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自動運転の基礎 その19

自動運転に欠かせないAIと、AIに欠かせないGPU

2020年04月27日 10時00分更新

AIにGPUが欠かせない理由

 自動運転に欠かせないAI(人工知能)。そこで使われている機械学習の手法がディープラーニング、と前回解説した。しかし、ディープラーニングは、膨大なデータを処理する必要があるため、コンピューターにも、高い演算能力が求められる。そこで活用されているのがGPUだ。

 GPUはGraphics Processing Unitの略。パソコンのゲームの3D描写をよりスピーディーに表示するために、高い演算処理能力が求められ、それに応えるために誕生したモノなのだ。パソコン用のビデオカードとしてNVIDIA製品を利用している人も多いだろう。

 ところで、演算を行なうプロセッサーといえば、誰もが最初に思い浮かべるのはCPU(Central Processing Unit)だろう。では、すでにパソコンにはCPUという演算装置があるのに、わざわざGPUが求められるのはなぜだろう。それは、CPUとGPUでは計算の仕方が異なるからだ。

 まず、構造としてCPUとGPUでは、演算を行なうコアの数が異なる。CPUが数個から数十に対して、GPUは数百から数千。つまりGPUの方が、圧倒的に演算コアは多いのだ。その多数の演算コアを使って、並列処理を行なう。並列処理とは、複数の演算を同時並行で行なうというもの。3Dグラフィックは、多数のポリゴンの集まりであり、3Dグラフィックを動かすときは、その膨大なポリゴンの座標の移動を計算しなければならない。ここでGPUは、複数の演算コアを使って一気に並列処理することで、3Dグラフィックを動かすのだ。

 一方、従来からあるCPUは少ない演算コアで、複数の計算をひとつずつこなす。これが逐次処理という方法だ。GPUの並列処理に対して、従来のCPUは逐次処理を行なう。逐次処理のCPUは、膨大な演算が求められる3Dグラフィックを動かすのには不向きだが、複雑な計算は得意。つまり、GPUとCPUはどちらが上というのではなく、使い道が異なるというわけだ。

 そうしたGPUの特性は、膨大な計算を求められるディープラーニングに向いている。そのため、クルマの自動運転に必要なAIの開発にはGPUが不可欠になっているのだ。画像処理をはじめ、シミュレーションなど、自動運転の先行開発ではNVIDIAのGPUが大活躍している。また、量産車に向けての次世代の車載チップに関してもNVIDIA社の製品に注目が高まっており、大手サプライヤーの多くがNVIDIAを採用することが予想されている。

 これまでNVIDIAといえば、パソコン用ビデオカードのメーカーというイメージだったはずだが、数年後には自動車関連の大手サプライヤーになることだろう。

筆者紹介:鈴木ケンイチ

 

 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。

 最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。毎月1回のSA/PAの食べ歩き取材を10年ほど継続中。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員 自動車技術会会員 環境社会検定試験(ECO検定)。


 
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