いま、水素が注目されるワケ
近年、エネルギーとしての「水素」が注目されている。
その理由は主に地球温暖化対策。水素は、使用時に二酸化炭素などの温室効果ガスが発生しない特性を持ち、発電や燃料電池自動車などの燃料として使える点がエネルギーとしての大きな特徴だ。
世界最大規模をうたう水素研究施設、山梨にあり
国内でも、水素に関する取り組みに特に力を入れている地域がある。山梨県だ。山梨県では、水素エネルギーや、燃料電池と言った次世代エネルギーの研究に、産学が一体となって取り組んでいる。例えば山梨大学では、2001年に文部科学省によりクリーンエネルギー研究センター、2008年に経済産業省により燃料電池ナノ材料研究センターが設立されている。
さらに、2020年にはNEDO事業に4事業で採択を受けており、今後、2030年から2040年の社会実装を目指し、実用化に向けた研究が進められる予定だ。
燃料電池ナノ研究センターは、燃料電池の作成に不可欠な触媒や電解質膜の合成、触媒塗布膜の作成、セルの組み立て、さらに性能や耐久性の評価ができる設備が備えており、設計からテストまでを一貫して手がけられる。
電子顕微鏡はメーカーに特注したもので、1500℃の高温下でも、酸素や水素による酸化還元処理をしながら、触媒試料を原始レベルの解像度で観察できるという。燃料電池部門に関わる教授(准教授、客員教授、助教授含む)や博士、修士、研究員、事務員の人数は85人にものぼり、規模としても、世界的に最大レベルだという。
それだけでなく、山梨県から委託を受け人材の育成にも注力している。具体的には、水素・燃料電池関連の設計開発に必要な知識を習得するための人材講座を2016年に開設。2020年からは「水素・燃料電池産業技術人材養成講座」として、40週・80コマ・120時間の講座を開いている。
同講座の受講者は毎年15〜25人前後を数え、年齢層としては、20代〜50代まででほとんどを占める。日常的に働いている世代が受講者の大半を占めるにもかかわらず、出席率が79〜90%と非常に高いことから、山梨大学では「受講生の高いモチベーションと、企業や団体の理解がうかがえる」と分析。
山梨県と連携し、受講者をフォローする体制も整っており、受講企業のおよそ60%、受講者全体ではおよそ70%が、関連業務に従事しているというデータもある。
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