10月22日に日本マイクロソフトが開催したSurfaceの発表イベントでは、MS初のノートPC『Surface Book』の発売日が2016年初頭になることが明らかになりました。
『究極のノートPC』Surface Bookの国内発売は2016年初頭に。 |
気になるのは、ただでさえあまり安いとはいえなかったSurface製品が、全体的に値上がりしている点です。前モデルのSurface Pro 3に比べ、Surface Pro 4では本体やアクセサリーの価格が上昇しています。
その一方で、Surface Bookのスペックが明らかになるにつれ、本当に「究極のノートPC」なのか、疑問の声も上がっています。
妙に円安になったマイクロソフトの為替レート
Surface Bookの価格を予想する上で、ヒントになるのがSurface Pro 4の価格です。2015年6月に価格を改定したSurface Pro 3では、1ドル=120円程度の為替レートに基づき、大幅に値上がりしたのは記憶に新しいところです。
これに対してSurface Pro 4では、日米でのアクセサリーの価格差を比較することで、1ドル=127円前後のレートが使われていることが分かります。米国では価格が据え置きとなっているタイプカバーやSurface Dockについても、日本版はしっかり値上がりしています。
この1ドル=127円というレートを、米国版Surface Bookの価格に当てはめてみましょう。最小構成である、Core i5プロセッサー、8GBメモリー、128GBストレージのモデル(1499ドル)は19万円に、NVIDIA製の外部GPUを搭載したモデル(1899ドル)は24万円から、Core i7、16GB、1TBの最上位モデル(3199ドル)は40万6000円(いずれも税別)になると予想できます。
この価格は、Officeの有無によっても変わってきます。日本版Surfaceでは、一般向けにOfficeを標準搭載してきました。しかしSurface Bookはクリエイター向けの製品であり、Adobe製品だけを使えればよい、という層も多いはずだからです。
Officeを搭載する場合、最小構成で20万4800円、外部GPUモデルの最安値は25万4800円、1TBの最上位モデルは41万9800円(税別)といった価格になるでしょう。
ただし、日本ではSSDが1TBのモデルが登場するかどうか、微妙なところです。すでにSurface Bookの予約が始まっているカナダやオーストラリアでは、1TBモデルが提供されていません。日本にSurface Pro 4の1TBモデルが存在しないように、米国以外向けのバリエーションは絞り込まれる傾向にあります。
すでに予約が始まっているカナダやオーストラリアにも、1TBモデルはない。 |
Surface Bookは本当に“究極のノートPC”か?
マイクロソフト自身が“究極のノートPC”と銘打っているSurface Bookですが、スペックを中心に、疑問の声も上がり始めています。
発端になったのは、米マイクロソフトのパノス・パナイ氏が発表会で語った、「外部GPUの搭載により、MacBook Proと比べて2倍速い」という説明です。パナイ氏は、どのようなスペックのSurface BookとMacBook Proと比べて、具体的に何が2倍速いのか、明らかにしていません。
日本での発表会でも、米マイクロソフトのブライアン・ホール氏が「MacBook Proより2倍速い」とアピールした。 |
プレゼンテーションのスライドには、13インチモデルとみられるMacBook Proが掲載されています。しかし13インチのMacBook Proに外部GPUモデルはなく、現行世代は第5世代Coreプロセッサーのままです。これに対してSurface Bookは第6世代Coreを搭載しており、パナイ氏の説明通りなら、外部GPU搭載機で勝負を挑んだことになります。
もしSurface Bookが4コアのCore i7プロセッサーを搭載していたとしたら、たしかに13インチのMacBook Proを凌駕していたでしょう。マイクロソフトはSurface BookのCPUについて詳細を公開していないものの、2コアのCore i7-6600UまたはCore i5-6300Uとみられます。第6世代Coreはたしかに大きく進化したとはいえ、第5世代の2倍速いわけではありません。
Surface Bookが搭載するCPUは、クアッドコアではないようだ。 |
実際にベンチマークテストを実施した海外サイトでは、外部GPUの有無が性能に直結するようなテストを除き、2倍の差は確認できないとの指摘が相次いでいます。そのGPUも、NVIDIA製のGeForce 940M相当のチップに、1GBのGDDR5ビデオメモリーを組み合わせたものと予想されています。
外部GPUも、”GTX”ではないローエンドのGeForce 940M相当とみられる。 |
Surface BookはCore i7タブレットとして最も薄い、7.7mmの厚さであることをアピールしています。いかに第6世代Coreが低消費電力といっても、4コアのモデルのTDPは45Wであり、7.7mmのタブレットに搭載するのは困難といえます。たとえばVAIO Z Canvasはタブレットでありながら4コアのCore i7-4770HQ(TDP 47W)を搭載しますが、本体厚は13.6mmもあります。
Surfaceのアピールを“手加減”するマイクロソフト
とはいえ、マイクロソフトが無理にでもMacBook Proとの優位性を強調したくなる気持ちは、分からないでもありません。
Surface Bookを検討しているユーザーの多くは、VAIO Z CanvasのようなプレミアムクラスのWindows PCと価格や性能を比べているはずです。しかしマイクロソフトは、他のPCメーカーとの関係を維持したいあまり、同じWindows PC同士での直接的な比較を避ける傾向にあります。
こうした“手加減”を加えつつも、マイクロソフトはSurface Bookの魅力を訴えていかなければなりません。MacBook Proに対して2倍速いなどという、やや誇張した数字を持ち出さざるを得なかったのは、このあたりに理由があるのではないかと筆者は感じています。
【2015年10月27日】一部誤字を修正いたしました。
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
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