「Penbe」は、シャープペンシルなどをIoT化して、学習過程を記録し、前向きに学ぶ習慣をつけるためのペン用IoTアタッチメント。本体に加速度センサーとBluetoothを搭載し、ペンの動きを読み取り、学習記録をスマホアプリで見える化する。スマホアプリには、科目別の学習時間のグラフ化、保護者への通知、友達とのシェア、育成ゲームなど機能を搭載する。2021年1月から試作品によるユーザーテストを開始し、現在は正式なサービス提供に向けて開発を進めている。2021年2月4日からはクラウドファンディング「kibidango」(https://kibidango.com/1490)で支援者を募集し、9月から正式サービスを開始する予定。
Penbeを開発するハードウェアエンジニアの田谷圭司氏は、ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社で長年イメージセンサーの開発に携わり、アスキーにもイメージセンサー関係の記事を多数寄稿。「Penbe」のアイデアは、もともとは、ご自身のお子さんが勉強に向かうきっかけになれば、という思いから生まれたアイデアだそう。
当初はあくまで個人的なプロジェクトとして仲間と開発に取り組んでいたが、経済産業省の「始動 Next Innovator2017」プログラムの採択やシリコンバレー派遣などを経て、周りから刺激を受けていくうちに、事業化して世の中に出したいという思いが強くなり、副業としてストーリア株式会社を起業。本体の製造はIoTメーカーであるCerevoの協力を得て、製品化の目途が立ったことからクラウドファンディングでの支援者募集となった運びだ。
ネット検索の調べモノやアプリ教材が当たり前になった今も、小中高校生の基礎学習は、鉛筆やシャープペンシルで手を動かしながら考え、身に付けていく勉強法が基本。基礎学習は、すぐには成果が見えず、子どもにとっては地道で退屈な作業だ。決めた時間に机に向かっていても、集中できずに手が動いていなかったりする。歩数計やGPSで運動量や距離を記録するように、ペンの動きから学習をアプリに自動記録してグラフで視覚化したり、家族や友達とシェアすれば、もっとやる気が高まり長続きするかもしれない。同じ目的をもつ友達とアプリで励まし合うのは習慣化に効果があるし、「ポケモンGo」のようにアプリの面白さ次第で、さらにモチベーションの向上が期待できる。
アプリとしては、勉強時間のグラフとカレンダー表示、保護者への通知、友達と「いいね」し合える、といった簡単なSNS機能をもつ学習記録アプリに加え、キャラクターに学習科目によって職業を持ち、勉強するほど成長して街が発展していく箱庭ゲームを開発中。また、ペンに取り付けた本体とアプリの構成(筆記動作によってコンテンツのキャラクターが成長する技術)に関する特許を取得済みだ。
2021年の年明けから試作品による10日間のユーザーテストを実施したところ、概ね保護者・子どもどちらにも好評で、「やりたがらなかった漢字の練習をやるようになった」「楽しく勉強できた」とのポジティブなコメントが多かったとのこと。
「ビジネスとして成立させるには、いかに長く継続して使い続けてもらうが大事。育成ゲームはわかりやすいインセンティブにはなりますが、長期になるほど、コミュニケーションを意識しないといけないと思っています。ほめてもらえる、励ましてもらえる、ポジティブなコミュニケーションが円滑になるような仕組みをゲーム内にも仕掛けていけたら、と検討しているところです」と田谷氏。
学習記録としてペンの動きのデータが蓄積されると、データ活用の可能性も広がってくる。加速度センサーで取得したペンの6軸の動きをAIで解析することで、きちんと書いているのかどうかを95%以上の精度で判別できており、ユーザーが増えてより多くのデータが集まれば、集中度や進み具合の判定、学習科目の自動判別も可能になる。2022年度には筆記データの活用による、学習支援へと拡げていく計画だ。
クラウドファンディングは1000台が目標。3月まで支援者を募集し、9月頃に発送およびアプリを正式リリースする予定。
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