レノボ・ジャパン、NECパーソナルコンピューターといえば、押しも押されぬPC業界のトップシェア企業だ。国内において、NEC レノボのシェアは圧倒的になっている。MM総研によると2014年度通期におけるNECレノボの国内シェアは27.6%。2位以下は10%台だから、その差は大きい。
7月2日にアドテクベンダー・FreakOutのセミナーに登壇したNECレノボのマーケティング本部長 松本氏が語ったデジタルマーケティングの活用は、シェアの好調を知って聞くとむしろ意外なほどの攻めの姿勢だ。
NECレノボが昨年からブランドサイトの本格的なデジタルマーケティングに取り組んだ理由は2つある。1つめは、2015年1月にLAVIEのリブランディングが控えていて、”客層の若返り”という命題を成功させる必要があったこと。2つめはマス接触の代表格だったテレビが、メディア接触時間でネットに追い抜かれたことで、”テレビ以外”のマーケティング方法が必要になったためだ。
年代別のメディア接触時間。特に30代以下は、男女問わずスマホやPCでの接触時間がテレビ接触時間を大きく上回る。この層を取り入れたいなら、マーケティングの主戦場をネットに移すのは必然ということ。 |
FreakOut『DMP実践活用セミナー』に登壇したレノボ・ジャパン/NECパーソナルコンピューター マーケティング本部長 松本達彦氏。 |
NECレノボがデジタルマーケティングで実践したこと
デジタルマーケティング施策のため、自社ブランドサイトにDMP(データマネージメントプラットフォーム)の導入を決定したのが2014年の秋ごろ。DMPは来訪者の属性情報を詳細に分析できるが、とにかく来訪者データを溜め込まないと何もできない。
そこで、DMPの導入提案から異例の1週間というスピードで導入決定し、即座にデータ蓄積を開始した。
リブランディングまでの期間に行った施策は色々あるようだが、結果として、まず当初の目的の”客層の若返り”は成功した。来訪者属性比率の実データとして、1年前のLaVie製品ページで3分の2だった50代以上のユーザーが、リブランディング後のブランドページでは、半分以下になった。また、30代以下の、スマホ世代の来訪者も15ポイント増えたという。
LAVIEブランドサイトのユーザー年齢比率の変化。旧LaVie製品ページと比較して、中高年層が減少し、30代以下が増えている。 |
そのほかにも、
1)マクロミル社のアンケート機能を活用して自社(この例ではレノボブランドのYOGA)製品に関心の強いユーザーのペルソナを顕在化させ、対象を”ペルソナに近いユーザー”まで広げてターゲティング広告で接触(=広告費用の効率化)
2)動画広告にアンケートを組み合わせて、閲覧者の中から自社製品と親和性の高い読者のみに接触する
動画広告のあとにアンケートを組み合わせることで、広告を見た感想のデータを蓄積。”より買ってくれそうなユーザー像”を絞り込んでいき、広告のターゲティング精度をあげている。 |
3)製品発売前に想定購買ユーザーの仮説に基づく自社コンテンツを4パターンつくり、それぞれに同数のユーザーを分配誘導して、反応が好ましいユーザーの属性を分析。その結果を見てマーケティングプランを変更する(=プランニングの最適化)
といった柔軟な試みを取り入れて成果を上げた。
3)の施策の気づきの例として挙がった”キッチンコンテンツのユーザー属性”は興味深い。
当初は、”キッチン"というテーマには既婚者で子持ち家庭の女性が反応すると仮説を立てていた。
ところがキッチンの広告クリエイティブに反応した来訪ユーザーを分析をしてみると、実は30代/技術系の独身男性が多かった。いわゆる、"女子力高い系男子”で、当初仮説とは真逆の反応だ。女子力高い系男子に向けて”既婚者・子持ち家庭の女性”向けのクリエイティブを見せてもまったく意味がないとわかり、マーケティングを路線変更した。
3)の4つのクリエイティブに反応したそれぞれのユーザー像。"キッチン"に独身男性が強く反応するというのは、思い込みと仮説だけで勝負していたら辿り着かないだろう。 |
講演のなかで再三発言していたのは、”DMPはとにかくデータがたくさん集まる。その分析力を高めること、高速にPDCAサイクルをまわすことが重要”という点。
大企業においてDMP導入で効果を出せるかの成否は、実はここにある。
昨日始めた施策の結果が思わしくなければ、場合によっては3日後にもう方向転換している、というのがデジタルマーケティングの世界。意思決定に1週間、2週間とかかっていたら、その間の機会損失はどんどん広がってしまう。
必要とあらばデジタルマーケティングに合わせた意思決定速度を持てる、という組織力の強さが、NECレノボのシェア好調の原動力なのかもしれない。
●関連サイト
FreakOut
2014年度 国内パソコン出荷概要(MM総研)
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