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圧倒的な没入感が得られるというスピーカー「SA-Z1」を自宅で聞いてみた

2020年06月16日 17時00分更新

近接距離での利用と一体型であるメリットは?

 一方、ニアフィールドリスニングは、スピーカーと至近距離で音楽を楽しむスタイルだ。厳密な定義はないが、通常は50~60cm程度、離れても1m程度の距離で音楽を聴く。

 言い方を変えると、スピーカーから発せられた再生音(直接音)を比較的ダイレクトに聴くことができる。つまり、反響(間接音)の影響を受けにくい再生スタイルと言える。いろいろと制約のある部屋でも、高水準なオーディオ体験が得られるのではないか(と、期待している)。

 とはいえ、自分の机で鳴らした際に「どんな音がするのか」「そのポテンシャルが十分に発揮されるのか」は試してみないと分からない。仮に机を中心とした限られた環境でも十分なパフォーマンスが得られるというのなら大きな魅力があると感じていた。

SA-Z1は最大784kHz/32bitのPCM、最大11.2MHzのDSDに対応している。8倍のオーバーサンプリングによって、CD並みの48kHz音源を384kHzに引き上げて再生することも可能だ。

 もうひとつ注目したいのは、SA-Z1がアンプやDACなどを含んだ一体型システムとして提供されている点だ。

 直販価格78万円(税抜)と非常に高価な製品だが、いいスピーカーには相応のアンプやソース機を組み合わせる必要がある。単品オーディオで組んだシステムの場合、仮にスピーカーが20~30万円でも、アンプやプレーヤーを買うために、2倍、3倍の金額が必要になることも珍しくない。

音量ツマミは重くできており、微調整が的確にできる。

 また、一体型であれば、ドライバーに合った最適な構成にできるというメリットがある。SA-Z1の特徴に、5つのスピーカーに対して独立したアンプを使用し、FPGAを使ってドライバーの特性に合った音を、適切なタイミングで出す「マルチアンプ駆動/タイムアライメント制御」がある。これらは一体型機だからこそ盛り込める特徴と言える。

コントロールが難しい「間接音過多」の環境で試聴

 以上を踏まえつつ、SA-Z1の試聴を進めていく前に、いくつかのお題を設定することにした。

  1. 部屋の影響をどのぐらい受けるのか
  2. ハイエンドシステムのスピーカー再生とどのぐらいの違いがあるのか
  3. 設置方法の制約や影響がどれだけあるのか

 これらを通じて知りたいのは「ニアフィールド再生がどのぐらい、手が届きやすいものか」という点だ。「あの試聴室で聴いた体験に、近づくことができるのか」「そのためにはどのぐらいの労力がいるのか」「ヘッドホンのように手軽にハイエンドオーディオならではの空間に没入できるのか」になる。

 個人的な話になるが、このテーマを設定した理由は、筆者が普段オーディオを置いている部屋での再生音を知りたかったこともある。もともとは倉庫で、部屋の広さは12畳ほどで、四方の壁はOSB合板という硬い木材に塗装してそのまま使っている。床はアカシア材のフローリング、天井は高めで3.5mほどある。長く乱雑な状態で放置していたが、最近ちょっときれいにして、仕事用の机やオーディオ機器を持ち込むことにした。

 ただし、音響的にはあまりいいとは言えない。硬い壁に音が反響して聴きづらくなりがちだし、手を叩くと「ビ~ン」という感じのフラッターエコーも発生する。奮発して買ったスピーカーを再生したら、出音に部屋の反射音が多く乗り、かなりぼやけた音像になり、ショックであった。スピーカー再生はよく「部屋の音を聞いている」と言われるが、その意味が理解できた。響く部屋では直接音ではなく間接音の影響が大きくなる。スピーカー本来の能力(情報量や解像感)が十分に実感できなくなるのである。

 私がSA-Z1に興味を持った理由は、こういった背景がかなり影響している。ヘッドホンを使うように、再生する場所をあまり考慮せずに済み、しかもスピーカーならではの立体的な音像定位が得られるのなら最高ではないか。いま使っているスピーカーの音と比べてどんな違いがあるかについても確かめてみようと思う。

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