WWDC基調講演でiOS9の概要が発表された。iPhoneデベロッパーが多いであろう会場だけに、場内の反応は良好で開発者向けにはウケる材料が多かった。一方で、ユーザー目線でアップデートを俯瞰してみると、いまひとつ地味な印象が残るのも事実だ。
改めてリストアップしてみると、地味ながら着実で大事な進化と、あまりピンと来ない進化がある。より正確にいえば、今後につながる重要な進化ほど地味なものが多く、一方派手な進化は個人的には疑問符のものが多かった。
会場の写真を交えつつ、整理してみよう。
●iOS9 気になる進化
・iOS9の検索機能強化
まずSearchの強化。スポーツのスコアなどを出してくれるのも便利そうだし(日本版ローカライズ次第ではあるけれど)、アプリのディープリンクに対応するサーチAPIの整備は、地味だけど確実に今後の使い勝手改善に効いてくる。
・Apple Pay強化(対応国にUK追加、Square対応、ポイントカードのリワード対応)
日本のユーザーにはまったく関係がないApple Payではあるけれど、順調に適用範囲を拡大して便利になっている。PassBook改めWalletとの融合や、ポイントカードのリワードへの対応などは大変便利そう。日本国内ではしょうがないにしても、せめて旅行者が使うことができれば、ちょっとした買い物も全部iPhone(or Apple Watch)だけで済むのに……というのは言ってもしょうがないのだが。クレジットカードより安全で、使うのも簡単というのは旅先でポイント高い。
・新しい純正アプリ『News』
新しい純正アプリ『News』は、役立つというよりも、どう発展するかわからないという点で気になる機能。ニュースの導線が専用アプリからキュレーションアプリへと移行するのは時代の流れであり、そこにアップルが目をつけた……というのは非常に納得感ある。
一方で、国内を見る限り、SmartNewsのようなフィード自動取得型の自由度高いアプリにどう対抗していくのか。またより読まれる記事をプッシュするようなアルゴリズム設計がどうなっているのかは気になるところ。率直にいえば、サードパーティーのアプリに勝てるだけのUXがあるのかが注目だ。
・iPadのバーチャルキーボード強化
見た所、以前からこうだったら良いのに、と感じていたカーソル操作の不満や、コピー&ペーストのしにくさをカバーできそう。タブレット端末は全般に範囲選択やコピー&ペースト操作が煩雑だけど、iPadのこのバーチャルキーボードで解消されることに期待。
・物理キーボード連携強化
iPadにキーボードをつけてノートPC代わりのモバイル端末として使っている人に待望の機能。コマンド+F(検索)やコピー&ペースト操作は多用すること間違い無しでしょう。
・Siri強化
自然言語検索とサジェスチョンはスマホの使い方を若年層やシニア層にも広げる効果がある。今回のアップデートでは40%の高速化と40%の認識率向上、リマインダー機能追加、音声での画像・動画絞り込みなど実用的なもの。
Siri検索は人によって利用頻度の個人差が大きいので実感がない人もいるかもしれないが、身近に未就学児がいれば、iPhoneを渡してみてほしい。音声で検索できると知ると、あっという間に使いこなしはじめる。Siriの重要性とは、そういうことだ。
●iOS9 微妙かもしれない進化
一方で、微妙ではないか?という印象をもつ進化・新機能たちも少なくなかった。使ってみると意外と便利なのかもしれないが、ここはあえて辛口に指摘しておきたい。実際、iOS9のPublic Betaではどこまで使い物になる状態になっているのだろう。
・先読みで再生する音楽を変えてくれる機能
Proactive Assistantの試み自体は歓迎だし、この機能の意図もよくわかる。アメリカならではのオーディオブック文化への対応ではあるけれど、あえて新フィーチャーとして挙げるほどでもはないのではないか。
・次のスケジュールを読んで次の移動先へのカウントダウンをしてくれる
こちらもProactive Assistantの一部。AndroidではすでにGoogle Nowで実現されている機能の後追いであるため、新鮮味が薄い。行動ベースのサジェスチョンではまだまだGoogle Nowに一日の長がある。スケジュールだけじゃなく日々の行動パターンからのサジェスチョン、興味のありそうなWebコンテンツの推薦などProactive Assistantで取り組むべき分野はまだ広い。
いっそ、GoogleNowでやっていることすべてを実装してきて、「ドン」くらいにしないと、行動サジェスチョンについてはAndroidユーザーとの温度差が埋まらないのではないか。
・『Note』の機能強化
手書き機能の追加は確かに便利。ではあるけれど、サードパーティアプリで即解決する機能でもある。WWDCの場でアピールするほどの機能とは思いにくい。
・『Map』のTransit機能
どうしても比較対象がGoogleMapになってしまうせいもあるけれど、どの程度便利になるのか実感がわきにくい。ただし、対応地域に日本を飛ばして中国を入れてきたところは、アップルの戦略が現われていて興味深い。
・マルチタスキング・PinP、スプリットView、Slide Overアプリ
iPadのマルチタスキングまわりは、アリなのかナシなのか判断が分かれるところ。個人的には、懐疑的な目線でみている。iPadで動画を見ていることが多いのでPinPが便利なのは非常によくわかる。
一方で、UIは明らかに煩雑になるし、なによりiPadの美点だったスッキリとした美しさがスポイルされる心配が強い。2つのアプリを同時に動かすスプリットビューも同様だ。これがやりたいならWindowsタブレットでいいじゃないか、と思ってしまう。
Slide Overアプリは便利なような気もするけれど、現時点でiPad Air以降/mini2以降でしか動かないため、どれほどの数のアプリが対応してくるのかは未知数だ。
とはいうものの、詳しくは来月のオープンβを待て!状態ではある。基調講演での言及はなかったが、一方のOSXの方はIME(日本語入力)まわりには作り直しと言えるほど大幅なアップデートが入るようで、そちらはかなり感触が良いと聞いていたりもする。
iOS9、OSX関連の情報はアップデートが入り次第お伝えしていくのでお楽しみに。
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