Windows 10の発売に合わせてスタートしたWindows 10はクリエイティブな作業に向いているのか、漫画家さん2人に使って検証してもらう企画第2弾は、週刊アスキーではおなじみの『カオスだもんね!』の水口画伯こと、水口幸広先生。
先生の普段の仕事場はあまり広くない。下描きを行なう大きなトレス台がスペースを取り、その向こうに15インチの液晶、左隣に15.6インチのワコムの液晶タブレット『DTU-1631E』を使用してデジタル作画をされている。15インチの液晶は資料などをネットで調べるPC用、液晶タブレットは別のPCから出力している。今回新しくするPCはこの液晶タブレットに接続する、メインの作画マシンだ。
先生からの要望は“性能はそこまで必要ないが、今使用しているPCよりも小さいものが良い”というもの。今まで使っていたマシンは、かつて編集部に在籍していた若手編集者・牟田君が組んだミドルタワー。今回、グラフィックボードはあえて用意せず、CPUは内蔵GPUが“Intel Iris Pro Graphics 6200”と高い描画性能を誇るCore i7-5775C(開発コードネーム:Broadwell-K)を採用。マザーボードはミニITX、PCケースはそれに合わせながらカッコよさを重視した側面がガラス張りのモデルを用意した。
●PC構成
CPU:インテル『Core i7-5775C』(実売価格 5万円前後)
マザーボード:ASUS『Z97I-PLUS』(実売価格 1万8000円前後)
メモリー:キングストン『HX324C11SRK2/16』(実売価格 2万2600円前後)
SSD(システムドライブ):OCZ『ARC100-25SAT3-480G』(実売価格 2万円前後)
HDD:ウエスタンデジタル『WD30EZRX-1TBP』(実売価格 1万円前後)
電源ユニット:ANTEC『NeoECO Classic NE650C』(実売価格 7500円前後)
PCケース:IN WIN『IW-CF02-BLA』(実売価格 2万7000円前後)
このPCパーツで組み上げた様子は前回と同様、タイムラプスで撮影したのでご覧いただきたい。
↑IN WIN『IW-CF02-BLA』は側面がガラスで内部が見えてカッコよいのだが、配線も丸見えのため、ケーブルマネージメントに気を遣った。 |
長年愛用した液晶タブレットも快適動作!
↑水口先生が超反応していたのは赤いヒートシンクを備えたメモリー。「3倍速いのか……!?」とガンオタ特有の反応。 |
Windows 10をセットアップしたあと、まず最初にトライしたのは水口先生愛用の『Adobe Photoshop 7.0』のインストール。Photoshop 7.0は今から13年前の2002年に発売したソフトで、対応OSは当然Windows XP。そのため、インストールや起動が危ぶまれたが、実際のところはあっさり問題なく起動した。32ビット対応のソフトのためメモリーは4GBまでしか認識しないが、水口幸広先生は漫画の作成は基本アナログで行ない、デジタル作業は主に着色のみなので問題ないとのこと。
今回、Photoshop 7.0は無事インストールできたが、ソフトによってはインストール時にOSをチェックするものもあり、非対応OSにはインストールできないこともある。また、32ビットのソフトの場合、ファイルを保存する際、保存先の容量が2TB以上だと認識しないことがある。そのような場合は、あらかじめパーティションを分けて、保存先を2TB以下にしておく必要もあるので注意しよう。
さて、次は愛用している液晶タブレット『DTU-1631E』の動作を検証。DTU-1631Eは過去に法人向けに発売されているもので、OSの対応情報はなかった。ダメ元で同社のWindows 10対応のタブレットドライバー“Windows V6.3.13-w3Jwi”をインストールしたところ、何事もなく筆圧を検知するようになった。
水口先生「悲しいかな牟田(Windows Vista)マシンが旧ザクに思えてしまいました。やっぱガンダム系(Windows 10)のマシンは良いですなぁ。Photoshop 7.0の起動時間や各種作業の処理時間も体感2倍な感じで作業時間も大幅短縮であります」
といったインプレッションからも相当快適になったようだ。またVista搭載機のときは冷却パーツの経年劣化による熱暴走やフリーズが多かったそうだが、それも解消。Windows Vistaはやや不安定な部分があり、筆者もよくPhotoshopがフリーズした覚えがある。Widnows 10は現状よく使用するソフトのフリーズにはまだ遭遇していない。重いソフトの利用も快適だった。
快適に動作するのは、細かくエアフローを考えた構成にしていたのも大きい。イラスト作成やマンガ制作向けソフトは、オンラインゲームのように高い負荷が長時間続くのではなく、中負荷が延々と作業が終わるまで継続することが多い。その途中に息抜きとして動画を見たりゲームをしたりといった展開があり、ノリによっては開いたウインドーを放置して作業続行ということもよくあるため、作業の邪魔にならないよう静音性をキープしたまま、一定のエアフローをキープできる環境が望ましい。
つまり、ノートPCでよくある長時間起動していると全体的に熱を持つのと似た環境で、24時間へっちゃらなPCであることが大切なのだ。そのため、水口先生に今回のPCを渡す前には、CPUとGPUロード100%、ストレージに対してベンチマーク連発の状態をつくり、それを5時間突破するかのテストを実施。その条件をクリアーしていることを確認している。
このチェックは電源の不具合の洗い出しや各種I/Oのチェックにもなるので、わりとオススメ。ガンダム的に言えば、単機でバリュートもナシで大気圏に突入できるこを意味する。
↑俺のフォトショ7がマグネットコーティングされたようにサクサク動く! こいつ……動くぜ!! |
DTU-1631Eは電磁誘導方式を採用している。そこで、もしかしすると同じ方式の『Bamboo Stylus feel』が動作するのでは?と試してみたところ、筆圧を検知した。そのほか、“Wacom feel IT technologies”搭載端末用のスタイラスペンも筆圧を検知したので、同じ方式のペンを持っていたら予備として使えるようだ。
また、水口先生はWindows 10を使っていて、新機能の“タスクビュー”が気に入ったという。タスクビューは仮想デスクトップを複数増やせるほか、デスクトップ間でのウインドーの移動もドラッグ&ドロップで容易に行なえるため、作画資料の管理が捗るのだ。前回の颯田直斗先生は写真の作画資料チェックがラクといった感想だったが、作家さんによって見方が変わるようだ。
新しいデスクトップ何枚も作れて作画資料の管理もバッチリだぜ!
颯田先生のときとは変わって、「以前の作業環境を再現する」というレガシーなアプリとハードウェアを外せない構成であったため、不安いっぱいだったが、結果としては、すんなり動作してくれた。下位互換性の高いWindowsならではと言える部分だろうか。
今後の『カオスだもんね!』は、今回紹介したWindows 10搭載自作PCで制作していくそう。筆者は何気に十数年来の読者なので、とてもうれしかったりする。より安定した環境で作業をしたいのであれば、愛用する周辺機器やアプリケーションの動作状況を調べた上で、Windows 10にシフトするのを強くオススメしたい。
■関連サイト
マイクロソフト
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります