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山梨県内の次世代エネルギー関連施設たち

水素エネルギー先進県 山梨で世界最大級の次世代エネルギー研究施設を見た

2020年12月09日 11時00分更新

地元企業も参画、水素社会の実現を目指すプログラム

触媒塗布膜の作成に用いるプリントヘッド。非常に細い石英をノズルに使うことで、極薄の塗膜をプリントでき、乾燥に時間がかからないため、大量生産に向くのだという

 もうひとつ、山梨大学関連で注目したいのが、「FCyFINE」というプログラムだ。これは、文部科学省による「地域イノベーションエコシステム形成プログラム」の採択を受けている。

 地域イノベーションエコシステム形成プログラムとは、グローバル展開を前提とし、社会的にインパクトの大きいイノベーティブな大学の技術を事業化させることを支援するもの。山梨県と山梨大学では「水素社会に向けた『やまなし燃料電池バレー』の創成」というテーマで採択を受け、FCyFINEという名称で取り組みを進めているのだ。

 事業プロデュースチームとして、元東芝燃料電池システムの永田祐二氏や、元富士電機の岡嘉弘氏が、それぞれ事業プロデューサー、副事業プロデューサーを務めるほか、山梨大学の教授陣が中心研究者を務めている。

 また、それぞれ県内に本社を置く半導体製造企業の日邦プレシジョン、精密部品メーカーのエノモト、真空技術を手がけるメイコーがプログラムに参画してもいる。

 世界中からIT分野の人材が集まり、次々と巨大有名企業が誕生したシリコンバレーのように、「水素先進県」とも形容できそうな環境が、山梨県には揃っていると言えそうだ。

燃料電池バス「Moving e」の実証実験も

移動式発電・給電システム「Moving e(ムービングイー)」

 11月には、山梨県庁で移動式発電・給電システム「Moving e(ムービングイー)」の実証実験も披露された。

 Moving eは、トヨタ自動車と本田技術研究所の協業によるシステムで、大容量の水素を搭載する燃料電池バスと、可搬型の外部給電器、可搬型バッテリーとの組み合わせで実現している。

 具体的には、本田技術研究所の可搬型外部給電器「Power Exporter(パワーエクスポーター)9000」、可搬型バッテリー「LiB-AID(リベイド)E500」・「Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)」、モバイルパワーパックの充電・給電器「Honda Mobile Power Pack Charge & Supply Concept(チャージアンドサプライ コンセプト)」を、トヨタ自動車の燃料電池バス「CHARGING STATION」に積載。

「あたたかみのあるデザイン」をテーマに、暖色がかったグリーンを基調に仕上げられている

 CHARGING STATIONを電源として、可搬型外部給電器・可搬型バッテリーによってバスから電気を取り出すことで、避難所や、屋外の環境でも電気製品に電気を供給できるというコンセプトだ。

可搬型外部給電器・可搬型バッテリーはホンダが開発。トヨタとホンダの協業は非常に珍しいことだ

 CHARGING STATIONは、従来からトヨタが提供していた「トヨタFCバス」をベースに、高圧水素タンクの本数を2倍にし、水素搭載量を大幅に増やした燃料電池バス。高出力で大容量の発電能力(最高出力18kW、発電量454kWh)を備えていることで、災害による停電時などでの活用を見込む。また、社内に仮眠スペースを設けているため、休憩場所として使えるのも特徴だ。

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