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多機能と高音質、アナログ技術や真空管にこだわった製品

Wi-Fiスピーカーへの印象を改めるとき、iFi-Audioの「AURORA」は感激の音

2020年04月22日 15時14分更新

真空管ならではの透明感ときらびやかさがあるサウンド

 Bluetoothチップセットは、クアルコムのQCC5100シリーズだ。QCC5100は、統合型チップ(SoC)でBluetoothの送受信に加え、DACやDSP機能なども内蔵しているが、AURORAは外付けDAC(型番は非公開だがESS TechnologyのSABERシリーズ)や、アナログのボリューム調節機能を外付けしている。

真空管は有機ELディスプレーの小窓から垣間見える。

 アンプ部は真空管(ロシア製の6N3P)と高精度なスイッチングアンプを組み合わせたハイブリッド型。上に述べたARTやSoundSpace、TrueBassもDSPではなくアナログ処理で実現している。

 DACを動作させるために使うクロックもフェムト秒クラスの高精度なものとなっており、iFi-Audio日本語サイトの製品情報にあるように、スピーカーユニットもかなりおごった内容になっている。

 Bluetooth、DLNA、USBメモリー再生に加え、テレビからの光デジタル入力なども試してみた。iFi-Audioは真空管サウンドについて格別な思い入れを持っているブランドでもある。AURORAの音も真空管らしい「響きのいい中高域」と「生々しい臨場感」を感じさせるもので、筆者にとって理想的なサウンドに感じられた。微細な情報を伝える解像感の高さ、音のきめ細かさ、立ち上がりの速さなどを兼ね備えた分離感のいいサウンドで、ハイレゾ楽曲の情報をよく伝えてくれる。

LDAC対応なので、Bluetooth入力時でも最大96kHzの再生ができている。

 真空管サウンドというとよく「温もりのある音」といった表現が用いられる。しかし、いま市場にある真空管アンプの多くは、その言葉から連想されるような帯域が狭く、もっさりとした、レトロな感じがする音ではない。高域に少し特徴的な響きが乗るが、むしろ倍音が豊かで、音の輪郭がパッキリとしたHi-Fi的な聞かせ方をするものが多い。

 AURORAのハイブリッド型アンプは、この真空管ならではの音色や滑らかさ、響きの美しさを損なわず、先端的なスイッチングアンプ(D級アンプ)を組み合わせることで高出力な駆動が可能になっている。スイッチング周波数も1.5MHzと非常に高速だ。ハイエンド機でも多く用いられる、Hypex NcoreやICE Powerなどでも500kHz台であることを考えると、一線を画するものであることが分かる。

 この真空管とスイッチングアンプの組み合わせによってAURORAは、比較的小型の一体型筐体であるにも関わらず、部屋全体を音で見たすような迫力あるサウンドを得ることも可能になっている。

艶やかなボーカル曲にもスケールの大きいオーケストラ曲にもマッチ

 AURORAの音は、ニュアンス深く丹念に録音されたジャズボーカルやスケール感のあるオーケストラサウンドによく合うのだが、映画との相性の良さも書いておきたい部分だ。リビング空間で映画視聴と音楽再生を共存させたいといった用途に適している。音の広がりとスケール感があり、かつセリフの聞こえが明瞭で、低域の量感もしっかりあるので、サラウンド再生ではなくても、かなり高い満足感が得られる。テレビの前に置いて、サウンドバーの代わりに使う用途も検討してみてはどうだろうか。

 一方、ハイエンドオーディオ機器と同様に、ソースの質によって聞こえにかなりの差が出るので、あまり録音の良くないポップス・ロック系の音源では音場の狭さや音のツブレなどを意識してしまう面もある。少し気が付いた点としては、リスニングポイントが割合シビアで、数10cm頭を動かした程度でも定位感に違いが出ること。また、(聴く距離にもよるが)ボーカルなどのセンター定位がもう少し明瞭に出ると、より完璧なサウンドに近づくように思えた。とはいえこのあたりは、音に真剣に向き合えるだけの再生性能を持った製品であることの裏返しでもある。

 竹を使った筐体も、天然素材で硬く、バランスが良く、音を吸収する性質を生かしたものだ。AURORAは、音について内も外もこだわった製品なのだ。既存のBluetooth/Wi-Fiスピーカーに満足できず、音の良さにこだわったWi-Fiスピーカーを探している人は、ぜひAURORAに関心を持ってほしい。

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