みなさま、こんばんは。いまは週刊アスキーの吉田でございます。さて、先日の日曜日にApple Store銀座で「語学学習とiBooksテキストブックの最新事例」というイベントが開催されました。早稲田大学のグローバルエデュケーションセンターのヴァレリオ・ルイジ・アルベリッツィ氏が、iBooks Authorで作成した電子教科書を使った講義内容を披露してくれました。
まずはサンプルとして紹介したのは、従来の語学学習のテキスト。みなさんも経験があるかと思いますが、平易な例文を覚えていくという内容です。
そして大学での講義はというと、昔とかわらずカセットテープを使っていたり、教授が講師がひたすら話したりと変化に乏しく、居眠りする学生や増える、講義のへの出席率が低下するという問題が常態化しています。特に一般教養科目は、どの大学でも受講に対するモチベーションが高い学生は少ないですね。
そこでアルベリッツィ氏が取り入れたのが、iPadやAppleの各種サービスを利用した語学学習でした。この取り組みは2012年から始まり、最初は「Dragon Dictation」と呼ばれる音声認識アプリを利用した講義から始まり、Twitterを活用した単語学習、iTunes Uを利用した入門コース、Quizletによる単語学習などを経て、iPadに行き着いたそうです。なお、学生が利用するiPadは寄付と助成金でまかなわれているとのこと。
2015年の春学期では、iTunes U、Quizlet、Dragon Dictation、MetaMoji Note、iBooks、AirServer、Padletなどのアプリを使っている授業を進めているそうです。当初はTwitterで単語学習を進めていましたが、タイムラインが流れてしまうため復習しづらいため、単語帳のようにカードでめくる感覚で学習できるQuizletに移行したそうです。
iBooks Authorで作られた電子教科書では、ページ内に動画などを埋め込めます。
イタリア語の仕組みを動画で説明することで理解度が深まるとのこと。
電子教科書を導入するポイントとしては、最も重要なのが「疑似体験的な理解へと導くコンテンツ」とのこと。
実際の電子教科書では、例文の隣にスピーカーのマークが付いており、音声での読み上げも可能です。
途中に選択式の設問を設けることもできます。回答はリアルタイムに確認可能です。
意味のわからない単語をその場で調べることもできます。辞書引きして体で覚えるという手段もありますが、こちらのほうがスマートですね。
写真をタップすると、内容に応じた例文を表示する機能もあります。
リスニングテストなどを含めることも可能です。音声で文章を聞き取って単語を穴埋めしていく内容です。
アルベリッツィ氏は、電子教科書を作る際にレイアウトにも気を使っており、フォントはサンセリフ系の14ポイント、行間は1.2mm、縦向き(ポートレイト)表示の場合は1488時、横向き(ランドスケープ)表示の場合は1664字などと決めているとのこと。こういう取り決めは、デザインの統一感を持たせるためにも重要ですね。
電子教科書を作るときに参考にしたのが、「過去現在絵因果経」などの仏伝経典とのこと。
電子教科書の制作は2013年からで、まずは紙媒体の教科書をデジタル化したところからスタートし、レイアウトを改善したり、プルダウンメニューやクロスワードパズルなどの練習問題を増やしたりしていったそうです。
利用するフォントは、欧文はHelvetica Neue、和文はヒラギノ角ゴProNに決定。
学生を対象にしたアンケートでは、7割超が読みやすかったと回答。
電子教科書の導入により、効率的に学習できたと回答する学生が増えていることがわかります。
ちなみに、利用しているタブレット端末について学生にアンケートを取ったところ、持っていない学生が過半数を占めるものの、iPadを持っている学生が一定数いることがわかります。2015年春学期については、Windowsのタブレット端末も大幅に増えています。Surface 3などの影響でしょうか。
利用しているスマホについて聞いたところ、iPhoneが圧倒的なシェアであることがわかります。2年前の機種であるiPhone 5sを利用しているユーザーが多いですね。
また、アプリやiPadを利用した講義を導入した結果、期末テストの結果はFランクの学生が減っていることがわかります。特に同年の春学期から秋学期でグンと減っていますね。
最後に電子教科書を制作する際に利用した「iBooks Authorスターターキット」についても説明がありました。これは電子教科書を作るためのマニュアルで、MacやiOSデバイスで読めます。
iPadを利用したインタラクティブな講義を導入することで、モチベーションがそれほど高くない学生でも習熟度は上がりそうですね。習熟度は別にしても、話を聞いているだけの退屈な講義からは解放されそうです。
電子教科書を作成するためのiBooks Authorは、Macを持っていれば誰でも無料で利用できます。教科書だけでなくインタラクティブな書籍の作成にも使えるので、興味のある人はぜひダウンロードしてみてください。
■関連サイト
iBooks Author
iTunes U
Quizlet
Dragon Dictation
MetaMoji Note
AirServer
Padlet
iBooks Author スターターキット
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