現在、新車で購入できる国産メーカーの2シーターオープンカーと言えば、マツダのロードスター、HondaのS660、そしてダイハツのコペンの3車種で、価格も100万円台後半から300万円台前半に集中している。そこで300万円をひとつの基準として、過去の試乗経験からND型ロードスター、S660 Modulo X、コペンGRスポーツの違いについて触れたいと思う。
走りは三車三様
性格がまったく異なる
誰もが気になるのは走りだ。コペンGRスポーツ、S660 Modulo X、ロードスターの走りの違いはFF、MR、FRという駆動レイアウトの差、そしてボディーサイズも違うことから、かなり性格が異なる。
まず普通自動車であるロードスターと軽自動車であるS660 Modulo X、コペンGRスポーツで、大きく性格が異なる。これはボディーサイズに関係するのだろうが、軽自動車の2車種に比べ、ロードスターの挙動はかなり穏やか。軽自動車の2車種は、ロードスターと比べてクイックでダイレクトな反応が楽しめる。これは駆動方式云々よりもボディーの大きさによるジオメトリと、マスの集中による剛性感の違い、そして車重(ロードスターが990kg、S660 Modulo Xが850kg、コペンGRスポーツが870kg)の違いからくるものだろう。
乗り味でいえば、意外に思われるかもしれないが、S660 Modulo Xがもっとも重量感があってマイルドに感じることだろう。いかなるステージでも上質な乗り心地で、コーナーでのロール量も多い。また減衰力調整ができるので、ステージ次第で硬くする、柔らかくするといった楽しみもある。ロードスターはマイルドさと硬質さが見事にバランスした乗り味。普通乗用車のスポーティーグレードとは異なる硬質さは、自分がスポーツカーに乗っているという気分満点だ。一番硬派なのはコペンGRスポーツ。街乗りでは覚悟が必要なほどの硬派な乗り味は、高速道路やワインディングで表情が一変。クイックな挙動と合わせて、これでしか味わえない魅力に溢れる。
エンジンの面では、排気量の大きなロードスターにゆとりとパワーを感じるのに対して、軽スポーツは踏む楽しさがあるといえる。その中でS660 Modulo Xは自分の背後にエンジンが置かれることもあり、メカノイズや吸気音、ターボのブローオフバルブ開放音による3重奏は、クルマ好きにはたまらないもの。3車種唯一の自然吸気エンジンであるロードスターは、そのレスポンスが魅力。生理的心地よさに溢れるものだ。
いっぽうコペンGRスポーツは野太く力強い排気音が魅力的。音だけで言えば軽自動車とは思えないだろう。
気になる駆動レイアウトの差というのは、確かにある。中庸なのがロードスターだ。特徴的なのはMR方式を採るS660 Modulo X。他の2台とは大きく異なり、回頭性の良さは抜群で、これしか味わえない魅力に溢れる。フロントにエンジンが無い、というのはこういう事なのか、と思わされる。
コペンGRスポーツはFFということもあり、パッと乗りこんで、一番なじみやすい。直進安定性は高く、アンダーステアも滅多なことでなければ出てこないし、リアも追従してくる。いっぽうMRは慣れていない人にとっては、その挙動を理解するまでちょっと時間がかかるだろう。ちなみにMRは雨の日に滑る、という心配があるかもしれないが、電子制御により安全性は高いから安心してほしい。
ズバリ速いのは? というと、ほぼすべてのステージでエンジンパワーの差もあってロードスターだ。しかし、下り坂に限定すればS660 Modulo Xの速さに軍配があがりそう(マンガのようなバトルをしてはいけません)。これはMRというレイアウトとハイスピードでも怖さを感じさせないサスセッティングに加え、ドリルドローターとスポーツパッドによる強化されたブレーキシステムによるところが大きい。フルブレーキング時、ほかの2車種はフロントヘビーになるが、S660 Modulo XはMRのおかげで50:50に近い重量バランスになる。また、ブレーキ時に独特の音がするのだが、このブレーキのタッチフィールとコントロール性は3車種の中で最上だ。
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