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今後はスーパーカジュアルが主流に人気アプリの収益も判明!週アス×アイモバイルセミナーリポ

2015年05月11日 17時00分更新

 4月23日(木)に週刊アスキーとアイモバイルが共同でモバイル開発者向けのセミナーを開催しました。今回は、その講演内容をレポートします。

 登壇していただいたのは、モバイルアプリの調査会社AppAnnieの日本担当カントリーディレクターを務める滝澤琢人氏、iOS/Android両対応のアプリの開発環境として定番のCocos2d-xの開発元Chukong Technologies Japanでエンジニアリングディレクターを務める清水友晶氏の2名。

 また後半では、(株)Nagisa、(株)GOODROID、(株)リイカなどモバイルゲームのヒット作を次々と生み出しているアプリ開発会社の担当者と、セミナーを共同運営する(株)アイモバイルの担当者が、アプリの収益やプロモーションについて、実際の数字を交えてパネルディスカッションを行いました。

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日本と世界のアプリ市場最新トレンド(App Annie滝澤琢人氏)

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App Annieの日本担当カントリーディレクターを務める滝澤琢人氏。

 前半の講演の最初の登壇者は、App Annieの日本担当カントリーディレクターを務める滝澤琢人氏。「日本と世界のアプリ市場最新トレンド」と題した内容で、日本と世界のアプリ市場の最新トレンドをデータから読み解いていただきました。

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 最近のモバイルゲームの全世界の動向として、2013年第4四半期(10~12月期)から2014年第4四半期(10~12月期)までの推移をグラフで紹介。それによると、iOS用、Android用はほぼ右肩上がり、PS Vitaなどのコンソール機は2013年、2014年とも年末に当たる第4四半期が延びていることがわかります。コンソール機向けゲームは季節要因に左右されるものの、スマホゲームは時期を問わずに成長しているとのことでした。

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 ゲームアプリの収益構造についての解説では、iOS用、Android用ともアプリ内課金での収益が全世界で90%以上を占めており、この傾向は2013年よりも2014年のほうがより強まっているとのこと。ゲームのビジネスモデルの圧倒的な主流であることがわかります。

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 iPhone、iPadに分けた面白いデータも披露されました。各国別のiOS端末でのゲームのダウンロード数の内訳では、中国は全ダウンロード数の3割がiPadである一方、日本ではiPadでのゲームアプリのダウンロード数が調査した国の中では最も少なくなっています。

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 米国はダウンロード比率ではiPadが25%弱だったのに対し、ゲーム内収益だけを見ると50%を占めるそうです。つまり、iPad用のゲームのほうがアプリ内課金をするユーザーが多いというわけです。全世界でならしても約3割がiPad用のゲームの収益となるというデータが示されました。

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 滝澤氏によると「ねこあつめ」など放置系のスーパーカジュアルなゲームが今後は注目を集めることを指摘。また世界に目を向けると、ブラジルがiOS用とAndroid用を合わせたダウンロード数で世界第3位になったほか、韓国でのiOSアプリの収益が伸びている点、インドネシアでGoogle Playのダウンロードが大幅に成長していることなどを紹介しました。

Cocos2d-xによる最新ゲーム開発(Chukong Technologies Japan清水友昌氏)

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 二人目の登壇者は、Chukong Technologies Japanでエンジニアリングディレクターを務める清水友昌氏。講演内容は、Cocos2d-xをはじめとする開発環境のCocosの最新事情とCocosを利用してアイモバイルが提供する広告SDKの組み込み方法を紹介していただきました。

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 まず、Cocosの代表的な開発環境であるCocos2d-xの概要が紹介されました。ライバルのUnityと異なるのは、オープンソースで開発が進められているが特徴です。コアエンジンは超メジャーなプログラミング言語であるC++で書かれており、開発者がCocos2d-xのコードを改変することも可能です。iOSやAndroid、Windows Phoneなどのモバイル環境だけでなく、OS XやWindows、Linuxでも動作するアプリを開発できます。

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 2dという名称がついていることから2Dゲーム用の開発環境と思われがちですが、バージョン3.xでは3Dにも対応しています。

 清水氏は、Unityと比べるとCocos2d-xが取っつきにくいという印象があるが、それは開発に入る前の環境構築にあるとしたうえで、実際には短時間で構築できることを講演中に実証。バージョン3.xでは、「cocos」コマンドという便利なコマンドが実装されたことで、ターゲット別のビルドなどが非常に簡単に進めることができます。

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 講演の後半では、アイモバイルが提供する広告SDKの組み込み方法を紹介。アイモバイルは、Cocos2d-xを使ってアドネットワーク広告を簡単に組み込めるプラグインを提供しているので、手順さえ覚えればかなり簡単に実装できることを説明していました。

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 講演の最後には、今後のCocos関連イベントを紹介。5月に2件、7月に2件のイベントに参加する予定とのこと。なお、4月27日に開催された「Cocos2d-x Talks #3」については、週アスPLUSでレポート記事を掲載する予定です。

ランキング上位のトップデベロッパーによる今後のアプリ市場についてのディスカッション

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 後半のパネルディスカッションでは、(株)Nagisaで執行役兼ディレクターを務める井上大紀氏、(株)GOODROIDで代表取締役社長兼プロデューサーを務める松田和彬氏、(株)リイカでゲーム事業部部門長と務める熊谷亮徳氏、そして(株)アイモバイルでアドネットワーク事業本部スマートフォン推進部メディアグループ リーダーを務める廣瀬裕利氏が登壇しました。

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(株)アイモバイルでアドネットワーク事業本部スマートフォン推進部メディアグループ リーダーを務める廣瀬裕利氏。
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 まずは「ヒットしたアプリってどうやって作られたんですか?」という質問については、グッドロイドの松田氏が「もやしびと」を例に挙げ、「もやしを抜くというアニメーションの気持ちよさが受けたのではないか」と分析。また、韓国や中国でもヒットを飛ばしている点については、「韓国にはナムルがあるからもやしと相性がよかったのでは」という見解でした。

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(株)GOODROIDで代表取締役社長兼プロデューサーを務める松田和彬氏。
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「もやしびと」は、もやしの抜くアニメーションが秀逸でついついハマってしまう。日本だけでなく中国や韓国でも大ヒットを飛ばしている。

 中国での大ヒットについては「まだ詳しく分析できていないが、中国で著名なブロガーなどが取り上げたことによってダウンロード数が増えたのではないか」ということでした。App Annieの滝澤氏の分析でも、韓国におけるiOSアプリの収益が上がっているというレポートもあったので、韓国でのヒットは同国におけるiOSアプリ市場の盛り上がりにうまく乗っかれたのかもしれませんね。

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 次に、「ぶっちゃけ一番稼いだアプリの月間収益ってどれぐらいですか?」という答えるのが難しい質問が飛び出しました。

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(株)Nagisaで執行役兼ディレクターを務める井上大紀氏。
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「今日彼女が死んだ」は、交通事故で死んだ彼女をタイムマシンを使って過去に遡り、ミニゲームによって生き返らせたり、容姿や性格を変えていくゲーム。彼女の容姿がどのように変化するのかが気になり、ついつい遊んでしまう。

 Nagisaの井上氏は、「今日彼女が死んだ」では半月で3000万円ぐらいの収益と発言。

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(株)リイカでゲーム事業部部門長と務める熊谷亮徳氏。
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「Q」は現在でのアプリランキングの上位に位置する人気ゲーム。収益額は明らかにされなかったが、マネタイズに改善の余地がまだまだあるという。

 一方、大ヒットアプリ「Q」の開発元であるリイカの熊谷氏は「Q」は自分の担当ではないとしたうえで、マネタイズに関しては少し失敗していると発言。Qでは、両脇にアプリ内広告が表示されるものの、プレイ画面が中央なので広告に目に入らないことが原因かもしれませんね。

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 「今注目しているアプリって何ですか?」という質問については、リイカの熊谷氏が「ねこあつめ」を上げていました。

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リイカの熊谷氏だけでなく、App Annieの滝澤氏も注目していた「ねこあつめ」。ただ、ネコを集めるだけでゲーム性は低いが、癒やし要素で人気。

 UIなどにこれはと思う特徴はないが、シンプルでわかりやすいのがウケているのでは」と分析していました。

 また熊谷氏は、Nagisaが開発した「今日彼女が死んだ」についてもネーミングやゲームシステムについてよく考えられていると発言。

 一方のNagisaの井上氏も「Q」について、これまでになかった斬新なゲームと評価していました。「Q」は、画面をなぞって球や棒などをスケッチしていき、それらを使ってパズルを解いていくというゲームです。タッチパネルのスマホだからこそ生まれたゲームと言えるでしょう。

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 最後の質問である「今後、APP業界は進化していくと思いますか?」という質問については、Nagisaの井上氏とGOODROIDの松田氏で意見が分かれました。

 井上氏は、「最近のAppleの審査ではウォール広告の締め出す傾向が強くなっており、近い将来ウォール広告での収益化が難しくなるのではないか」と指摘。続けて「いまのところはまだ影響はないが、アイコン広告についても同じような締め出しが始まればアドネットワーク広告の収益化は難しくなるのではないか」と語っていました。

 一方の松田氏は「『もやしびと』など、韓国や中国の市場でもヒットしているアプリが増えていけばダウンロード数も増え、さまざまなマネタイズの可能性が高まるはず」ということでした。

 パネルディスカッションのあとに質疑応答では、参加者からプロモーション施策についての質問がありました。

 Nagisaの井上氏は、「放置ゲームや収集ゲームは収益化につながりやすいので、プロモーションに100万円ぐらいは使ってもいいかな」とのことでした。100万円ぐらい使えば、ランキングの20位ぐらいにはもっていけるそうです。「そのあと20位から上に上がらないようであればそこまでのゲーム」とのこと。「数年前までは同じような施策は20〜30万円程度だったが、最近はコストが上がっているとも指摘していました。

 実際に「今日彼女が死んだ」では、80万円ぐらいのプロモーション費用を使ったことで18位までランキングが上がり、そのあとはオーガニック検索(広告などから誘導されない検索)で上がっていきました」とのこと。

 グッドロイドの松田氏も、「プロモーションは100万円をメドにしており、『もやしびと』も100万円をかけた」とのこと。

 リイカの熊谷氏も「プロモーション費用は100万円程度が上限」と話したうえで、「ソーシャルゲームは600円ほどのCPI(特定のアプリをインストールすることで獲得できる広告売上の単価)があるが、カジュアルゲームは高いものでも50円程度、20〜30円いけばなんとかやっていけるレベル」とのこと。「結局はプロモーションのあとのオーガニック検索がどれだけ延びるかで収益は変わってくる」ということでした。

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 別の参加者からは、「今日彼女が死んだ」というゲームについてヒット要員について質問がありました。具体的には、「先日、『今日彼女が死んだ』の実況動画がニコニコ動画で配信され、視聴者は20万人を超えていたが、ゲーム実況者にプレスリリースを出すなど会社としてなにか施策をしたのか」という問いに対して、「理想としてはやりたいが、今回は会社としては何も動かなかった」とのこと。実際には相当な反響があり、「iOSのランキングで1位を獲った数日後に実況動画が上がったのですが、動画が配信されたあとにAndroidのユーザーが一気に増えた」とのこと。井上氏は、「ニコニコ動画のユーザー層はAndroidを使っている比率が高いのかも」という分析でした。

 セミナーは予定時間をオーバーしましたがセミナー後の懇親会にも多くの参加者が残り、盛り上がりを見せていました。

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