳の開発には多くの挑戦を伴った」と話し、「富岳のCPUは、当初、10nmを予定していたが、必要とする性能を実現するために開発の途中段階で7nmに変更した。開発計画にも大きな影響を与えたが、研究者やエンジニアの情熱と努力で乗り越えることができた」と開発における苦労について説明。さらに、「新型コロナウイルスの広がりにより、部材の供給が滞るという困難もあった。だが、関係者が一丸となって対応し、サプライヤーの協力により、スケジュール通りに納めることができた。開発を担当した富士通にとって、今日を迎えられたことは、喜びもひとしおである」と語る。

富士通の時田隆仁社長

 続けて、「富士通は、イノベーションによって、社会に信頼をもたらし、持続可能な社会を実現することをパーパス(存在意義)に掲げている。富岳が本格的に利用され、Society 5.0を支える新たなイノベーションや価値を創出する基盤として、多くの課題解決につながる成果を生み出すことに期待している」とし、「富岳は、8年半ぶりに世界ランキング1位の座を日本に取り戻すだけでなく、初の4冠を獲得し、日本の科学技術の力を世界に示すことができた。富士通は富岳の安定的な運用を支えるとともに、富岳が生み出す成果を通じて、社会に貢献したい」と語った。

 オンラインイベント「HPCIフォーラム~スーパーコンピュータ『富岳』への期待~」は、理化学研究所計算科学研究センターと高度情報科学技術研究機構が主催。スーパーコンピュータ「富岳」共用開始記念イベントと位置づけられた。

 ビデオメッセージを送った文部科学省の萩生田光一大臣は、「富岳はひと足早い山開きを迎えることになる」と表現。「研究者はもちろん、産業界の方々にも富岳の世界トップクラスの性能を最大限に引き出し、まだ誰も登ったことがない頂を目指して、大いに活用してもらいたい。また、富岳は裾野が広い山であり、できるだけ多くの方に活用してもらえるように、文部科学省としても環境整備を進める」とする。

文部科学省の萩生田光一大臣

 そして、「富岳を国民共有の財産として、次世代科学技術を担う若手研究者はもちろん、GIGAスクール元年を迎える児童生徒にも世界一の性能を体験してほしい。富岳が国民に愛され、期待に応えていくことを祈念している」と語った。

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