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独自の事業創造を手掛ける札幌発スタートアッププロダクション

ブロックチェーンの価値はP2P×マーケティングにある 実事業化を大手と進めるINDETAIL

2020年04月24日 07時00分更新

ブロックチェーンのトークンはマーケティングツールとして活用する

 ブロックチェーンは安全性やトレーサビリティという切り口で語られることが多いが、坪井氏はP2Pであることが最大の特徴だと考えている。その切り口において、現在の状況はインターネットの黎明期に似ているという。

 ホームページを作れば誰でも見えることができるというのは、多くの人がインターネットにつながっているからこそ生まれるメリットだ。同様に、個人が中央集権で誰かを通じてつながるのではなく、個人と個人が特定の中間組織を通さずにつながるP2Pの世界も、どこかのポイントでブレイクすると考えている。

 個人同士がつながれば、つなげる以上の価値を持たない仲介会社は不要になる。既存の仕組みから、仲介コストを全部抜けるのがブロックチェーンでのメリットだと坪井氏。技術的な意味でのブロックチェーンの容量やスピードといった問題は、インターネットの時もあった話で、5Gといったテクノロジーが進化していけば解決していくという。

 ただしその際、ブロックチェーンを貨幣経済と直接ぶつけるとうまくいかないことが多いと坪井氏は強調する。円でできることを地域通貨でやろうとしても、必ず円が勝ってしまう。貨幣経済はきちんと残し、地域通貨は貨幣経済を盛り上げるためのマーケティングツールとして活用するべきだという。

 その考えのもと、INDETAILはブロックチェーンのトークンやコインを、あくまでマーケティングツールで活用するというスタンスで事業を手がけている。セキュアやトレーサビリティといった切り口のプロジェクトは手がけず、P2Pでのアイディアを探し、そのメリットを最大限に発揮できる大手企業に声をかけ、新たなスタートアップを立ち上げるような形でプロジェクトを作っているという。

キャッシュポイントまでは時価総額を上げる戦略

 従業員は20名で、受けるプロジェクトは7つまでと決めている。このユニークなシステムを採用する理由と、その勝ち筋は何だろうか?

 「これまで労働集約の事業をしてきたので、いたずらに人を増やすということが効率的でないことはわかっていた。働き方改革と言って働きやすい環境を作っただけでは、人のスキルは上がらない。また環境的に人材不足になると、自動的に給料も上ってくる。人件費と販管費が上がるのに、人のレベルが上がらないといずれ会社は厳しくなる。そこで、まず労働集約のモデルから離れることにした」(坪井氏)

 本質的な価値を高めて、ひとりひとりの生産性を上げることが必要になる。その価値が一番高いのは、「未来」に投資することだと坪井氏。単純な夢物語ではなくて、先進的テクノロジーをかけ算していくというモデルを考えたのだ。

 キャッシュを得る方法はいくつもある。その中で坪井氏がチャレンジしているのが、会社自体の価値を上げること。プロジェクトをこなすことで未上場株、つまり企業価値評価での時価総額(バリュエーション)を何倍にも上げ、その株をキャッシュに換えるという戦略だ。

 「未来を作るという事業は、実際に事業が動く未来を作るまでがしんどく、このあたりでだいたいお金が尽きてしまう。しかし、この先のキャッシュポイントが来るまでは、価値のある未来作り自体で株式の価値を上げてキャッシュを得る。キャッシュポイント(収益を得る機会)を迎えられたら、そこからは事業主体で収益を得るという、2つのステージを用意している」

 現在走っている7つのプロジェクトは、国内が5つ、ドイツやベトナムといった拠点が2つという内訳とのこと。特に2020年からは海外展開を本格化させており、ドイツはミュンヘンに現地法人を、ベトナムはホーチミンに駐在員事務所を、それぞれ設立したばかりだ。3月末にはガーナでの小規模送電網への取り組みが紹介されるなど、注目度も高い。しかしながら、新規の問い合わせが来ても、既存のプロジェクトがクローズしない限りは新たには受注をしない。

 プロジェクトの長さはまちまちだが、たとえば「ISOU PROJECT」の場合は、実証実験まで実質9ヵ月でやりきったそう。逆に、オープンイノベーションの手前が長くなるのであれば、プロジェクトはクローズさせる。「ISOU PROJECT」で組んだTISはとてもスピード感があったそうだ。

 INDETAILは基本的に、オープンイノベーションで事業を行なっている。受託開発もしないし、単独でも行なわない。ベンチャー・スタートアップが得意なのは0→1で、グロースさせるのは大手の方が得意。そこで、一緒に組んで権利も含めてシェアしているのだ。「ベンチャーが0→1を作ったという変なプライドを持ってしまうと、うまくいかないと思っている。僕らは0→1を作るが、成長は大手さんと一緒にやりましょうということ」

 オープンイノベーションでブロックチェーン×マーケティング領域に特化するスタートアッププロダクションINDETAILは、今後も北海道から、地域やコミュニティが抱える課題を解決する事業を創出し、世界をアップグレードしていく。

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