2015年5月下旬、取材で中国、韓国、台湾を訪れた筆者が悩んだのが、通信環境です。なぜかというと、中国では国家的なインターネット規制により、TwitterやFacebook、Googleのサービスが”グレートファイアウォール”によりブロックされているからです。
上海駅近くにある、携帯電話ショップがひしめく“不夜城商厦”(いわゆるケータイ不夜城)。大量のSIMカードを売っているが、これら中国国内のSIMによる通信はグレートファイアウォールの規制が適用される。VPNと併用する手はあるものの、やや敷居は高い。 |
そこで今回、利用してみたのが香港キャリアによるデータローミング対応のSIMカードです。
■北京の地下鉄でもLTEがバリバリ使える『中国移動香港』のSIMカード
今回、北京での滞在中に大活躍したのが『中国移動香港』によるプリペイド式のデータローミング対応SIMカードです。
こちらがパッケージ。英語では”China Mobile 4G/3G Data & |
他の香港ローミング系SIMカードと同じく、グレートファイアウォールの影響を受けることなく通信できるのがポイント。中国本土では、中国移動(チャイナモバイル)のTD-LTEに接続しつつ、TwitterやFacebook、Googleのサービスを自由に使うことができます。
SIMカードはNano、Micro、標準(Mini)の3種類が兼用のタイプ。MicroSIM、あるいはNanoSIMだけを綺麗に取り外せると、ちょっと嬉しい。 |
北京では、なんと地下鉄の走行中でもつながるなど、ほとんど東京と同じ感覚でLTEを使えます。Speedtest.netによる計測では、下りが20Mbps、上りが10Mbps以上出る場所も。むしろラッシュ時にはつながりにくくなることも多い東京と比べて、北京のほうが快適といえるレベルです。
料金はローミングだけあって、地元中国のSIMカードほど安くはないのが難点。1日最大68香港ドル(約1076円)で、中国本土では1GBまで利用可能。その後は128Kbpsに制限されます。
プリペイド料金のチャージは、中国移動香港のWebサイトで、日本のクレジットカードも使えました。
チャージする料金によってボーナスが付き、有効期限の延長幅も異なる。数日間滞在することが分かっているなら、ボーナスと有効期限が最大になる300香港ドルをチャージしてしまうのがお得だ。 |
チャージ金額は少し悩んだものの、筆者は1回あたりの最大額である300香港ドルをチャージ。これにより、ボーナスを含めて400香港ドル分が得られ、有効期限が180日増えました。また、使いすぎても速度制限がかかるだけで、クレジットが”溶ける”ことがないのも安心です。
問題は、TD-LTE対応のスマホをいかに入手するかという点です。NTTドコモでは、中国移動における国際LTEローミングサービスに対応した端末を公開しており、そのうち現在SIMロックを解除できるのはGALAXY Note Edge、Galaxy S6 edge、Galaxy S6です。
あるいは日本でも販売を再開したSIMフリー版のiPhone 6(A1586)や、iPhone 6 Plus(A1524)も狙い目といえます。北京でもiPhone 6や6 Plusは大人気で、東京以上ではないかと思えるほど、地下鉄の中はiPhoneだらけでした。
なお、最近では香港と中国の電話番号が使える新しいタイプのSIMカードも登場しています。
新しい”1-Card-2-Number”のSIMでは、香港だけでなく中国の電話番号も付与されている。香港の電話番号は、中国から見ればあくまで海外の電話番号。中国国内の番号があったほうがなにかと便利だ。 |
ソウル、台北でもローミング利用OK
この中国移動香港のSIMカードの面白いところは、中国本土以外にも韓国、台湾などアジア各地において定額データローミングに対応している点です。
中国本土だけでなく世界中でデータローミングに対応。特に日本、台湾、韓国、フィリピンでは1日最大98香港ドルで、LTEも使用できる。 |
実際にソウルで使ってみたところ、北京での設定を何も変えることなくSK TelecomのLTEにつながった。他にも台北では台湾大哥大のLTEに接続できた。 |
空港での乗り継ぎ時には空港内Wi-Fiが使えるといえ、手軽に使えるローミング回線があると、意外に便利なものです。日本のキャリアの割高なデータローミングを避けたい人だけでなく、メイン回線がMVNOで海外データローミングという選択肢がない、といった人にもおすすめできるSIMカードです。
上海における中国移動のLTEカバレッジは今後に期待
北京では非常に快適だった中国移動香港のSIMカードですが、上海では少し勝手が違いました。LTEのエリアがそれほど広くないのか、路地裏にあった筆者のホテルでは圏外または2Gを拾える程度。地下鉄でもLTEはつながりませんでした。
上海といえば上海蟹。しかし繁華街の南京東路近くのレストラン1階でも中国移動のLTEはつかめず、中国聯通香港の3Gしか使えなかった。 |
今後、上海でも中国移動のLTEは急速に普及するとは思われるものの、2015年5月下旬時点では、3Gが安定して使える中国聯通(チャイナユニコム)のほうが便利でした。また、中国聯通の3GはW-CDMA 2GHzなので、日本で入手できるほとんどのSIMフリー端末が使える可能性が高いのも魅力です。
上海の街角で、中国移動のLTE(左)と中国聯通の3G(右)を比較。あまり速度的なメリットがない上に、そもそも中国移動のLTEをつかめず2Gになる場所も多かった。 |
こちらは中国聯通香港が発行する『跨境王』。同じく香港ローミングによりグレートファイアウォールの影響を受けない。写真の”加強版”では、7日間で300MBのプランが48香港ドル、30日間で500MBのプランが68香港ドル。 |
古いパッケージの跨境王では、1日300MBを38香港ドルで使える”DayPass”プランが使える。毎晩、DayPassプランを契約しなければクレジットが溶けてしまうリスクはあるものの、使えるデータ量が多いのが魅力。 |
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