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悪い口コミを消す緊急避難的な方法など、具体的なテクニックも紹介

再びの緊急事態宣言 飲食店がコロナ禍を生き抜くためのGoogleマイビジネス活用術

2021年01月25日 09時00分更新

 コロナ禍において、小売店や飲食店に代表されるローカルビジネスはその様相を一変させた。再びの緊急事態宣言が発令されるなど、現在も見通しが利かない経営の厳しさは続いている。

 コロナ以前と比べ環境が激変しているなか、ローカルビジネスが活用すべき強力なツールのひとつに、Googleマイビジネスがある。ASCII STARTUP×BiNDup特別セミナー「ウィズコロナ時代のローカルエリアビジネス Googleマイビジネス徹底活用!」から、その魅力と活用のポイントを紹介していきたい。

基本に立ち返ってウェブマーケティングを見直すタイミング

株式会社デジタルステージ 熊崎隆人氏
デザイン性と更新性の高いCMS「BiNDup」を自社開発し提供している。企業や自治体のWeb運営やマーケティングのコンサルティング実績も多数

 まず、株式会社デジタルステージの熊崎 隆人氏から、コロナ渦がローカルビジネスとウェブマーケティングにもたらした変化について話があった。熊崎氏はコロナ渦によりローカルビジネスが打撃的な影響を被っていると語りつつ、一方でこのようなタイミングだからこそ新しいことにチャレンジする姿も見られると述べた。ビジネスがうまくいっているときに、その手法を変えたり新しいことにチャレンジしたりするのは勇気がいることだ。しかしコロナ渦により変化を求められ、さらに休業などで考える時間もあった。

 チャレンジの一例として紹介されたのは、金沢駅前の複合施設内にオープンした「FOODCLUB(フードクラブ)」というフードコートだ。完全会員制で、モバイルオーダーとキャッシュレス決済を採用し、ミシュランで星を取ったことのあるシェフの料理をセルフサービスで楽しめる。これまでのフードコートとは違った切り口が評判を呼び、飲食店が厳しいと言われる中で好スタートを切っているという。似たようなトライアルとして、渋谷のJINNAN CAFÉでもキャッシュレス決済やモバイルオーダーのツールを導入しているとのこと。こちらで採用しているアプリでは、来店客や従業員の体温チェックもできるようになっている。

FOODCLUB(フードクラブ)

 また、このような厳しい状況の中であっても、飲食店予約サービスを展開するRettyが東証マザーズに上場したことを取り上げ、コロナ渦でもがんばっているリアル店舗はあると熊崎氏は言う。そして、この状況で事業を継続するために必要なのが、既存顧客だ。多くの飲食店が、常連客に支えられてコロナ渦を生き抜いている。店内での飲食が難しい時期に、テイクアウトやケータリングを始めた飲食店は多かったが、まったく知らない店でケータリングを利用するというのはハードルが高い。利用してくれるのは、その店の味を知っている既存顧客だ。既存顧客とのリレーションシップを大切にして囲い込むことの重要性を、熊崎氏は以前からウェブマーケティング成功のポイントとして指摘してきた。コロナ渦により、生き残るために役立つことが実証された格好だ。

 つまりウェブマーケティングにおいては、特段新しいことにチャレンジしなければならないということはない。これまでの施策をもう一度見直して、基本に立ち返ってみることが大切だ。熊崎氏が重視するのも、自社ウェブサイトの強化と、GoogleマイビジネスやSNSの活用という、基本中の基本だ。

 新規顧客獲得のために広告などのITツールを使うのはわかりやすく、利用者も多いが、実際には新規顧客獲得よりも既存顧客とのつながりを濃密にする方が事業拡大につながるという。ポイントは、濃いファンをいかに増やすかということ。Webを既存顧客とのコミュニケーションツールであると位置づけて、そこで積極的に情報発信していく。この自社ウェブサイトに顧客を誘導するためのツールが、Googleマイビジネスであり、InstagramやTwitterなどのSNSであるというのが熊崎氏の意見だ。

 GoogleマイビジネスやSNSは無料で利用できるので、利用開始のハードルは低い。しかし、手軽に始められるからこその落とし穴もある。それは更新頻度の低下だ。導入当初だけがんばって更新しても、その後メンテナンスされずに放置されているような事例も散見される。自社ウェブサイトもGoogleマイビジネスも情報を発信し続けて育てていくものであり、コンテンツの更新が欠かせない。逆にコンテンツを更新し続ければ、自分たちの強みを顧客に知ってもらう絶好の窓口になる。

Googleマイビジネス活用はWebマーケティングの第一歩

株式会社ローカルフォリオの小原 祐介氏

 熊崎氏に続いて株式会社ローカルフォリオの小原 祐介氏から、Googleマイビジネスの活用方法について話があった。ローカルフォリオはGoogleやYahoo!、Facebookなどと協業し、リスティング広告やディスプレイ広告、ソーシャル広告の出稿代理サービスを提供している。飲食店、小売店などリアルな店舗を持つ顧客の支援がビジネスの中心だ。広告展開と併せて、Googleマイビジネスをどのように活用すべきかという相談が5年ほど前から増えているという。

 GoogleやGoogleマップで店舗を検索すると、住所や連絡先、営業時間などの情報が表示されるが、これはGoogleが自動的に収集した情報に基づいており、勝手に表示されている情報でしかない。この店舗情報を自身で管理できるサービスが、Googleマイビジネスだ。

 この情報はGoogle検索において、リスティング広告の次、検索結果画面のかなり上の方に表示されるため、できるだけ自社で管理し、正しい情報を表示することが重要だと小原氏。なお、エリアと業種をキーワードにして検索した場合には、検索結果として複数の店舗が表示される。この順番を決めるアルゴリズムは開示されていないが、関連性の高さや近さのほか、Googleトレンドの情報などにより決められているのではないかと小原氏は推測している。

 また小原氏は、Googleマイビジネスの重要性を示すデータも提示してくれた。

 まず、Googleマップの利用者数は、YouTubeやGmailよりも多い。さらにGoogleの発表によれば、毎月10億回ほどの検索が行われており、そのうちの30%ほどが近隣地域のビジネスやサービスを検索しているものとされている。近隣の飲食店やコンビニ、スーパーなどを利用しようとして、連絡先や営業時間を調べているのだ。

 特にユーザーが気にしているのは、営業時間だという。クーポンやプロモーションの有無を確認するユーザーや、クチコミ情報をチェックするユーザーもいる。そして、これらの情報はGoogleマイビジネスで編集できるものがほとんどだ。

 Googleマイビジネスを使うためには、まずビジネスオーナー登録をしなければならない。検索結果に出てくる店舗情報に「このビジネスのオーナーですか?」と表示されていれば、まだビジネスオーナー登録がなされていないことを示している。「このビジネスのオーナーですか?」という文字をクリックして、メールアドレスなどの登録を行なう。実際の店舗を確認するために郵送物が送られる場合もある。

 小原氏はGoogleマイビジネス活用の3つのメリットとして、投稿機能、クチコミ対応、情報の分析を挙げる。投稿機能を使うことで、クーポンやイベント情報など紙よりも新鮮な情報を顧客に届けることができる。営業時間や問い合わせ先を確認しようと検索した顧客に対して、来店につながるきっかけを与えることができる。また書き込まれたクチコミに返信できるようになるのも大きなポイント。

 クチコミへの返信は、ブランディング上とても大切だからだ。良いクチコミも悪いクチコミも投稿されるが、これらを削除することはできない。お叱りのクチコミに対してはきちんと謝罪するなど、真摯に返信するしかない。そうすることで、検索してクチコミを見たユーザーには、誠意を持って運営しているお店なのだと安心感や期待感を持ってもらうこともできる。

 Googleマイビジネスを利用する3つ目のメリットである情報分析は、Googleマイビジネスの管理画面から行なう。小原氏はこのステップを「ダイエットのために最初に体重計に乗った状態」と表現した。どれくらい検索されているのか、どのようなキーワードで検索されているのかをしっかり見ることで、次に打つべき施策につなげていくのだという。

Googleマイビジネス活用テクニック、事例満載のパネルディスカッション

株式会社まぼろし 益子 貴寛氏

 熊崎氏、小原氏からウェブマーケティングの最新動向とGoogleマイビジネスの活用について話を聞いたのち、株式会社まぼろしの益子 貴寛氏をファシリテーターにパネルディスカッションが行なわれた。

益子氏(以下、敬称略):パネルディスカッションでは、4つのお題を用意しました。1つ目のお題からまいりましょう。Googleマイビジネスにきちんと対応することの重要性を社内で理解してもらうためには、どのような切り口があるのでしょうか。

小原氏(以下、敬称略):一番簡単な切り口は、まずGoogleマイビジネスに登録していただいて、管理画面を開いて「これだけ見られていますよ」という情報を社内で共有していただくことですね。どのような情報を見られているのか、閲覧数が多いのか少ないのか、その辺りの判断を共有したうえで取り組むのがいいと思います。

益子:まずは登録してみてくださいということですね。登録すると簡単なレポートもメールで送られてきますよね。レポートや管理画面の情報から、これだけ見られているからきちんと整備しないといけないということを社内で共有することから始めるといいんですね。

熊崎氏(以下、敬称略):私はGoogleマイビジネスを利用する理由はふたつあると思っています。1つは、リアル店舗を知ってもらい、コミュニケーションを通じて顧客を囲い込める非常に便利なツールだということ。もうひとつは、GAFAと言われる巨大IT企業の中で、地域に根付いたコンテンツをその地域にいる人たちに対して、一番うまく提供しているのがGoogleだからです。

益子:FacebookやTwitterなどSNSは色々ありますが、あくまでバーチャルな世界での情報発信であり、コミュニケーションです。Googleマイビジネスは実際にリアルな店舗があり、その地域に紐付く情報発信ができるという点で性質が違います。その辺りを社内で話し合ってもらうことで活用するのが当然という考えになっていくといいですね。

 さて、2つ目のお題にいきましょう。小原さんの話にもありましたが、Googleに残されたネガティブなクチコミ投稿についてです。消費者が勘違いしているなど明らかに不当な評価がつけられていたり、同業他社から悪意あるコメントを投稿されたりすることもあるようです。先ほどの小原さんのお話ではそれを消す手段はないということでしたが、まったく打つ手はないのでしょうか?

小原:正攻法からイレギュラーな手段まで、打つ手はいくつかあります。まず正攻法としては、さきほどお話したとおり、ビジネスオーナーから誠意ある返信をしていただくことです。その方への謝罪というよりも、そのやりとりを見た方が誠意を感じて、エンゲージメントを高める効果もあります。

 明らかに不当な投稿や競合他社からの悪意ある投稿だと思われる場合には、Googleに連絡するという手段もあります。ただし、この方法で削除してもらえる可能性は高くありません。

 クチコミ投稿をした本人なら削除できるので、投稿者を特定して削除を依頼するという方法もあります。弁護士事務所さんなどがサービスとして展開しているので、どうしても削除したいということならそのようなサービスを検討してもいいかもしれません。

 あとは、私からは推奨できないのですが、悪いコメントが入ってしまったGoogleマイビジネスを一度削除して、改めて新しいGoogleマイビジネスのアカウントを作るという方法でコメントを消すことができます。この方法はやりすぎるとGoogleからペナルティを受ける危険性もあるので、緊急避難的な対応と思っておいてください。

熊崎:悪いクチコミを消す手段は限定的ですが、それを目立たなくする方法はあります。お店の応援団となってくれるお客さんにプラスのコメントを投稿してもらうことです。

益子:地方の店舗だと2件、3件しかコメントがない中でそのうちの1件が悪い評価だと目立ってしまいます。そういう場合には、良い評価、率直な評価を数多く投稿してもらうことで悪い評価が目立たなくなります。Googleマップでの評価をお願いするのが、スマートなやり方でしょうか。

熊崎:やらせやサクラではなく、本当にお客様に素直なコメントをしていただくといいと思います。

益子:3つ目のお題です。ローカルビジネス+Googleマイビジネスの上手な活用事例を紹介ください。

小原:前提として、Googleマイビジネスでオーナー登録をしてない方が全体の7割から8割いると言われています。つまり、すでにオーナー登録している方はとても活用が進んでいると言っていいでしょう。上位3割に入っているのですから。

 その中でも特に成功していると感じるのは、よりリアルタイムで情報を発信している店舗さんですね。例えばこのコロナの自粛期間中は、営業時間や休業日が頻繁に変わりました。そうした些細な変更にも即時に対応して、顧客に向けて最新情報を伝えるという活用は多くの飲食店で見られました。

益子:連休前などに、この祝日は休みですか、営業しますかというメールがGoogleマイビジネスから届きますが、その都度きちんと応える癖を付けておくといいですね。

小原:さらに活用している例としては、雨の日割引を実施しているスーパーが、雨が降るとすぐに「雨の日割引をしています」と投稿している事例があります。スーパーの営業時間を検索するなどして近隣のスーパーが複数ヒットした場合、雨の日割引という情報があれば選んでもらえる確率が高まります。

 もう1点、先ほどクチコミの話がありましたが、これもポジティブに活用しているお店があります。あるラーメン店の事例ですが、毎月クーポンを投稿するなどGoogleマイビジネスを有効活用していました。ある時期に飲み物半額クーポンを投稿したところ、クチコミに「飲み物より煮卵をサービスしてくれた方が嬉しい」というクチコミが多く投稿されました。そのお店は煮卵がおいしくて人気があったんです。そしてこのクチコミを見たラーメン店の方が、クーポンの内容を煮卵サービスに変えたところ、来店数が非常に伸びたということです。次の施策を考えるうえで、Googleマイビジネスのクチコミが役立つことが実証された例ですね。

熊崎:特定の店舗ということではありませんが、今回のテーマでもあるコロナ渦への対応として弁当やテイクアウトを始めた飲食店が多く見られましたよね。でも既存顧客にそれが伝わりにくく、近く人住んでいる人に知ってもらうことが難しいという課題がありました。そんな中でGoogleマイビジネスをうまく活用して、レストラン営業はしていなくても弁当やテイクアウトを始めたことを積極的に発信するお店が見られました。これを使えるか使えないかというところで、売上にも響いたのではないでしょうか。

益子:そうですね。デリバリーやテイクアウトを始めた店舗でも、やはりGoogleマイビジネスやSNSをきちんと使っていたお店は、やはり集客がうまくいっているという印象がありました。熊崎さんの先ほどのお話にあったように、こういった不測の事態に直面したときに常連客が救ってくれるという状態を生み出せるかどうか。それはGoogleマイビジネスやSNSの活用がうまくいっているかどうかに直結するので、ぜひ今日からでも前向きに取り組んでもらいたいですね。

 では続けて、最後のお題に進みましょう。ウィズコロナ、アフターコロナの時代に進んで行く中で、どのような体制づくり、どのようなマインドチェンジが必要だとお考えでしょうか。

熊崎:私もまだ考えている最中です。コロナによって、まだこれから色々な変化があるだろうと思っています。いままでのセオリーや常識のようなものは通じなくなるでしょう。コロナ渦が過ぎたとして、いままでのビジネスに戻るのかどうかという問題もあります。たとえばうちの会社はテレワークメインに移行したので、オフィスの半分をコワーキングスペースに改装しました。こうしてオフィス環境が変わっていくように、店舗を持つビジネスの在り方も変わっていくのではないでしょうか。

 私の家の近くに、石窯でやいたピザが人気のイタリアンレストランがあります。コロナ渦でも営業していたので行ってみたのですが、店内に客がほとんどいないにも関わらず、店員さんは忙しそうでした。Uber EATSを始めたことでデリバリーピザとして人気が出て、来店客がいなくても大忙しだったんです。あのお店は、レストランをやめてピザのデリバリー一本に絞るのではないかと考えています。すでに平日はレストラン営業をやめています。時代が変わっていろいろなものが利用できるようになったことで、既成の考え方にとらわれずに、自分たちの最適解をもう1回考えていくことが大事でしょう。

益子:コロナをきっかけに選択と集中が進んでいるとはよく言われます。リアルな店舗を運営していたら様々な食材を仕入れなければいけないし、接客もしなければいけません。そこをピザ1本に絞れば仕入れなければならない食材が減り、従業員も減らせるので、本当に選択と集中がうまくいっている事例ですよね。

小原:飲食店さんがテイクアウトやデリバリーを始めているように、小売店さんもECサイトを新しくつくるなど業態を変化させています。ECサイトにしてもデリバリーにしても、新しい事業を始めるというのは非常に素晴らしいことです。しかし一方で、その新たな情報をうまく発信できているお店は少ないと感じています。ECサイトを立ち上げた、デリバリーを始めたという情報を、GoogleマイビジネスやSNSを使って多くの人にプッシュしていくといいでしょう。

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