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マルチシグと完全オフラインのコールドウォレットに対応 業界標準の暗号資産ウォレット管理システム「EMW」

デジタル・アセットを支える暗号化技術の研究開発に取り組むフレセッツ

 フレセッツ株式会社は、仮想通貨交換所向け暗号資産ウォレットを開発するスタートアップ。世界中でセキュリティ・トークンの取引が増加しており、日本でも金融商品取引法が改正され、今後は取引所で交換される仮想通貨だけでなく、あらゆる資産のデジタル化が進んでいきそうだ。暗号資産・デジタル資産を安全に保管・運用するためには、どのような技術や環境が求められるのか。フレセッツ株式会社COO兼CFOの柚木 庸輔氏に、同社の開発する仮想通貨ウォレット「EWM」の仕組みと、デジタル資産の展望について伺った。

フレセッツ株式会社 取締役 COO 兼 CFO柚木 庸輔氏。柚木氏は、仮想通貨の自主規制団体である一般社団法人 日本仮想通貨交換所協会(JVCEA)の立ち上げ期から関わり、新規仮想通貨交換業の審査を担当してきた経験から、交換事業者向けに新規仮想通貨の上場支援、新規通貨へのウォレットの対応などのコンサルティングも提供している

事業者向け暗号資産管理システム「EWM」とは?

 フレセッツは、2017年8月に設立した東大発ベンチャーだ。創業者でCEOの日向 理彦氏は、東京大学博士課程在籍中からビットコイン取引所やウォレットを開発。フレセッツ設立後も暗号化技術の研究開発に専念し、技術開発に特化した事業展開をしているのが特徴だ。

 ビットコインなど仮想通貨の交換業者が顧客から預かった資産はウォレットに保管されるが、過去に不正流出事件があったように、ウォレットのセキュリティは事業の要だ。そこで同社では、暗号化資産交換所向けの仮想通貨ウォレット「EWM(Enterprise Wallet Manager)」を開発し、現在3社に導入されている。

 過去に起きた仮想通貨の不正流出事件は、ウォレットの管理体制の問題から発生している。

 ウォレットには、オンラインのホットウォレットとオフラインのコールドウォレットがあるが、当時はほとんどの暗号資産がホットウォレットで管理されていたため、外部からの攻撃を受けやすかった。こうした経緯から、現在はホットウォレットの比率を5%以下にするように法律で定められている。

 さらに、2020年5月1日に施行された改正資金決済法では、コールドウォレットの定義として「一度もインターネットに触れたことのない機器であること」とされており、 完全オフライン環境でなければ、コールドウォレットとして認められなくなった。ホット/コールドウォレットの比率は仮想通貨交換業者の財務健全性指数にも大きく影響するため、完全オフライン環境の構築は業者にとって必須だ。

完全オフライン型のコールドウォレットを実現

 EWMは、完全なオフライン型のコールドウォレットを提供しているのが特徴だ。暗号資産をブロックチェーン上に流す際は、公開鍵暗号方式で署名をしたうえで、インターネット上にブロードキャストしているが、EWMでは、オフライン環境で署名することで、この秘密鍵を盗まれないようにする仕組みを構築している。

 具体的には、インターネット上で署名のためのトランザクションデータを作成し、QRコードとして発行。このQRコードを印刷し、隔離された強固なセキュリティ下のオフライン環境にあるPCで、QRコードと金庫に保管されている秘密鍵を用いて実際の署名作業が実施される。取引には2名の署名が必要なので、同様のオフライン署名の作業が2回繰り返されたうえで、署名済みのQRコードを発行し、再びインターネットにブロードキャストする、という流れだ。

 インターネットから完全に切り離されているので、秘密鍵がハッキングによって盗まれる可能性がない。もちろん、内部不正で物理的に秘密鍵が盗まれる可能性はゼロではないが、インターネット上の不特定多数からの攻撃に比べれば、その確率は非常に低いと言える。

金融商品取引法の改正を受け、今後はセキュリティ・トークン市場に参入

 5月に施行された金融商品取引法の改正により、金融商品取引法に準拠したセキュリティ・トークン(STO)の発行が日本でも可能になった。今後は、証券会社の扱う社債や株式、不動産、美術品など、あらゆる資産がブロックチェーン上で取引されるようになってくる。従来の仮想通貨に比べると、圧倒的に大きな規模の資産を扱うようになるため、より強固な安全性が求められる。

 フレセッツは、これまで仮想通貨交換業向けにウォレットを提供してきたが、今後は、セキュリティ・トークンの市場にも参入し、証券会社に対してもウォレットを提供していく計画であり、より高度な暗号化技術の研究開発に力を入れている。現在の研究テーマは、「しきい値署名」と、「プライベート情報検索(Private Information Retrieval:PIR)」の2つ。

 しきい値署名は、マルチシグがない暗号資産に対して複数の秘密鍵で署名をする技術を用いてマルチシグを実装する技術。PIRは、ユーザーの暗号資産の残高や履歴などのプライベートな情報を知られることなく、サーバーからユーザー情報を取得できる技術で、それぞれ製品への導入へ向けて開発を進めている段階だ。今後は、EWMのウォレットの強みを活かしつつ、新しい暗号化技術や金融に関する機能を強化していくとのこと。

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